よもつひら
家の前の坂を自転車で駆け降りる。
先には海。
海風が向かいから吹き付ける。
自転車は風を巻いて走り続ける。
あの海へ。
あの夏へ。
あれは昨年の夏のことだ。
俺はやはり自転車で坂を駆け抜けていた。
と、突然、パァンという破裂音がして、俺は自転車ごともんどりうった。
そこへ坂の上から一台の車が突っ込んできた。
あとに残ったのはパンクした自転車と風にはためく白いシャツ。
それから幾度繰り返しただろう。
俺は今日も坂を自転車で駆け降りる。
海へたどり着くことはない。
あそこへ行けば、なにかが変わるような気がして。
あの場所に、救いがあるような気がして。
でもいつもこの坂の途中で、俺の意識は消えてしまう。
それでも俺はなんどでも坂道を駆け降りる。
いつかあのきらめく海へたどりつくまで。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます