外伝1.竜退治

 岩場を慎重に進んでいくと、山肌に口を開ける、大きな洞窟にたどり着いた。事前に調べた情報どおりだ。この洞窟の中に、伝説の『名も無きドラゴン』が居る。

「本当に行くのか?」

「…今更だぞ、スヴァト」

 洞窟に入ろうとしたシオンは、スヴァトスラーフの言葉に眉を寄せる。彼は、真剣な表情でシオンを見ていた。

「やつは下手をすれば魔王よりも厄介な存在だ。そこまでして爪を手に入れる必要があるのか?」

「やつの爪から作った武器が無いと、魔王は倒せないんだろ」

「伝説ではそう語られているが、他の手段があるかもしれない」

「それは散々話し合っただろ。あるかもしれないが、他の手段とやらを探している時間はもう無いんだ」

 魔王の軍勢は、既に人間の国を一つ滅ぼしている。今は隣の国と戦争状態だが、劣勢なのは人間側だ。この世界全てが魔王のものになるのも、時間の問題だろう。

「分かった。おい、イレイザー」

 スヴァトスラーフが、ほとんど睨むような目つきで魔女イレイザーを見た。対する相手の方は、無表情でちらりと視線を向けるだけだ。

「やつの弱点が炎だというのは本当なんだろうな? ドラゴンは冷気に弱いというのが常識だぞ」

「ええ、間違いありません」

 常識と言うほど人間とドラゴンの戦いが頻繁にあるわけでもないが、冒険者の間ではよく知られた事実だった。だが、魔女はきっぱりと答える。

 真偽を確かめようとするかのように、スヴァトスラーフは相手の目をじっと見る。

「分かった、信じよう」

 何の感情も篭っていないその瞳から、何かを読み取れたのかは分からないが、スヴァトスラーフは納得したようだった。

「よし、作戦をもう一度確認するぞ。今やつは寝ているはずだ。可能ならば不意打ちで仕留めるか、最低でも大きなダメージを与えておきたい」

 シオンの言葉に、仲間たちは頷く。

「やつの近くまで行ったら、ユイは俺に治癒魔法を先がけしてくれ。スヴァトはユイの詠唱とタイミングを合わせて、炎の魔法の詠唱」

「はーい」

 緊張感のなさそうな様子で、ユイが答える。スヴァトスラーフは、少し考え込んだようだった。

「その時点でやつに気づかれたらどうする?」

「無いと思いたいが、エルの攻撃で時間を稼ぐ。この時に限らず、エルはイレギュラーがあった時のサポートに徹してくれ」

「分かりました」

「私も可能な限り補助しましょう」

 エルはこくりと頷いた。魔女もエルの言葉に続く。

「ああ、頼む。ユイ、治癒魔法が終わったら、すぐに跳躍の魔法の詠唱を始めてくれ。それが終わってから攻撃開始だ」

「うーん、ちょっと疲れそう? だけど、がんばるね!」

 ユイが元気よく答えた。高度な治癒魔法は、莫大な魔力を消費する。ユイの魔力が尽きれば、シオンの命も無いだろう。短期決戦で勝負を決めるしかない。

「お前、跳躍の魔法絶対に失敗するなよ」

 スヴァトスラーフが釘を刺す。ユイは不満そうに唇を尖らせた。

「えー、昨日練習したし、大丈夫だよ? ほとんど失敗しなかったし」

「え? 失敗したの?」

 と、シオンが口を挟んだ。

「あ、大丈夫! 油断してただけだから!」

「いや、なんだよ油断って」

 ユイの言葉に、シオンは口元を引きつらせた。

(治癒魔法は完璧なくせに、なんで跳躍の魔法なんかを失敗するんだよ……)

