20.追跡者
王都にある大衆酒場で、リックは夕食をとっていた。カウンター席は埋まっていたので、二人がけのテーブル席に一人で座っている。この店はいつも人でいっぱいだ。
冒険者になって以来ずっと、リックはここから遠く離れたエルシェードの街に住んでいた。だが少し前に用があって王都に来てからは、こっちに滞在していて仕事もしている。戻るのにも費用がかなりかかるし、拠点を移してもいいかもしれない。
ただ、全体的に物価が高いのは考え物だ。今食べている肉と野菜の煮込みだって、エルシェードに比べると二割ほど高い。宿も同じだ。その分冒険者ギルドの依頼報酬も少し高いのだが、差し引きするとどうしても出費の方が増えてしまう。
それに、とリックは思った。
「うーん」
スプーンで掬った野菜を一口食べながら、小さく唸る。それに、味の好みが自分と合わない。エルシェードに比べると、少し濃いのだ。最初に入った店がたまたまそうなのかと思ったが、次の店も、その次の店も同じだった。
知り合いに話を聞くと、王都の食べ物は大抵濃いらしい。各地から様々な調味料が運ばれてくるのが原因で、味が薄いと調味料をケチった安物だと見なされるそうだ。探せば美味しい薄味の店もあるのだろうが、まだそこまで街を探索できていない。
「どうしたの?」
テーブルにぺたんと座り込んでいるティエルが、不思議そうな顔でこちらを見ていた。
「ちょっと味が濃いなと思ってね。ティエルはそういうの、分かる?」
「いつもの赤いのは、薄い!」
「…そうなんだ」
あんまり美味しくないとはよく文句を言われていたが、味が薄いというのは初めて聞いた。リックが思っているよりも、複雑なのかもしれない。
彼女が「美味しそう」という魔石は大抵品質が良く、値段も高い。リックの稼ぎの問題で、大抵は最低品質のものしかあげることができないので、少し心苦しい。
(魔石もちょっと困るんだよなあ)
エルシェードと王都の魔石の値段差は、平均的な物価の差よりもさらに大きい。エルシェードの近くに魔石が安定して採れる場所がある事と、王都の魔石需要が大きい事が原因だ。特に魔術師ギルドと魔術学院は、国内屈指の魔石消費量だと聞く。
食事を終えたリックは、まだ残っているエールを一口飲んだ。テーブルに右肘をついて腕を外側に倒し、頬を乗せて軽く突っ伏すような格好になる。やっぱりエルシェードに戻ろうかなあ、などとぼんやり考える。
「あ、リック、寝ちゃ駄目だよー!」
「大丈夫だって」
珍しく、歩いて近づいてくるティエル。彼女に向かって指を突き出してやると、通れなくなって立ち止まっていた。実体があるわけではないので通り抜けられるはずだが、気分の問題なのだろうか。
そう言えば、ついティエルに話しかけてしまった。まあ店内は騒がしいし、誰に聞かれることもないだろう。リックに注意を向けている人物がいれば分からないが、王都に知り合いはほとんどいない。昔からの友人のシニスは、酒場になんて来ないし。
「やあ」
と思っていたら、突然声をかけられた。顔を上げると、細身の男が向かいの席に座るところだった。
「あ、ジャメルさん」
以前一緒に依頼を受けた冒険者だ。彼はさっと左右に視線を巡らせると、真剣な表情でリックを見た。
「いきなりこんな事を聞いて申し訳ないんですが、リック。あなた誰かに追われるような覚えあります?」
「え!?」
リックは驚いて目を見開いた。悪いことをした記憶も、恨まれるような記憶も無い。テーブルに立っているティエルは、きょとんとした表情で男二人の顔を交互に見ていた。
「ないない、全然無いよそんなの。なんで?」
「実はここ最近、あなたの居場所を聞いてまわってる人物がいるらしいんですよ。私とケビンもそいつに話を聞かれましてね」
「そ、それで、どうしたの?」
