Second day

迷宮をクリアせよ 一層目 (3/13改稿)

ドサッ ボグッッ  う、痛ってぇ……  

うーん、ベットから落ちたのか? って石の冷たい感触!?!?

ヒヤッとした感触を頬に感じた。 目が覚めた、んだよな?

 ってあれ? う~~ん、ここどこだぁ? 宿じゃない?

 周りを見渡すと、一面石造りの壁だ。

えっと、小部屋なのかな、木製の扉がある。 Wizardryのダンジョンみたいだなぁ。


 え? ダンジョン?



ダンジョン迷宮から脱出せよ。 時間は2時間とする』 頭の中に直接声が響く。


 え? ええっ?? 

時間制限ってどういう事?


状況がうまく飲み込めない。 え~っとここはダンジョンなのか? 宿舎じゃなくって? 何やら頭に声が響いてきて脱出せよと。 はい? 脱出??


違和感を感じつつ周りを見回していたら、 ゴトンッッ 目の前の床が開いて何やらせり上がってきた。 ん、上になんか載ってるな。 台らしくなったそこへ近づいてみると、武器らしきものがある。


ふむぅ、棍棒、短剣、長剣、竹刀、かぁ。  え? 竹刀ってなんだよ。


 両手で武器持つか? 片手で済ませるか? むー、全部は持てそうもないしな。

どれか一つに絞るしかないなぁ。


竹刀が気になるな。 ここダンジョンだろ? なんでだ? すっげー気になる。


普通に考えたら、短剣、もしくは長剣だよなぁ。 迷宮で出てくる相手を考えると。


使いやすさからいったら短剣だなぁ。 竹刀…… そういえば、小中学校で剣道習わせてもらってたっけ。 ふむ。


やばっ、時間制限あるんだった、いいや、もう。 半ばやけくそ気味に竹刀に手を伸ばす。 もう、なるようにしかならん。


竹刀を手にとった。 その瞬間 目の前に 02:00 と文字が背景をバックに浮かんできた。


 でっか! と思う間に、数字が小さく右上の方に縮小されていく。 おいおいおい、VRゲームの研修は終わってるだろ! あ、これひょっとして夢? 昼間の研修の後で夢まで見ちゃってるって事? 夢にしちゃ、随分と違和感ある気がするけど。


1:59:59、1:59:58、 と秒ごとに時間が減っている。 ここにいても仕方ない。移動しないとな。


 とりあえず、扉を開けて、先に進まないと。 いやいや待て待て。 夢のなかとはいえあわてるな。 なんかワクワクしてきた。

 ゆっくりと木の扉を開けてその先がどうなっているか確認してみよう。 ん、通路みたいだな。左右に行けると。


通路に出て右に進んで見ることにした。


 時間は刻々変化してる。 しばらく石造りの壁沿いに歩いていると、先にT字路があった。


 ん? 視界の右下に何か点滅してるな。 うーん、メニューアイコンみたいな?

そこに視線を集中すると、いきなりマップ画面が目の前に広がった。


 あ、今いるT字路がここか。 出てきた部屋がここと。 おお、自分が歩いた所がマップに表示されてる! ほんっと、夢のなかとはいえゲームそのものじゃないか、こりゃ。 


T字路の先と部屋から出てから反対の方はグレーになっているのか。 便利すぎ、VRゲームってこういう感じなのかな。

 とにかく先に進んで確認していくしかなさそうだ。

実は俺、Wizardry ロールプレイングゲームはやりこんだんだぜ。 ふふふ、MAPPERの血が騒ぐ。 


T字路に近づくと、ヒタヒタと足音のような音が聞こえてきた。 何かいるみたいだな。 こんな隠れるところのない場所でどうなるかわからん、一旦さっきの部屋まで戻ってやり過ごすか?


「ギッ ギャガゥゥ」   聞いたことのない鳴き声だ。 なんだ?


夢の中ならなんでもあり、だろ。 竹刀を選んだことを多少後悔しつつも、T字路の右だか左だかにいる何かをやり過ごすならあれしかないだろう。


壁に身を寄せ、ぼそりとつぶやく。 「ハインド隠れる」 


 時間表示は? 右上には1:57:08と見えた。


とことん楽しんじゃえ、なんとかなる。 竹刀が武器なんだぜ、やりすごせるなら、戦わず、成果を出す。 俺のゲーム哲学だ。


 目の前に現れたのは 上半身裸で、腰には簡単な草木の葉を纏うモンスターだった。 ゴブリンだ。ひぃ、ふう、み、っと。 3体か。 自分の方に歩いてくる。

息を殺して、様子を見る。


 おお! やっぱり俺に気づいてない!


ゴブリン達は俺の横を素通りして自分が出てきた部屋の方へ歩いていった。


「角があるんだな、ゴブリンって」 先に進もうとして、さすが夢の中 なんでもありじゃん、すげぇな。 改めてさっきつぶやいた言葉を頭に浮かべてみた。 


魔法「ハインド隠れる

 効果:一定時間身を隠す。 使用回数によりレベルがあがり効果時間延長


目の前にHELP画面らしきウインドウが開いた。


よしっこれで戦わないで先に進めるぞ。 だいぶ楽に攻略できそうだ。


 途中、オークやゴブリンの群れに3度遭遇するも、ハインド隠れるを駆使して身を隠す。

途中、小部屋に入ったり、袋小路を戻りかけてゴブリンに見つかりかけたりするも、ハインドを駆使してなんとか切り抜けた。 つい、MAPの穴埋めに夢中になり、当初の目的を忘れそうになったりも。 何やってんだか、俺。


しかし、ほんとにここダンジョンかぁ? 遭遇するモンスター少ないじゃん?


1階のマップ、約1/3を攻略した所で2階へ向かう階段を見つける。


時間は? と右上に目を凝らすと 1:10:32 と見えた。ふむ。


迷わず階段をかけ上がった。  


***


「被験者No000125 一層目クリアしました」


「報告書の通り、PRGゲーム経験者という点で、他の被験者よりは経過時間は早いようだな」


「VRコンソールからの各種生体維持情報には、現在異常は見受けられません」


「よし、時間いっぱいまで試験続行する」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る