CoffeeBreak 06 - c.make(friends);

「こどもじゅく?」

「マギの学校はまだ早いけどね。シィちゃんが行きたいのなら学校みたいな場所に行ってみるのはどうかなって思ってさ」


 キャロルちゃんのところでおいしい夕ごはんを食べて、眠くなるまでイスに座ってお絵かきをしてようと思ったら、おにーちゃんがシィに「こどもじゅく」に行ってみない? と聞いてきました。

 おにーちゃんが「がっこー」で先生をしてるから、シィも「がっこー」に行ってみたいって思ったんだけど、シィはまだちっちゃいから入れないんだって。「こどもじゅく」なら、シィでも入れるのかな?


「がっこーみたいな場所? がっこーじゃないの?」

「うん。子供塾っていうのはね、まだシィちゃんぐらいの小さい子が、読んだり書いたりとか、計算とか、色々な事を勉強するための場所なんだって。僕も知らなかったんだけど、デルフィさんに聞いたんだ」

「読んだり書いたり? シィ、ご本を読んだり、手紙を書いたりできるよ?」

「うーん、そうなんだよね……。シィちゃんって見た目の割には妙に学力が高い気がする……。読み書きも計算もできちゃうし……。ねえシィちゃん、どこかで勉強してたの?」

「えーとねー、おとーさんと一緒にお勉強したの!」


 おとーさんとお勉強、たのしかったなぁ。シィがちゃんと答えを言えると、よしよしって褒めてくれたんだ。だからシィ、お勉強すっごくがんばったんだよ?

 シィが答えたら、おにーちゃんはガックリとしてしまいました。


「そうか……また『おとーさん』の仕業か……。いや、この場合はシィちゃんのためになってるし……」

「どうしたの、おにーちゃん?」

「あ、いや、なんでもないよ。それにしても、『おとーさん』は色々教えてくれたのに、肝心のマギランゲージは教えてくれなかったんだよね?」

「うん。シィにはまだ早いって言われたんだー」

「まあ、そうだよね。マギランゲージは危ない事もあるし、シィちゃんはもうちょっと我慢かな」

「はーい」


 おとーさんにマギランゲージを習ってれば、おにーちゃんのお手伝いができたのになぁ。でも、マギランゲージが危ないってどういう意味なのかな? なんだか前の「マギフェスティバル」の時から、おにーちゃんはマギランゲージの事をいろいろ考えてるみたい。

 あの時会ったモンティおじちゃん、シィのこと「おじょーちゃん」って呼んでくれてとっても優しかったのに、ケーサツに捕まっちゃったんだって。シィはあんまりお話を聞いてないけど、おにーちゃんとボスをすっごく困らせちゃったみたい。


「それにしても、困ったな……。一人だけ色々できちゃうと浮いちゃうだろうし、シィちゃんに子供塾は難しいのかなぁ。やめておく?」

「ううん、シィ、『こどもじゅく』行ってみたい!」

「そっか。うーん、まあ、シィちゃんなら多少浮いても大丈夫か。すぐに他の子と仲良くなれちゃうもんね?」

「うんっ! なかよくするよー」


 キャロルちゃんとはお友達になれたけど、他の子とはあんまりお話したことないんだ。こどもじゅくに行けば、お友達がいっぱいできるのかな?

 結局その日は眠くなるまで、こどもじゅくの事をおにーちゃんから聞いてました。なんだか「てつづき」っていうのがあるから、シィがこどもじゅくに行けるのは何日か後になるみたい。

 とっても楽しみだなぁ。


//----


「今日からみんなと一緒にお勉強することになった、シィちゃんです。みんな、仲良くしてあげてね」

「シィです! よろしくおねがいします!」

『よろしく、おねがい、します』


 すごい! シィがあいさつしたら、みんなで声を合わせてあいさつを返してくれたよ! シィもみんなと一緒にあいさつしてみたいなぁ。

 今日は初めて『こどもじゅく』に来ました。先生はとっても優しそうなウサギ耳の女の人で、一緒にお勉強するのは、みんなシィと同じくらいの小さい子ばっかりです。男の子も女の子もたくさんいます。


「そうね、シィちゃんはあそこのベルちゃんの隣に座ってちょうだい?」

「はいっ!」


 みんながシィの事をじっと見てくるなか、先生が指さした席に向かって歩きます。うー、ドキドキするよぅ。ちゃんとお友達になれるかな?

 席に座ると、隣にいた女の子が話しかけてきました。とってもキレイな青い髪を白い髪留めでまとめてる、かわいい女の子です。


「ねぇねぇ、シィちゃん! わたし、ベルっていうの! よろしくね!」

「うん、よろしくベルちゃん! シィはシィだよ!」

「シィちゃんはどこから来たの? 王都に住んでるの?」

「あのね、シィはすんごく遠くから来たんだよ。今はね、王都でボスとおにーちゃんとバレットと一緒にオフィスに住んでるの」

「ボス? おにーちゃん? シィちゃん、おにーちゃんがいるんだ!」

「うんっ! とっても優しいおにーちゃんなんだー」

「いいなぁ。あのね、わたしは弟がいるんだけど――」


 ベルちゃんはとってもおしゃべりが好きみたい。お話できてとっても楽しい! これなら、すぐにお友達になれるかな?


