作家でたまごごはん

 Web小説投稿サイト<作家でたまごごはん>の京都事務所である。


 数々の事件を乗り越え運営統括リーダーとして活躍してる神楽舞であったが、最近、会議室に新たなテロリストが潜伏してるという情報を得て偵察に赴いていた。


「信長さま、お茶です。めぐみです」


 まずは斥候として織田めぐみを会議室に突入させた。

 織田めぐみは織田有楽斎の子孫に当り、お茶の腕前は家元級と言われてる。


「メガネ君、真田幸村が潜伏してるという情報は確かなの?」


 神楽舞は会議室の外壁に張り付いてる運営サブリーダーのメガネ君に耳打ちした。

 彼女も同じような態勢なのだが。


「確かな情報です。朝方、信長様の朝食を届けためぐみちゃんが話しかけて確認しました」


 メガネは声を潜めていう。


「でも、確か、真田幸村というのは本名じゃなかったわよね?」 


「真田信繁というのが本名ですが、謎の通名の幸村という名前が広まってしまって、兄の信之の子孫までが正式な系図に『幸村』を採用してしまったそうです。信之も関ヶ原まで信幸と名乗ってまして、真田の本家の海野氏の通字が『幸』なので『幸村』なんだと思います。父親が真田昌幸ですし」


「なるほど」


 神楽舞は分かったような分からないような表情でうなづいた。


「では、ちょっと覗いてみますか」 


 メガネはそおっと覗こうとした。


「メガネ、こそこそしてないでこっちに来い。舞殿も遠慮せずに入って来い」


 織田信長の真実を見通す<魔人眼>でメガネたちの動向は筒抜けであった。

 仕方ないので二人は会議室に入っていって自己紹介をはじめた。


「はじめまして、神楽舞と申します」


 ぺこりと幸村に頭を下げる。


「僕はメガネと申すしがない……」


「何を申されますか! メガネ殿は魔女ベアトリスの艦隊に一番槍をつけたというではないですか! 見事な一騎駆けだったと信長様から聞き及んでいます。舞殿もあの雷帝<菅原道真>の雷撃を<八重の剣>で受けきったという武勇伝は有名ですぞ!」


 幸村は満面の笑みで感激してメガネと舞の掌を何度も握り返してきた。

 メガネ君、一体、信長様と何をしてきたのよ!

 その武勇伝は聞いてみたいなと神楽舞は思った。


 ということで、Web小説投稿サイト<作家でたまごごはん>の京都事務所に二人目のテロリスト、もとい、居候がなし崩し的に転がり込むことになったのであった。

 

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