僕は青春殺人鬼
蒼遥 極
悪魔編
第零話プロローグ
彼らは残虐で、残酷で、そして少し残念な、鬼達だ。
裏の世界で、その名を知らぬ者はいない。
彼らは殺しの天才だ。
天才にして……人類史上最も最悪の天災なのである。
彼らと友達になれば死ぬ。
彼らと知り合えば死ぬ。
彼らと出会えば死ぬ。
彼らと話せば死ぬ。
彼らとすれ違えば死ぬ。
彼らを見れば死ぬ。
彼らがいると、死んでしまう。
そのように、殺死満鬼族の噂は次々と拡大解釈を繰り返し伝わるほど、裏の世界の人間にとって害なのである。
害……害悪。
彼らは徹底的に悪の対象として、悪者として存在している。
例えば、人類全ての敵を上げよと裏の世界の住人に尋ねれば、ほとんどの人が殺死満鬼族を上げるだろう……と思う位には。
それほどまでに、彼らは裏の世界で猛威を振るってい『た』。
猛威を……振るっていた。
つまりそれは過去の事だ。
今は違う。
今現在、殺死満鬼族の生き残りは約一名。
え? 誰かって?
僕がなぜここまで殺死満鬼族について知っているのか考えれば分かることだろう。
そう……この僕、
数ヶ月前、適当に殺しをして帰ってくると、殺死満鬼族の住処であるビルが崩壊していた。
完全に壊滅状態に陥っていたのである。
周りを見ると、死体。
死んでしまった体が、まるで子供が片付け忘れたおもちゃのお人形さんかのように、バラバラと散らばっていた。
そんな状態に僕は戦慄を覚えた。
といっても、死体に怯えたのではない。
この死体を、死体にした……つまり、伝説とまで言われる殺死満鬼族を、偶然出かけていた僕を除き、全員殺した奴に怯えたのだ。
そこまで異常な奴がいるという現実に怯えたのである。
それから、フラフラとこれからの生活のために必要なものを歩きながら探していると、一人だけ生きている人間を見つけた。
否、生きているというよりかは、死に損ねている……と言った方が正しいくらいの重傷を負った人間を見つけた。
僕は聞いた……どういうことかと。
相手は答えた……悪魔の仕業だと。
僕はそれに対し、さらに質問を投げかけようとも思っていたのだがそのころにはもうその相手は死んでいた。
うむ、いつ死んでもおかしくはなかった。
いくら生命力の強い殺死満鬼族と言えども、この傷の量では生きていただけでも奇跡である。
僕はそんな奇跡に少し感謝の念を感じつつ、進み始めた。
だがその後、生きている人間も、殺死満鬼族を壊滅させた犯人も、見つかることはなかった。
でも、唯一生きていたあの人間は言った。
『悪魔』の、仕業なのだと……。
悪魔なんて不可思議なものが本当にいるとは思えないが、僕はその悪魔を探すため旅に出ることにした。
復讐をしてやろうと、思ったのだ。
復讐なんて、自由な殺人を好む殺死満鬼族っぽくはないけれど、殺死満鬼族が滅んだ今、もうそんなことは気にする必要もないだろう。
別に僕は殺死満鬼族にそこまでの思いやりは無かったが、僕の当面の生活を大変な事にしてくれたのは腹立たしい。
だから、殺すのだ。
犯人は許さない。
よくも僕の自由きままな殺人鬼生活を奪ってくれた。
絶対に見つけ、復讐してやる。
そんなことを思いながら、僕は旅の第一歩目を踏み出し、その際そこを通った人間を一人殺した。
よし、これで一日は余裕で生活出来るだろう。
旅に出て数週間、僕はネカフェにいた。
旅に出たのは良いものの、『悪魔』とやらのいる場所が分からない以上どうしようもないだろう。
一応、ネットで情報を集めてはいるものの、裏世界の話だ。
何の情報も見つからない。
はぁ……と、僕は溜息を吐きながら背もたれにもたれかかり、珈琲を少し口に含んだ。
すると、興味深い記事を見つけた。
高校……という施設についてである。
高等学校、通称……高校。
要は、勉学やスポーツに励む子供達が通うところらしい。
僕はこの手の公共施設なんてところには行ったこともないので良くわからないが、とにかく人が沢山いるということは知っている。
うーむ、なるほど。ネットよりもこういう所に出て情報収集というのも良いのかも知れない。
沢山の人がいるのだ。
口止めされているかもしれないが、裏の世界の何かしらに巻き込まれ、今回の件について知っている奴もいるかもしれない。
僕の年齢はもうすぐこの高校に通える年齢だ。
丁度良い、それまでに生活を安定させ、入学してやるとしよう。
一般常識やらなんやら、勉強もしなくてはいけないが、それくらいは余裕だ。
僕は、殺死満鬼族一の天才なのだから……。
それから数ヶ月の時が経ち、僕はとある高校へと入学した。
名前は覚えていない。
適当に、今住んでいるアパートから一番近い所を選んだからだ。
さて、僕の学生生活はそこまで良いものじゃあなかった。
友達なんて一人も出来なかった。
やはり価値観の違い……という奴だろうか?
みんなと一言は話したものの、友達にはなれなかった。
もともとは情報収集のため、この高校に入学したが、僕は少し期待していたのだ。
普通の人間の学生生活に……期待していたのである。
だが、つまらなかった。
ただ毎日同じことを繰り返す、この日常は、僕にはとてもつまらなかった。
だからその後、僕は学校をサボりがちになった。
良くて二日に一回……というところである。
やっぱり僕には人殺しのほうが似合っている。
もう、明日で学校に行くのは最後にしようと、僕は思った。
そして、現在に至る。
僕は最後の終業の鐘を聞き、足早に教室から立ち去った。
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