「もちろん何も言いませんでしたよ。ただケビンのやつが、何でそんな事を聞くんだって逆に相手を問い詰めだしてですね。そしたら急に向こうの方が殴りかかってきたんですよ。ケビンは一瞬で床に倒されて、馬乗りで殴られてました」
「ええ、大丈夫だったの?」
「衛兵が集まってきたんで、相手はすぐ逃げて行きましたよ。まあ大した怪我はしてません」
「それなら良かったけど……」
リックはほっと息を吐いた。自分が原因で、知り合いが大怪我するだなんてことにならなくて良かった。
「そいつの見た目は? 背は高い?」
「いいえ、子供みたいに小柄なやつです。フードを被っていたので顔はよく分かりませんでしたが、おそらく女性でしょうね。あと、赤い髪がちらっと見えました」
「へ?」
リックは間の抜けた声をあげた。ケビンはかなり体格がいいし、喧嘩も強い。小柄な女性に一瞬で倒されたとは、ちょっと信じられない。
「あれが誰なのかは分かりませんが、冒険者ではないと思いますよ。もし冒険者なら、あんな目立つ人物とっくに有名になっているでしょう。ヤバい組織の人間かもしれませんね」
「うぇ……」
リックは呻いた。非合法な犯罪組織とかということか。そんなの追われる覚えどころか、関わったことすらない。
もしあるとしたら、とリックは考えた。テーブルの上の少女の姿に、ちらりと目を向ける。ティエルは少し首を傾げた。
リックの持ち物の中で最も価値があるのは、間違いなく
とは言え、ティエルは武器としての性能はあまり高くなく、最高級の魔道具かどうかは微妙なところだ。王都ならもっと高価な魔道具を持っている冒険者だって結構居る。わざわざ探し回るほどではないだろう。
「とにかく、気をつけてください。しばらくこの街を離れることも考えた方がいいかもしれません」
「うん、ありがとう」
リックが礼を言うと、ジャメルは席を立った。去っていく彼を見ながら、迷惑をかけたことを謝らなきゃいけなかったな、とリックは思った。少なくとも、ケビンには後で謝っておこう。
ジャメルが居なくなった後、心配そうな顔をしたティエルが目の前に飛んできた。
「リック、何かしたの?」
「ジャメルに言った通り、全然覚えないよ」
もう一度考えてみたが、やはり何も思い当たらなかった。今までに受けた依頼は魔物退治や採取ばかりで、人に恨まれるようなものではない。冒険者とトラブルを起こしたことも無い。やっぱり、ティエルを狙っているのだろうか。
もしそうだとして、リックが持っている剣が魔剣だという事を、どうやって知ったんだろう。シニスぐらいにしか教えていない。魔法を使って詳しく調べれば分かるのだが、ごく普通の冒険者が持っている剣を、理由無く調査するとは思えない。
(シニスが誰かに話したのかなあ……)
彼女がそんなことをするとは思えなかったが、他に思いつかない。魔法の訓練をしてもらうために、最近一時的にティエルを預けていた。訓練の相談をするために、誰かにティエルの事を説明したんだろうか。聞いてみたほうがいいかもしれない。
ふと誰かに見られているような気がして、慌てて振り向く。だが、自分の方を向いている人など誰も居ない。ふう、と長い息をつく。
(…とりあえず宿に戻ろう)
急に不安になってきて、リックはそそくさと席を立った。
翌朝、リックは魔術学院に来ていた。ティエルが寝ているうちに、シニスとの話を済ませてしまうつもりだ。自分が狙われているなどということを聞いたら、不安がるだろうと思ったからだ。伝えても、ティエルが何かできるわけでもない。
前回とは違い、迷い無くシニスの部屋に向かう。扉を叩いてしばらく待ってみたが、何の反応も無い。まだ来てないのかな、とリックは首を傾げた。大抵ここに居るとは言われているが、家は別にあるはずだ。
出直そうかと思ったが、何とは無しに扉の取っ手を引っ張ってみる。すると、鍵が掛かっているとばかり思っていた扉が、抵抗無く開いた。リックは少し驚く。
(開けっ放しで大丈夫なのかなあ)
