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帰り道、私は少しだけ遠回りして(おじさんのたこ焼き屋)へ向かった。
おじさんと言っても、その人は私の叔父ではない。
繁華街の神社の前でたこ焼きを売っている名前も知らないおじさんは、雨の日も風の日もそこにいて、甘口のソースをべったりとぬった柔らかなたこ焼きを小型のバスで販売している。
私と聡は、ここのたこ焼きが大好きだ。
「おじさん、1つ」
「はいよ、お嬢さん」
おじさんにとって女の人はいつくになってもお嬢さんで、男の人はお兄さん。
そして私たちお客にとっておじさんはおじさんなのだ。
「500円のお釣ね」
お金を渡しながら、おじさんは、おや?というふうに私を見つめた。
「ん?」
「あ、いや、なんでもない」
不思議そうにした私に、おじさんは笑うと、ほかほかと温かな包みを手渡してくれた。
おじさんがこんな風に反応するのは珍しいから私は少しだけ気になった。
私の顔になんかついてたかな?
でも、まぁ、いいっか。
すぐに忘れて歩き出す。
春の夜風は、まだ冷たい。
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