「ベルちゃん。シィちゃん。お勉強を始めるから、静かにしようね?」

「あっ。はーい!」


 ペラペラとしゃべっていたベルちゃんとシィは、先生に注意されちゃいました。舌をペロリと出して、「えへへ、おこられちゃったね」と小声で言っています。

 そっかぁ。お勉強する時は静かにしなくちゃいけないんだね。こんなにたくさんの人と一緒にお勉強するなんて初めてだから、わからない事ばっかりだなぁ。


「それでは、今日は計算の練習から始めましょう。みんな、マギデバイスのスクリーンを出してちょうだい?」

『はーい』


 他の子たちが一斉に黒いマギデバイスを出して、白いスクリーンを開きます。シィももちろん同じようにスクリーンを出しました。お勉強にスクリーンを使うんだね。おにーちゃんと一緒だ。

 先生だけはスクリーンじゃなくって、部屋の前に置かれてる大きな板を使うみたいです。みんなに良く見えるようにするためかな? でも、スクリーンだって文字を大きくしたりできるのになぁ。


「そうね、まずは足し算の練習をしましょうか」


 足し算かぁ。まだ、おっきい数の足し算に少し時間がかかるんだよね。小さい数ならパッてわかるんだけど。ちゃんと先生のお話についていけるかな?


「それじゃあ、今からボードに問題を書くから、みんな、スクリーンに答えを書いていってね。今日から一緒に勉強するシィちゃんはまだわからないかもしれないけど、わかったら書いてみてね」

「はいっ」


 そう言って先生はボード、前に置かれた板に問題を書いていきます。でも、どれもこれも一桁同士のちっちゃな数の足し算ばっかりでした。まだ始めたばかりだから、簡単な問題で練習するのかな?


「さぁ、答えを書いてちょうだい。終わったら手を挙げて先生を呼んでね」

「はいっ!」

「え?」


 シィは先生によく見えるように、ピンッとまっすぐに伸ばして手をあげました。でも、先生はそんなシィを不思議そうな顔で見ています。


「えーと、シィちゃん? わからなかったら、後でちゃんと教えてあげるから、ね?」

「え、わからなくないよ?」

「あら? じゃあ、どうして手をあげてるの?」

「だって、終わったら手をあげてって先生が言ったからだよー」


 えへへ、先生が問題を書いてるのを見ながら答えを書いてたから、もう全部書き終わってるんだ。

 シィが答えると、先生は不思議そうな顔から驚いた顔になりました。他のみんなもザワザワとしています。隣にいるベルちゃんも「シィちゃんすごーい!」と言ってくれました。答えを書くのが早かっただけで、別にすごくないと思うんだけどなぁ。


「そ、そうなの。シィちゃんはとっても足し算が上手なのね」

「うーん、まだ大きい数の足し算が早くできないよ?」

「そう……。でもね、シィちゃん。大きい数の足し算は、まだみんなはお勉強してないのよ? シィちゃんはきっと、みんなより少しだけ先の事をお勉強してたのね」


 え、そうなんだ。おとーさんと一緒に勉強してたから、みんなよりも先の事を勉強しちゃったのかな?


「でもシィちゃんの計算が速くって先生おどろいちゃったわ。みんなも、シィちゃんを見習って速く計算できるようになりましょうね」

『はーい』


 えへへ、なんだか恥ずかしいな。先生がほめてくれたから、みんなシィの事を「すごい」とか「はやい」とかほめてくれます。シィは嬉しくなって、「ありがとー」と返しました。

 でも、みんながみんな、ほめてくれたわけではありません。


「ふんだ。ちょっと計算がはえーくらいで、えらそうにすんなよなー」


 ベルちゃんの反対側に座ってる男の子がそう言っているのが聞こえました。短い茶髪で元気そうな男の子です。机にひじをついて、足をブラブラとさせていて、お行儀が悪いと思います。


