男女混合二人三脚ハーフマラソン 03

「なぁ。 どこ見てるんだ?」

「え?」

「すっとぼけんな! 右の選手の胸見てた!!」

「見てない見てな…… え?」 おい、ここどこだ? って女性と肩組んでる?

「この胸フェチ、変態! 私の胸だけ見なさいよ!」いやいや、そうじゃないだろ?

 と、そこに大きな声。 

『このドスケベが!』

は? だ、誰だ? 頭に直接に来たぞ? 頭がキンキンする……


「さて、スタート直前なんだが、どうしてくれようか」

ひぇぇ、怖いよ。 怒らせちゃいかん相手だったなぁ。って、コーチが胸に関する事は慎重にな、って言ってたのはこれか!

 と、納得しかけて彼女の首に俺と同じ物があるのに気づく。


あれ? なんか既視感デジャブが……


『二人三脚ハーフマラソンを完走せよ!』


 おおぅ! 何度聞いたか、この声は!


「この怒り、どうしてくれようか?」

「おいおい、これから走ろうってのに止めて。なぁ、機嫌直してくれよ」

「そうねぇ。完走したら食事おごってもらおうかしら」

「そ、それでいいなら」とにかく、ちゃんとスタートしないといろんな意味でやばそうだ。


 パァァン!


 スタート音とともに、周りの選手が一斉に走り出した。

「いくわよ!」 「おぅ!」


 彼女と息を合わせ左足を前に出し……、俺達二人は無事走り出した。


「ふっ、はっ」隣の彼女の息遣いが聞こえる。

何組かの選手と抜きつ抜かれつのデットヒートを繰り返す。

お互いの息を確認しあえて、速度をキープしながら走っている。

やっと景色を見る余裕が出てきた。


「景色が綺麗だなぁ」つい、声が出た。

「うん、今日は晴れてよかった」

「ちょっと汗ばむ暑さかなぁって思ったけど、走り出したら心地いいよなぁ」

「ふふっ。やっといつもの調子に戻った」嬉しそうな笑顔だな。

「緑の木々が綺麗なコースだね」

「うん。 空気が澄んでて気持ちがいい」


***


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