 治癒系の魔法はあらゆる魔法のなかで最も難易度が高く、また適正がある人間も少ない。だから、治癒魔法が使える魔術師は『治癒術士』と特別な名前で呼ばれる。

 世界最高の治癒術士であるユイからすれば、跳躍なんて初歩の魔法、半分寝ながらでも使うことができる、はずなのだが。

「万が一失敗したら、詠唱し直してくれ。スヴァトは炎の魔法の発動を可能な限り遅らせる。できるか?」

「簡単に言ってくれるな……跳躍の魔法を詠唱する間ぐらいなら、まあなんとかなるか。なるべく早くしろよ、ユイ」

「はーい」

 シオンの問いかけに、スヴァトスラーフは頬を歪めた。詠唱を遅らせたり、詠唱が終わった魔法を発動させずに維持するのは、かなり難しい。そんなに長くは持たないだろう。

「跳躍の魔法がかかったら、まずは『光の矢』でやつの魔法障壁を消費させる。その直後に、やつの頭を俺の剣とスヴァトの魔法で同時に攻撃する」

「…もう一度聞くが、お前が炎の魔法の軌道に入っても、頭を狙い続ければいいんだな?」

「ああ。そのための治癒魔法だ」

「分かった」

 スヴァトスラーフは口を結んで神妙に頷いた。治癒魔法で傷は直せても、苦痛まで取り除けるわけではない。

「それで倒せなければ、あとはいつも通り臨機応変に対応するしかない。スヴァトは炎の魔法、ユイは治癒魔法に専念してくれ。あとの二人は俺のサポートを頼む」

 シオンの言葉に、全員が頷いた。

「よし、行こう」

 

 岩陰から、シオンが顔を出す。彼の視線の先には、地面に伏せて眠るドラゴンの姿があった。今からこのドラゴンと戦うのだと思うと、勇者と呼ばれるシオンでも、緊張に押しつぶされそうだった。

 人間がドラゴンを倒したという記録は、無いわけではない。だがほとんどは国の軍隊によるもので、冒険者による竜退治の記録は数えるほどしか存在しない。しかも目の前の相手は、ただのドラゴンではないのだ。

 名も無きドラゴン、こいつはそう呼ばれていた。全ての生物の天敵と評され、魔王に匹敵するほどの強さを持つと言われている。エメラルドの鱗と強力な魔法障壁は、ほとんどの攻撃を通さない。ブレスを喰らえば、無事で済む生物はそう多くは無いだろう。だがやつの本当の恐ろしさは、別にある。

 後ろへちらりと目をやると、スヴァトスラーフとユイの二人が、長い詠唱を続けていた。ドラゴンの眠りは深く、この程度では目を覚まさないはずだ。

(気づいてくれるなよ)

 だが万が一ということがある。エルたちが時間を稼いでくれるだろうが、やつに時間を与えること自体がまずい。

「生命の祝福を!」

 ユイが呪文の最後の一説を唱え終わる。シオンの肩に手を当てると、そこから淡い光が広がって、シオンの体を包んだ。

 その直後、ユイがふらりと後ろに倒れそうになって、シオンは慌てて体を支える。

「ユイ、跳躍の魔法」

「…うん」

 青ざめた表情のユイに、シオンはきっぱりと指示した。隣ではスヴァトスラーフが詠唱を続けている、タイミングをずらすわけにはいかない。それに、先がけした治癒魔法の効果時間はそんなに長くはない。

(すまん)

 新たに詠唱を始めるユイを見ながら、シオンは心の中で謝った。彼女には負担をかけ続けている。この少女がいなければ、自分はもう何度も死んでいただろう。

 シオンがドラゴンに視線を戻すと、先ほどと変わらず眠っているように見えた。眠っているふりをしている可能性はあるか? とシオンは一瞬不安になる。いや、今更考えても仕方ない。