中を覗くと、部屋は相変わらずちらかっていた。床には用途のよく分からない物が転がっているが、魔道具も混じっているだろう。それなりに高価なはずだが、盗まれたりしないのだろうか。学院の中には、盗みを働くような人はいないということか。
部屋の中央には、三人ほど座れそうな大きさのソファーが、背中を向けて置かれている。その肘掛けの部分に、横倒しになった一足の靴があるのが見えた。なんであんなところに、と首を傾げる。
部屋に入って扉を閉め、床の物を踏まないよう気を付けながらソファーに近づく。背もたれに手を置き、改めて靴に目をやった。そこで初めて、肘掛に置かれているのが靴ではなく、靴を履いた足だということに気づいた。
「ん……」
小さな声とともに、足が動く。身を乗り出すようにして覗き込むと、シニスがソファーの上で眠っていた。着ている服は寝巻きではなく、いつもと同じローブだ。手を枕にして、背もたれの方に体を向け横向きになって寝ている。
不意に、シニスの瞼がゆっくりと上がった。顔が動いて上を向くと、リックと目が合う。寝ぼけ眼の彼女は、意外とはっきりとした口調で言った。
「女性の寝室に入ってくるとは、感心しないぞ」
「う、ごめん……って、寝室じゃないし、ここ」
「む」
シニスは足を下ろして、体を起こした。部屋の中をきょろきょろと見まわすと、ようやく自分がどこで寝ていたか思い出したようだ。
「ああそうか……。おはよう、リック」
「うん、おはよう。もしかして、この部屋で寝泊りしてるの?」
「いつもでは無い。最近少し忙しくてね」
そう言いながら、シニスは大きく伸びをした。猫を思わせる柔らかさで、体を思い切り伸ばす。
「情けない話だが、少し苦手な講義があってね。ついていくのが大変なんだ」
「へえ、シニスにも苦手なんてあるんだ」
「当たり前じゃないか。私を何だと思っているんだ」
驚いたリックに、シニスは苦笑した。
しばしの間、沈黙が場を支配する。ティエルの事をどう言い出そうかと、リックは迷っていた。シニスもまだ頭が起ききっていないのか、何があるわけでもない部屋の壁に視線を向けながら、ぼんやりとしている。
シニスの横顔と、顔にかかる赤い髪を見ていると、ふとジャメルの言葉を思い出した。リックの事を探している女性も、確か髪が赤かったと言っていた。子供のように小柄だったとのことだが、シニスもまあ小柄と言えば小柄だ。
だが、シニスがケビンに喧嘩で勝つのは無理だろう。彼女はわりと何でもできるタイプだが、運動はあまり得意ではない。
(いやいや、そういう問題じゃないって)
シニスが他人に殴りかかって、怪我をさせるなんて考えられない。それに泊まっている宿なら教えているし、リックを探し回るわけがない。変な想像をしすぎだ。
「いつもならまだ家にいる時間だ。来るなら昼からの方がいいぞ」
目をこすりながら、シニスがリックの方を向いた。そして、何かに気づいたようにぎゅっと眉を寄せる。
「ティエルちゃんは、まだ寝ているのか?」
「うん」
「もしかして、ティエルちゃんに聞かせたくない話があるのか」
「うーん、まあ、そんなとこ」
「なんだ」
悩むリックの顔を見て、深刻な話だということが分かったようだった。真剣な表情で、リックの目をじっと見る。
「シニス、ティエルのこと、誰かに話した?」
リックがそう言うと、彼女は強い衝撃を受けたようだった。呆然とした顔で、質問に答える。
「そんな……私が、そんなことすると思うのか」
「う、魔法の訓練で必要だったとかで……」
「例えそうだとしても、君に許可を得ずに勝手に話したりなんてしない」
シニスはリックをきっと睨みつけた。彼女の声は、いつもより一段階低くなっている。その迫力に、リックはたじろいだ。
「ご、ごめん、シニスを疑ってるわけじゃないんだけど、他に思いつかなくて」
「……。詳しく話してくれ」
