命の色素



迷走妄動 ひとりで

強慾夜会 ひとりが

不調和の ひとりは

道しるべ 愛なき生


瓦解視界 さよなら

性と正解 おはよう

死と詩情 握る手は

生きてる 熱と情緒


性をもてあそんでみて

しっぺ返しをくらう

そのことに

命の熱量を感じてしまうよ


無為手管てくだ つめたく

五色誤植 突き放し

頭に穿つ もう一度

生命賛歌 始めから


それが それが

命の  無窮むきゅう

喜びと 連鎖

罪業  人の業


死と詩情

熱と情緒

もういちど

ドアをノックしてみてはいかが

お留守ですか

情動は

閉じてはいないから

あふれさせてよ


痛めつけてなお

受け入れてもらって

自分の価値を知る

愚挙

そんなことしなくても

お前は十二分に恨みを買い

嫌われているよ

そのこと以上に

何が価値があるものか


生命賛歌 強慾夜会

勤労無実 調停不毛

起死回生 須臾しゅゆ連鎖

三千世界 落下開始

嘆きの情 もう一度

恨みの嘆 もう一度

愛しきしき 景色葬式

未知と音 それでも

未来開闢かいびゃく 生きると

忘れない

彼女が残した傷痕は消えたとしても

僕がたった今も

未来を切り拓いているという現実を

ひとりきりではないという事実を

片時も忘れはしまいと

それが僕たちの

せめてもの誠意だと


嘆きの情 もう一度

恨みの嘆 もう一度

歓喜の渦 忘れよう

悲嘆の声 もう一度

不条理よ 降り注げ

この世に 余さずに

降り注げ 不調和よ


これは賛歌

いまなお命があることの

罪業の賛歌

捧げる相手はもういない

彼女はとうに向こう側

それでも僕たちは手を繋ぎ

未来という名前で

ひと踊りしましょうか


まったくのひとりであり

またきみも同じであればこそ

詩情に染まれる

全ての愚かさと

おぞましさと醜さを忘れて

未来というものを

口ずさんでみてはどうかな


不条理よ 降り注げ

僕たちは

惨たらしい花弁のように

     不調和が

唯一つの 命の色素


ああ、全て忘れてしまうとしても

彼女の苦しみも

喜びも

嘆き

何もかも

未来に行くために

捨てねばならないとしても

この春の罪業は

永劫消えることはないから

だからもうそれでいいと

不意の風になぶられて

そして僕は

本当に忘れている

どこへ行こう

好きなところへ

未来と

もう手を繋いでいる


浮き世は花

不調和が

唯一つの命の色素

ありがとうって

誰かに言いたかったはずなのに


彼女は底の見えない暗闇で

悲嘆に蝕まれて

そして死んだのだろう

僕はそれを認めながらも

不条理に助けられて

たおやかな未来へ

僕たちは僕たちでしかないことを

いいだけ思い知って

性と詩情と熱に

騙されて

幸せになる

未来へ行く

気づいた時にはもう遅い

命の連鎖だけ

浮き世の花

めくるめく鈍色にびいろの虹色の世界へ

こんなに何色もいらないよ

息がつかえて

死んでしまいそうだ

ああ

鈍色の虹

未来へ向かうことの

幸福を手に入れることの

恐ろしさ

それでも

さようなら

それでも


不調和だけが真実で

浮き世に花が咲く

愛しき色

アスファルトに舞い落ちる椿に

誇りをそえて

未来に

幸せという不条理の中に

たおやかに

僕たちを生かして



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