「…羽よ」

 先ほどよりは遥かに短い詠唱を終え、ユイが再びシオンの体に触れる。シオンは自分の体が一気に軽くなるのを感じた。跳躍の魔法は成功しているようだ。

 まだ詠唱を続けているスヴァトスラーフに目を向けると、頷いて返してきた。完了は間近なようだ。

「行くぞ!」

 シオンは岩陰から出て全力で走り出した。ドラゴンの体が、ぴくりと揺れる。

 ドラゴンが身を起こすのと同時に、シオンの頭上を大量の光が通過した。ドラゴンへと放たれたその光は、全て魔法障壁で防がれている。だがそれは作戦通りだ。

 大きく開くドラゴンの口の中に、赫い光が見えた。ブレスの前兆だ。シオンはぞわりと肌が粟立つのを感じながらも、さらに距離を詰める。

「うおおおおおおっ!」

「紅蓮の炎よ!」

 シオンが雄たけびをあげながら跳躍するのと、スヴァトスラーフが魔法を発動するのは同時だった。人間数人をまとめて飲み込めるほどの幅と高さを持つ炎が、スヴァトスラーフの手元から放射される。

 それがドラゴンへと到達する寸前に、口から吐かれた炎のブレスが、魔法の炎と正面からぶつかる。魔法の炎は、徐々に押し返されていた。

 だがその時には、シオンがドラゴンの真上まで跳躍していた。ブレスを吐くドラゴンの眉間に、剣を突き立てようとする。一瞬、ドラゴンの目がこちらを睨んだように見えた。

 ドラゴンはブレスを吐くのを止めると、首を大きく動かした。シオンの剣が、虚しく空を切った。スヴァトスラーフの炎が迫る。

「ぐ…ぁ……!」

 魔法の炎をまともに受け、シオンは激痛に呻いた。ユイの治癒魔法のおかげで、焼かれた体が端から治癒されていくのが分かる。

 炎はそのまま、ドラゴンの顔に直撃した。ドラゴンは、苦痛の唸り声をあげる。だがブレスで減衰させられたせいか、致命傷には至っていない。

 シオンは地面に着地すると、体をふらつかせた。傷は治っているはずだが、精神へのダメージがでかい。

「くっ」

 視界の端に、ドラゴンの鋭い爪が映る。先がけした治癒魔法の効果はもう切れている。横なぎに振るわれる爪を慌てて剣で防いだが、とても受け止め切れなかった。剣が自分の体にめり込む。

 シオンはそのまま、大きく吹き飛ばされた。地面に投げ出され、一瞬息ができなくなる。なんとか体を起こすと、自分の剣による傷はもう治っていた。ユイの次の治癒魔法が間に合ったようだ。

 顔を上げると、ドラゴンがこちらに目を向けていた。スヴァトスラーフの炎を受けたせいか、右眼は白く濁っている。その口の中には、再び赫い光が生まれている。

 まずい、と思ったその時、銀色の矢がドラゴンの顔の右眼側に向かって飛来するのが見えた。シオンは左側に思い切り転がる。ブレスが放たれる瞬間、矢が爆発し、ドラゴンの顔がほんの少し左に向いた。ブレスの軌道がずれ、シオンのすぐ右側を炎が通過していく。

「つっ!」

 直撃はしなかったものの、ブレスの熱がシオンの体を焼いた。だがその火傷も、ユイの新たな治癒魔法によって即座に治る。

(くそっ)

 シオンは歯噛みした。攻撃を受けすぎだ、ユイの魔力は残り少ないだろう。それに間隔が短すぎる。治癒魔法の詠唱時間は比較的短い方とは言え、相当無茶をしているはずだ。

 ドンッ、と大きな音が響いて、ドラゴンの体が地面に押し付けられた。魔女の攻撃だろう。ドラゴンは顔を上げることすらできないようだった。

 シオンは体に鞭打って、ドラゴンの元へと走った。今なら跳躍の魔法がなくとも顔を狙える。そう判断したシオンだったが、

「グルォォォォォォォォォォ!!」

 ドラゴンの咆哮が響いた瞬間、シオンの体は全く動かなくなった。足を縺れさせ、地面に倒れる。

「……っ」

 まともに声も出せない。魔女の攻撃は打ち消され、ドラゴンは悠然と身を起こす。

(護符の上からこれかよっ……!)

 この咆哮こそが、名も無きドラゴンが『全ての生物の天敵』と呼ばれる理由だった。魂を揺るがすこの咆哮から、逃れることのできる生物は居ない。十分に対策はしてきたつもりだったが、見積もりが甘すぎた。

 ドラゴンが、倒れているシオンの方へとゆっくりと近づいてきた。食うつもりでもいるのか、ブレスを吐く様子はない。

(頼む、ユイ……!)

 ユイなら咆哮の効果を解除できるはずだ。彼女には最も強力な護符を持たせている。口さえ動かせれば治癒魔法を使えるだろう。

「あなたにお願いがあります、名も無きドラゴン」

 だが次に声を出したのはユイではなく、魔女イレイザーだった。シオンが苦労して視線を動かすと、何事も無かったかのように歩いてくる魔女の姿が目に入る。

(お願いだって?)

 魔女が咆哮の影響を受けていないのにも驚いたが、その行動はさらに信じ難いものだった。確かにドラゴンは人間の言葉を解するが、頼みなど聞くわけが無い。

 だがそれを聞いた相手は、意外な反応を見せた。

「見逃せと言うのか、魔女イレイザー」

 そう言葉を発し、魔女の方へと顔を向ける。

「ええ。それから、あなたの爪を譲っていただきたい」

「図々しい願いだな」

 小さく唸ると、ドラゴンは魔女へ向かって大きく口を開いた。その中に、赫い光が再び現れる。

「私からも、お願いー……」

 座り込んだユイが弱々しい声で懇願すると、ドラゴンは口を閉じた。

「ふむ」 

 暫しの沈黙の後、ドラゴンの体が光に包まれた。体の輪郭がぼやけ始める。

「お前の願い、聞き入れよう。ただし」

 ドラゴンの姿が掻き消えた後、そこに現れたのは、一人の人間の男の姿だった。

「魔王との戦いには、私も連れて行け。それが条件だ」

 

 その村唯一の酒場は、冒険者たちで賑わっていた。シオンが周囲の会話に耳を傾けると、どうも大規模な魔物討伐があったようだ。皆興奮して、魔物のとの戦いの様子を語っている。

(こいつが『名も無きドラゴン』だと知ったら、どういう反応するんだろうな)

 シオンは、テーブルの向かいの席に座っている男に目を向けた。見た目はただの人間と変わらない。その右眼は、人間の姿になっても白く濁ったままだった。

(ま、誰も信じないだろうけど)

 ドラゴンは、テーブルの上に置かれたパンをじっと見ていた。隣に座っている魔女イレイザーが、小声で何か話しかけていた。食べ方でも教えているんだろうか。

「お二人は、どういったお知り合いなんですか?」

 魔女を挟んでドラゴンと反対側に座っているエルが、恐る恐る尋ねかける。あの二人に話しかけるとは、エルやるな、とシオンは思った。

「古い知り合いです」

「あ、私の方が古いよ?」

「そうだな」

 魔女、ユイ、ドラゴンが順に話す。シオンは、隣に座ったユイを見た。魔女がドラゴンと知り合いだと言うのは、まだ辛うじて分からなくもないが……。

「だからなんでお前まで知り合いなんだよ!」

「えー? そんなこと言われても」

 ユイが眉を寄せる。この村に帰ってくる途中に、ドラゴンの口から語られたことだ。この少女が魔女イレイザーや名も無きドラゴンと知り合いというのは、未だに信じられない。

「古い知り合いってことは、あいつと戦った時も知ってたんだろ? なんでその時言わなかったんだよ」

 魔女の方にちらりと目を向けながら、ユイに小声で話しかける。

 魔女イレイザーがこのパーティに入ったのは、ドラゴンを除けば一番最後だ。その前は、こいつは正真正銘の『魔女』だった。紆余曲折あって今は協力しているが、シオンたちは彼女と何度も戦ったのだ。

「なんでって……聞かれなかったから?」

「…聞くわけないだろうが、そんなこと」

 ユイの向こう側に座っているスヴァトスラーフが、むすっとした口調で言った。ドラゴンと旅をするなんてあり得ない、暴れられたらどうするつもりだと、彼は最後まで文句を言っていた。それからずっと機嫌が悪い。