一度深呼吸してから、シニスはそう言った。リックはジャメルから聞いた話を、隠さず説明した。
「なるほど、事情は分かった」
シニスは小さくため息をついた。リックはおずおずと尋ねる。
「ティエルのことを誰かに知られたって可能性はあるのかな?」
「調査系の魔法を使えば分かることだ。対象に手を触れる必要があるが、君の隙を見てやることは不可能ではないだろう。ただ、有名な冒険者でもない君の武器を、わざわざ隠れて調査する魔術師が居るかどうか」
「だよね」
リックの感想とだいたい同じだ。できることはできるがリスクがあるし、やる理由も無い。
「もしくは、君より前からティエルちゃんの事を知っている者が居るのかもしれないな。以前に見たことがあって、気づいたのかもしれない。君の前にも持ち主が居たのかどうか、まだ分かっていないんだろう?」
「あー、そっか。それがあるね」
リックは、ぽんと手を打ち合わせた。
ティエルを見つけたのは、とあるダンジョンの中だ。だが最初からそこに置かれていたのか、もしくは前の持ち主が置いて行ったのかは分からない。祭壇のような場所に飾られていたので、前者じゃないかと思ってはいるが……。
リックに会う前の記憶を、ティエルは無くしてしまっているらしい。たまにぼんやりと思い出すが、はっきりとはしないそうだ。話したくないわけではなく、本当に覚えていないようだ。少なくとも、リックはそう思っている。
「何にせよ、君はしばらく王都を離れた方がいいかもしれないな」
「うん、エルシェードに戻ろうかと思ってる」
リックはこくりと頷いた。シニスは、少し寂しそうな顔をする。
「君を探しているという女性のことは、できるかぎり調べておこう。…また会う事があったら、結果はその時に伝えよう」
シニスのその台詞の途中で、リックの視界の端に、ティエルの姿がぱっと映しだされた。反射的に目を向ける。
「おはよー……ふぁ」
ティエルは片手を口元にやってあくびしながら、もう片方の手を思い切り伸ばしている。さっきシニスも同じようなポーズをしていたが、だいぶ印象が違うな、とリックは思った。ティエルは可愛らしいし、シニスは……なんだろう?
そんなことを考えていると、シニスがリックの視線を追いながら尋ねてきた。
「む。もしかして、ティエルちゃんが起きたかな?」
「起きたよー」
そう言いながら、ティエルはシニスの周りをひらひらと飛ぶ。それが見えているのは、そして声が聞こえているのも、今はリックだけだ。
ティエルはシニスの肩にちょこんと座って、再びあくびした。しばらく預かってもらっていた間に、彼女への苦手意識は少し薄れてきたようだ。
「え、ここにいる?」
「うん」
リックの目線から判断したようで、シニスは自分の肩に素早く目を向けた。当然、彼女からは何も見えない。
「そ、それは是非見えるようにしてほし……い、いや、無駄に疲れさせるのも悪いな……」
何やら葛藤しているシニスをよそに、ティエルがリックに聞いてくる。
「なんのお話してたの?」
「え? えーと、なんの話をしてたかというと……」
しまった、ティエルが起きた時の事を考えていなかった。適当な話題でも言えれば良かったのだが、すぐには思いつかない。助けを求めるように、シニスを見る。
「前に話していた、安価で美味しい魔石のことを説明していたんだ」
事情を察したらしいシニスが、さらりとそう答えた。
「おいしいの、できたの? やったー」
「いくつか試作品がある。見せよう」
喜ぶティエルを肩に乗せたまま、シニスは部屋の奥へ行って、机の引き出しをがさごそと漁りだす。どうやら、ティエルは話題について怪しんだりはしていないようだ。リックはほっと胸を撫で下ろした。
リックは冒険者ギルドに行くと、エルシェードへ帰るついでに受けられる依頼を探した。護衛依頼でもあれば旅の費用が丸々浮くと思ったが、そういうのは人気ですぐに無くなるらしい。残っているのはパーティ指定のものだけだった。
