殺人鬼よりアイをこめて

カカオ猫

零 ―愚痴― CARNIVALへの誘い


 病院は嫌い。

 だって薬くさいもの。辛気臭いもの。鬱陶しいもの。


 お母さんは嫌い。

 だって口やかましいもの。恩着せがましいもの。白々しいもの。


 お父さんは嫌い。

 だって会いに来てくれないもの。私を見てくれないもの。嘘ばかりつくもの。


 でも、一番キライなのは、私自身の、この身体。

 いつまでも治らない、この棒きれみたいな身体なんて嫌い。目覚めたらする頭痛も嫌い。思い通り動かない脚も嫌い。息が出来なくなるくらい苦しくなる心臓も大嫌い。嫌い、嫌いよ。みんな嫌いみんなしんじゃえっ。


 私はひとりきりの病室で、スマホ片手に世界を旅する。

 指先ひとつで、どんなところにでも行けるよう。私が好きなのは、この手のひらに収まる世界へのドアだけ。

 でも、最近マンネリなの。私の頭で思いつく限りの言葉は検索し尽くしてしまったし、無料ゲームも飽き飽きよ。ネットマネーはお母さんが使わせてくれないし。

 暇つぶしに掲示板にでも書き込もうかしら。でもあそこの連中、下品なだけで馬鹿しかいないのよね。


 あ、やだ、広告踏んじゃった。もう、めんどくさい……あら?


 【CARNIVALへようこそ】


 なにかしらこれ。

 カーニバル……お祭り? 真っ黒な背景のサイトで、文字だけが真っ赤。

 どうせ暇だし、ちょっとのぞこうかしら。でも目に悪そうね。まあ、私の身体に悪くない場所なんてないのだけれど。




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