炎上商法~リアルホラーの真相~
「H社のJKさん? この前の合コンは久々に楽しかったわ」
アリサは妙に上機嫌だった。合コンで渡していたJKのプライベートのスマホに連絡が入ってきていた。
「僕も楽しかったです。アリサさんのヨーヨーの傷が無くなってしまって、ちょっと寂しいと思ってたところです」
H社の社長JKは二月の末に株式上場を果たし、K社の新ネット小説投稿サイトを立ち上げたばかりで多忙を極めていたが、アリサから電話はちょっとうれしかった。
「あのね、あなたのところの新ネット小説投稿サイトKに『悪役令嬢は異世界でシンデレラになって無双する』(キャッチコピー:異世界でシンデレラになって無双しょうちゃうわよ!)という作品を投稿したのだけど、PVが少ないのよ。☆も5つしかついてないし、何とかならないの?」
アリサは猫なで声でおねだりした。
「まだ、オープン当初なのでPVはなかなか伸びないんですよ。これからCMやメディアの露出を増やせば増えてくると思います」
JKもその問題は把握してたようで渋い返答である。
「そこを何とかならないかなー。アリサのお・ね・が・い」
猫が甘えるような声にJKもメロメロになりかけた。
「分かりました。アリサさんの頼みとあっては断れません。何とかしましょう」
「ありがと。期待してるわ」
電話の向こうからアリサの妖艶なキッスの音が聴こえた。
「仕方ない、H民を使って燃やすか………」
切れたスマホを机に置いたJKの計算高い目がキラリと光った。
†
「すまん、どうかこの通りだ。電子出版の方は何とかするから、頼みを聞いて欲しいんだ」
K社の中堅作家Rの担当編集者が土下座していた。
K社で電子出版の独占契約を結んでいたのに、一年経っても出版される気配がなく、Rはかなり腹を立てていた。
「今更、遅いですよ。告発原稿は新ネット小説投稿サイトKがオープンしてすぐに投下する予定です」
マジで勘弁して欲しいという顔でまくしたてる。
「いや、反対だ。予定通りに告発原稿は新ネット小説投稿サイトKに投稿して欲しい」
「ちょっと、それはまさか、炎上商法?」
担当編集者はこくりと頷いた。
「とりあえず、H社のJK氏から1000万ほどお前の口座に振込みされる。連載を続けてくれたら、さらに2000万ほど振り込んでくれるそうだ」
「分かりました。それなら引き受けましょう。電子書籍の方も頼みますよ」
「すまんな。お前への不義理と嫌な役を引き受けさせてしまって、申し訳ない」
「僕は小説が書けてお金がもらればいいんですよ。リアルホラーで見事炎上させてみせますよ」
Rは晴々とした表情で宣言した。
これこそ作家の生きる道、見事世間を欺いてみせましょう!
その後、この投稿は大量のPVを稼ぎ、新ネット小説投稿サイトKのPVもアップしていった。
Hブックマークも順調に炎上していた。
でも、アリサの『悪役令嬢は異世界でシンデレラになって無双する』(キャッチコピー:異世界でシンデレラになって無双しょうちゃうわよ!)のアクセスはあまり上がらなかったという。
社長のJKのところに苦情の電話が入ったのは言うまでもない。
参考:カドカワ 富士見と独占契約したけど本が出ないハートフル
https://kakuyomu.jp/works/1177354054880239915
カドカワ 富士見と独占契約したけど本が出ないハートフル
ろくごまるに- カクヨムhttp://b.hatena.ne.jp/entry/s/kakuyomu.jp/works/1177354054880239915
「KADOKAWAと契約したのに本が出ない」 KADOKAWAの「カクヨム」開設初日に核爆弾級の小説が投稿される
ジャンルは「ホラー」。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1603/01/news119.html
ろくごまるにnote
https://note.mu/rokugomaruni
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