秋爽



秋爽は一抹の拠り所も得られず

妄覚の脳髄を過ぎて

ブラックコーヒーなんか好んで飲むもんじゃない

冬を控える街角に相似を見る愚か

十円玉の上で小躍りする妖精を見ることは

ならば正しいのか


色彩豊かな無力が泳ぐ部屋にいて

煙は浮力に導かれて水面みなも

底に澱む深海魚の側面で共生する諾意だくい

およそ無自覚のままに頷かされていて

妖精のこわぶりはうららかにためらわない

何もない部屋


どうしてもこれでいて

承諾しなきゃやってらんないから

十円玉でのおはじきを空想のテーブルで執り行い

たまった空き缶を深海魚は避けて泳ぎながら

些末な情事を笑うような口ぶりで

本物を弾けよと宣う


ブラックコーヒーはとっくに飲み干した

妖精ごと自販機にねじ込むタイミングをはかりながら

紙コップの水道水で喉をすす

深海魚の奴に餌はやりたくないと思いはしても

言葉はたどたどしい息継ぎながら止まらず

澱みを切る無力が食われる

黙々と首肯することしか求められない

何もない部屋

空想のおはじきは続く




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