新雪の落ち葉に降り注ぐ



織りぜて

栄養ドリンクをひと口飲んで

織り交ぜて

全てない交ぜにして生きている

くせに

贅沢な物言いばかり

「火傷しないで火に飛び込め!」

だってさあ

熱いのは懲り懲りなのに

もう少し生きろよって疼くから

半ば

脅迫みたいになってんだ

それが

いいことなのかはわからない

ただの

憂さ晴らしであるなら

よっぽどそのほうがいいけど

脅迫みたいになってんだよ

「傷つかずに生きろ!」

そりゃあ

願ってもないことだけど


脳髄がじわりと溶けゆく

指の先のエナメルが

遅々と確実に伸びていく

生きている証左ならここにあるけど

全部鮫に食わせてやりたいよ

こんなんじゃないんだ


結って絡ませ

出られないようにしてるのは自分自身

望んだからだ

それでも生きていることを

けれど

脳内で反響する

「死なずに生きろ!」

土台

無理な相談だ

なるほど僕にも過失はある

けれど

死にながら生きるほうが

おおむね全ての点において楽だ

けれど混ざりきれないから

織り交ぜながら

栄養ドリンクをひと口飲む

まったく情けないだけの話


雪が降った後のアスファルトに落ち葉が降り注いだから、僕はスニーカーを履くことにした。

軽率で何なのかよくわからない虫がじっとへたり込んでいたから、僕はピッチを速めた。バラードがユーロビートになるくらいには速めた。息切れがしてめまいがした。

そういえば、この革靴は紐が解けやすい。案の定ゆるんでいたので、虫からそう遠くないところで僕はしゃがみ込み、紐を直すはめになった。

だから僕はスニーカーで駆けた。名前もわからない虫から、革靴のゆるい靴紐から逃れるように、雪の上に積もった落ち葉を踏みしだいて駆けた。

そういえば。

そもそも行き場所なんて思いついていなかったじゃないか。

ATMでお金を下ろせばいいのだろうか。

3万円ほど引き出して、11円の駄菓子でも買えばいいのか、一円も余さず使い切ればいいのか、それはわからないけれど、新しい革靴を買ってみるというのも手だ。

そうすれば、あの火の棒の上も、するりと抜けられるかもしれない。

ああ、なぜここにあるのは新雪と落ち葉で。

ここにいるのが僕で、そしてスニーカーなのか。

新雪の落ち葉に降り注ぐのが、春の陽光でしかないのか。

正しさは僕を圧するばかりなのか。

とどのつまり無理な話なんだけど。

今なら火の上も渡れるような気がするよ。

3万円でカジュアルを買えばそれだけでいいんだ。

たったそれだけのこと。


織り交ぜて

ない交ぜで

栄養ドリンクをひと飲みして

僕は考える

最低限の火傷やけど

火の海を渡ること

土台

無理な話なんだ

けれど

脅迫へ少しばかりの反抗

ちょっとぐらい燃えても

まあご愛敬あいきょうだろう

新雪の落ち葉に降り注ぐスコール

傘を差さず

雨に濡れずに

靴の売り場まで行けないだろうか



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