では荷物運びは、と聞いてみたが、すぐに出発できそうなものは無かったので諦めた。今は一刻も早く王都を出たい。依頼は受けずに行くしかなさそうだ。
(一応お金は足りるし、まあ大丈夫かなあ)
とは言え、貯金はほとんど無くなってしまう。ティエルに覚えてもらった新しい魔法はかなり役立ちそうだし、エルシェードに戻ったら少し難しい依頼を受けてみてもいいかもしれない。そんな事を考えながら、街を歩く。
向かっているのは、王都でずっと泊まっている小さな宿だ。安いところを選んだので、入り組んだ路地の奥にある。最初はよく道に迷ったが、さすがに慣れてきた。
道の反対側から、ローブ姿の人物が歩いてきた。単にすれ違うだけだと思ったら、明らかに自分の方へと向かってくる。おかしいな、と思った時には、すぐ近くまで来ていた。小柄で、フードを目深に被ったその姿に、リックはぎくりとする。
「そ、それ以上近づくな!」
剣の柄に手をかけ、リックはうわずった声で叫んだ。相手は数歩離れたところで、ぴたりと足を止める。
「ケビンに怪我させてまで僕のことを探し回って、何が目的なんだ!?」
言いながら、じりじりと下がる。ローブ姿の人物は動こうとしない。
「誰の事を言っているのか分かりませんが、それは私ではありません。今日たまたま見かけたから、声をかけただけです」
相手の口から出たのは、女性の声だった。顔はよく見えないが、口調からは困惑しているような気配がある。本当の事を言っているのか、それとも油断させるための嘘なのか、判断はつかない。
「たまたまって、なんで声をかけたの?」
柄から手を離さないまま、リックは問いかける。手の上には、ぼんやりと女性の顔を見ているティエルが立っていた。そういえば、ティエルの危険感知能力が反応してないな、と不意に気づく。
「その剣ですが」
女性は、リックが持つ
「
「え」
予想外の事を言われて、リックはぽかんとした。
「あなたも、この剣のこと知ってるの?」
「ええ」
相手はあっさりと答えた。思わずティエルの方に目を向ける。リックが知らないだけで、実は有名な魔剣だったりするんだろうか。
「私の用件はそれだけです。ですが、あなたの事を探しているという人物について、少し伺ってもいいでしょうか」
「うん、背の低い赤い髪の女性が、僕のことを聞いて回ってるって……」
リックは思わず正直に答えてしまった。べつに言わなくてよかったかもしれない。
「…その人物が誰なのか、心当たりがあります」
「え、どういう人なの?」
「あなたのためにも、教えない方がいいでしょう。ですが、危険な人物だとだけ伝えておきます。あなたはすぐに王都を離れるべきです」
「う、分かりました」
リックは小さく呻いた。最初からそうするつもりだ。聞いても不安感が増しただけだった。
ローブ姿の女性はそれ以上何も言わずに、踵を返して路地を歩いて行った。別れの言葉すらない。
リックは小さく息を吐いた。自分がまだ剣の柄を握っていることに気づいて、手を離しす。ティエルが手から飛び立ち、リックのすぐ前でふわふわと浮いている。彼女はさっきからずっと、先ほどの女性の後姿を見つめているようだった。
「ティエル、どうかした?」
リックの質問に対して、彼女はふるふると首を振るだけで何も答えない。喋るのが大好きなティエルにしては、珍しい反応だ。
少し気にはなったが、今はそれどころではない。エルシェードに帰る算段を考えて、さっさと出発した方が良さそうだ。
(また戻ってこれるかな)
お金も貯めなければいけないし、来るにしてもしばらく先だろう。シニスに手紙でも送ろうかな、と考えながら、リックは早足で宿に向かった。
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