「聞かれないと答えられないよ?」

「いや聞かれなくても言えよ」

「ええー……」

 不満そうに唇を尖らせるユイに、シオンはため息をついた。

(どの程度の知り合いなんだろうな)

 知り合いなら、あの魔女がどういう人物なのか、多少なりとも知っているだろう。魔女の目的が魔王を倒して世界を救うことなんかではないのは、シオンも分かっていた。真の目的のヒントになることを、ユイから聞き出せるかもしれない。

「昔の話はやめてくださいね、ユイ」

「はーい」

 シオンの考えを読んだように、魔女がユイに釘を刺す。ユイは軽く返事すると、パンを食べ始めた。

「あなたの方が知り合ったのが古いというのは、どちらのかたとですか?」

「う?」

 エルの質問に、パンを口に入れたまま、ユイが首を傾げた。喋ってもいいのかと聞くかのように、魔女の方へ目をやる。

「私とユイが先に知り合って、その後私たちが彼と知り合ったという意味です」

 魔女の言葉に、ユイがこくこくと頷いた。

(古い知り合いか)

 シオンは少し考え込む。いったいどれぐらい前の話なのだろうか。

 ドラゴンは長寿だし、魔女が見た目どおりの年齢で無いことは知っている。ということはまさか、この少女も見た目どおりではないのだろうか。

 そんな事を考えながらユイをじっと見つめていると、視線に気づいたユイがこっちを向いた。一瞬目が合ったあと、彼女は反対側へ振り向き、スヴァトスラーフの肩をばんばんと叩く。

「ねえねえスヴァト! なんかシオンがいやらしい目で見てくる!」

「は!?」

 スヴァトスラーフがもの凄い目でシオンを睨んだ。

「いや見てない見てない! 本当だって!」

 シオンは慌てて首を振った。ユイのことでスヴァトスラーフの機嫌を損ねると、後々まで引きずる。

「お前の持つ弓は、魔道具だな。先ほどの矢はどこへやった?」

「ああ、これですか?」

 ドラゴンに尋ねられ、エルは折りたたまれた弓を床から持ち上げた。ドラゴンの方から話しかけてきたことに、シオンは少し驚く。

「確かにこれは魔道具です。撃つ時に自動的に矢を生成するので、矢を持ち運ぶ必要は無いんですよ」

「ほう、面白い。私の持つ財宝と交換しないか?」

 シオンは飲んでいたエールを噴き出しかけた。ドラゴンが弓を貰ってどうするんだろうか。まあそれを言うなら、財宝を集めるというドラゴンの習性だって、何故そんなことをするのかよく分からないが……。

「え!? …そ、それはちょっと……」

 エルは一瞬迷ったあと、強く首を振った。

「お前にだけ爪をもう一枚渡してもいい」

「いや、これが無いと私戦力にならないので……」

「あなたの爪なんて、魔王を倒せば何の価値もないでしょう」

「そんなことは無い。良い武具が作れるだろう」

「おうなお? あうねあ?」

「口の中に物を入れたまま喋らないでください、ユイ」

「お前は昔から食事が好みのようだな」

 微笑ましい会話を続ける彼らに、シオンは微妙な笑みを向けた。ふとスヴァトスラーフの方を見てみると、さっきよりもさらに不機嫌そうな表情になって、無言で食事をしている。

(まさかこいつ、ユイの古い知り合いだからって理由で、名も無きドラゴンの同行を嫌がったんじゃないだろうな……)

 さすがにそんな、とは思ったが、否定しきれない。スヴァトスラーフと目が合いかけて、シオンは視線を逸らす。

 大丈夫かこのパーティ、とシオンは頭をかかえたくなる。魔王にたどり着く前に人間関係で崩壊した勇者パーティ、などと言う汚名が歴史に残らないことを祈りつつ、シオンはエールをあおった。

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