残雪と蛙
矮小な世界にこもって
残雪を呪ってる
月はだんだんと満ちつつあり
僕は落ち着きを欠いていく
矮小な世界が話しかけてくる
少しは広い世界を見たらどうだいと
けれど僕は蛙なのだ
大海で暮らすことはできないよ
少しばかりカフェイン
さりげないセレネイド
あれだけ毛嫌いしていた
ごく当たり前のバラードを
イヤフォンで聞きながら
当たり前の寂しさを
大丈夫さ
ピアノが聞こえ始めたら
それは詩情の合図
ごらん
紫色をした怪物が
夢見がちな子供を食べていく
子供たちは
噛まれたことにも気づかないまま
気づけば視界を失っている
世の中の
ありきたりなバラードも好むようになる
無理に逆回りする必要もない
ねえ
紫色をした怪物が
そばに来てる
それだけは疑いようのないことなんだ
猫が悟る
人心地の隙間
ざっくばらんに
息を閉じて
会いたくて
光を浴びてみる
冬空に虚ろを見る
炭酸飲料に頼りきり
猫が駆ける
残雪の上を縫うように
冬の傷痕を綴じるように
冬が終われば
今よりも柔らかい陽光が
僕の閉じられた世界に差し
蛙である僕は眠るよ
夢の中できみに会えるかな
紫色の怪物を隣に
詩情を片手に
さりげないセレネイド
猫が悟る
夢うつつの隙間
冬が終わる
ざっくばらんに
会いたくて
どうせすぐに夏が来るだろう
怪物がおとなしくしているうちは
僕は蛙
おいしいものかよ
なあ怪物よ
彼女はどんなにかうまかったことだろう
また新しい春が来たら
誰かとひとつ約束をしよう
どんな約束でもかまわない
井戸で暮らすには慰めがいる
誰かとひとつ約束をして
井戸の中で夢を見る
繰り返す
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