テレパス

「ご主人さまの願い?」


 公安警察の神沢優かみさわゆうはアンドロイド<グリーンステラ>を確保した。

 ステラの両手首に手錠をはめた。


「そうです。ご主人さまの願いです」


 神沢優は紅色のサイバーグラス越しに、ステラの瑠璃色るりいろの瞳を見つめた。

 強烈な意志を感じさせるその双眸そうぼうをまぶしく感じた。

 そこは高速バス事故の釈明記者会見場であった。

 何人かの被害者に死者がでていた。 


「あなたは人間の心が分かるというの?」


私たち・・・には分かるのです。ご主人さまたちの心の悲鳴が」


 ステラは笑顔で答えた。

 

「神沢少佐、カオルちゃんが何とか殺人ドローンは撃ち落してくれたようです」

 

 公安の安堂光雄が駆け寄ってきて報告した。

 高速バスの経営者の席の前で、黒い上下ジャージ姿の風守カオルが漆黒の闇凪やみなぎの剣で殺人ドローンを両断していた。

 今回の公開処刑は何とか防げたようだった。

 神沢優は安堵のため息をもらした。


私たち・・・はみんな繋がっています」


 ステラのつぶやきが聴こえた。

 

 その後、約700体製造されたステラのうち600体ほど警察の一斉摘発で逮捕され解体された。

 未だ100体ほどの行方が不明になっている。


 調査の結果、ステラは衛星経由のマイクロウェーブ通信でお互いが緊密な連携をしていたことか分かった。

 まるで複数でひとつの意志をもつ生物のように。


 それは『テレパスネットワーク』と名づけられた。

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