一枚絵
彼女は、写真を撮られるのが嫌だった。
写真におさまる彼女の顔は、常にふてくされており、
美しい、といえるものではない。
そんな彼女の写真を見て、周囲は笑い、
彼女は、どんどん、写真におさまる自分の姿が嫌になり、
次第に撮られる側ではなく、撮る側となったのだ。
故に、彼女の一枚絵は、ほとんど残っていない。
しかし、彼女が人一倍の笑顔を持っている事は、皆が知っている。
その笑顔を一枚絵におさめる事は、難しいかもしれない。
でも、その笑顔は、おさめる物ではなく、
見れる物だという事を知っている。
だから、皆、彼女に会いたがるのだ。
その笑顔を自分が引き出すために。
一枚絵ではなく、自分自身が見て感じるために。
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