魔法少女/THE:Dreamer ~夢現の狭間~

大石小石

第1話


 魔法少女。


 女の子なら誰もが一度は憧れる存在。可愛い衣装に身を包み、箒に跨り、翼を生やし、大空を舞う。そして、華麗にステッキを振って、魔法を放ち、世のため人のため、悪を成敗する。


 そんな魔法少女少女達の夢。その儚い夢を叶えた少女達がいた。

 そんな夢を叶え、人々の夢となった憧れの存在にこう問うとしよう。


『あなたにとって魔法少女とは?』



 彼女達の大半はこう答えるだろう。















『仕事だ』



 ———と。




 ☆★☆


 眠たい。

 日の当たる窓際の席というものは、こうも眠たくなるのかと高校に進学しても改めて思った。

 睡眠不足だから、というのもあるが。


「ふぁぁ……」


 さっきからあくびが止まらない。まぶたも重くなってきている。

 このまま寝ようとするがしかし、それがなされることはなかった。


川斬カワキリ千乃刃チノハ。あくびはさっきので5回目だ。なんだ? 俺の授業はそんなに退屈か。しかも寝ようとしただろ今。」


 現社の教員の亜道アドウ士介シスケ。筋肉質で、というか筋肉そのものといっていい、めんどくさい先生だ。

 お前絶対体育教員だろ、と言いたくなるほどだが、立派な現社教員である。


「おい、聞いているのか。教科書を読め」


 何ページか言わない上に、どこまで読むかも言わない。なんで教師をやってられるのか、全くもって不思議だ。


 まあいい、読もう。


 今習っている場所は現在の、つまり2100年代の経済や社会、政治の成り立ちだ。今の現状を簡単に説明すると、未知の生命体【ヴァリア】と魔法少女が戦っている。

 ヴァリアは、今から約100年前、2019年に突然現れた。家のような大きさのものから、数百mという巨体のものまで存在し、その時代の兵器ではほとんど歯が立たず、核兵器でもないと倒せなかったらしい。それから十数年、防戦一方だった人類だったが、そこに救世主が現れたのだ。

 それが魔法少女。

 嘘っぽいが本当だ。

 そして数十年を経て、生活圏を広げ今に至ると。


 こんな感じで社会がなっているわけだ。


「ふんっ、いいだろう。次からは気をつけるんだな」

「うっす…」

「返事は『はい』だ」

「…はい」


 うへぇ…めんどいなぁ。

 とは言いつつも、この先生とのこのやり取りは一昨日もしていたりするのだが。

 まあ、今回は眠りかけたこっちが悪いので仕方がないな。


 ———そう、眠くなるほどのこのぽかぽかと暖かい今日が悪いんだ。



 ☆★☆



「大変だったねぇー、チーちゃん」


 そう話しかけてきたのはクラスメイトの葉那ハナ御神ミカミだ。ついでに言うと、このクラスで唯一話しかけて来る人物だ。

 私としては、昼食はもう食い終わったので、昼寝をしていたいのだが…。


「チーちゃん言うなし…。で、何しに来たんだ、葉那。用がないなら寝たいんだが」

「えーいいじゃんチーちゃん。それからミカって呼んでよぉ」

「嫌だ」

「ミカミでも可っ!」

「い や だ」

「神様でも……」

「お前みたいな神がいたら世界はおしまいだな」

「…………」


 あ、しょげた。

 しょーがない、呼んでやろう。


「で、神様(笑)」

「やめてぇ⁉︎」

「じゃあ、葉那」

「…チーちゃんのイジワル」


 知らんな。


「あっとね、放課後みんなでショッピング行くんだけどどうかなって」


 懲りないなぁ。


 実は、この申し出はほぼ毎日のように言われている。何がしたいのかはわからんが、まあ、全員とこんな会話をしているのだから、ただしたいだけなんだろう。


「…あぁ、放課後に他の予定が入らなかったらな」

「えぇー、またぁ」

「仕方ないだろ、そこは私にもどうにもならん」

「うぅ〜。だったら一緒に行けるまで誘い続けてやるぅ!」

「はいはい。運良く空いたら行けるかもな」


 っと、予鈴だ。次は…数学か。


「ほら、席付けよ。怒られても知らんぞ」

「は〜い」


 結局、昼休みは寝れなかったが、数学ではぐっすり寝れたので良しとしよう。

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