「シィ、えらそうになんかしてないよ?」

「え、えらそうなんだよっ! 計算なんてちょっとできたって役に立たないんだからなっ」

「そうかなぁ? お買い物する時とか、お料理する時とか、計算できるとすっごい便利だよ?」


 もっているおこづかいで何が買えるか考えたり、全部でどのぐらい時間がかかるか考えたり、色々な時に計算ができるととっても便利です。


「へ、へん! そんなの、父ちゃんとか母ちゃんがやる事だろ! オレたちができたって意味ないさ!」

「うーん、シィは、おとーさんもおかーさんもいないからなぁ」


 おとーさんはお空の上に行っちゃったし、おかーさんはいるのかもわかりません。

 シィがそう言うと、男の子は今度は泣きそうな顔になってしまいました。


「な、なんで、父ちゃんも母ちゃんもいないんだよ……そ、そんなの、いやだろ……」

「うん、さびしかったけど、今はおにーちゃんとボスとバレットがいるから、さびしくないよ!」

「へんだよ……へんなやつ……」


 そう言って男の子はそっぽを向いてしまいました。もっとお話したかったのになぁ。


 その日はベルちゃんや他の女の子と仲良くお友達になる事ができました。でも、その男の子は結局最後までそっぽを向いたままで、お話できなかったのです。

 ベルちゃん達のお話によれば、あの子の名前はランド君というそうです。少し変わった子で、女の子にはあんな風に文句ばっかり言ってくるんだって。


 せっかくだから、ランド君とも仲良くなりたかったな。

 とっても楽しい『こどもじゅく』だったけど、それがちょっぴり残念でした。


//----


 『こどもじゅく』は毎日あるわけではなくて、三日に一回だそうです。おうちのお手伝いをしている子が多いから、あんまりたくさんできないんだって。シィももっとお手伝いした方がいいのかな?


 シィはおにーちゃんにランド君の事を聞いてみる事にしました。同じ男の子のおにーちゃんなら、ランド君の気持ちがわかると思ったからです。

 おにーちゃんはいつものソファに座っていますが、今はお昼休みの時間です。お仕事中だと邪魔になっちゃうからダメだけど、今なら大丈夫かな?


「ねぇねぇ、おにーちゃん」

「ん? どうしたの、シィちゃん?」

「あのね、『こどもじゅく』で――」


 おにーちゃんに『こどもじゅく』であった事を説明すると、おにーちゃんは途中までうなずいて聞いていましたが、シィが計算の問題をすぐに解いた事を言ったらなんだか変な顔になりました。


「そ、そう。シィちゃんは計算がとっても速いんだね」

「うんっ。先生にもほめてもらったよ? でもね、隣の男の子が――」


 そしてランド君の事をおにーちゃんに説明してみると、おにーちゃんはアゴに手をあてて「ははぁ」と何かわかったような顔でうなずきます。


「それはね、きっと男の子の方もシィちゃんと仲良くしたいんだよ」

「そうなの? でも、なんだかシィに文句ばっか言ってきたよ?」

「ははは、本当に嫌いなら口もきかないと思わないかい?」

「うーん……わかんない」


 シィは人を嫌いになった事がないから、よくわかりません。ミミックのおじちゃんにひどい事をしたお兄さんも、最後はちゃんとごめんなさいしてたし、ミミックのおじちゃんもおにーちゃんが助けてくれたから、別に嫌いになってないんだ。

 でも、口も聞きたくもないっていう気持ちは、なんとなくわかると思いました。ミミックのおじちゃんが助からなかったら、そういう気持ちになっていたかもしれません。


「そっか。シィちゃんは人を嫌いになった事がないんだね。そのランド君は別に本当にシィちゃんの事が嫌いなわけじゃないんだ。でもね、男の子が女の子と仲良くするのは、恥ずかしいし、勇気がいる事なんだよ」

「どうして? おにーちゃんとボスはとっても仲が良いよ?」

「僕とボスは……まあ、うん。大人になると、その恥ずかしさよりも、相手と仲良くなりたいっていう気持ちの方が大きくなるからかな。子供の時は恥ずかしくって、思っているのとは全然違う事をしちゃう事があるんだよ。仲良くなりたい女の子にいじわるしちゃったりね」

「変なのー。どうして仲良くなりたいのに、いじわるするんだろう?」

「はは、それが男の子の難しいところなんだ。素直になれないんだよね」


 おにーちゃんのお話はよくわかりませんでしたが、ランド君は別にシィが嫌っていうわけじゃないのがわかりました。それなら、仲良くできるかもしれません。


「ランド君と仲良くなるには、どうしたらいいの?」

「うーん、そうだなぁ。シィちゃんの方から『友達になって』って言えば、案外『いいよ』って言ってくれるかもね。恥ずかしがって『やだ』って言うかもしれないけど、あきらめなければきっと大丈夫だよ」

「わかった! 今度、友達になってって言ってみる!」


 そしたら、ランド君とも仲良くできるかな?


 シィとおにーちゃんのお話をボスが立ち聞きしていたみたいで、なんだかボスがギクシャクしてた。おにーちゃんとボスって本当に仲がよくって、うらやましいな。


//----


「ねぇねぇ、シィとお友達になって!」

「な、な、な、なんだよ急に! や、やだよ!」


 次のこどもじゅくの時に、おにーちゃんに言われた通り、さっそく隣に座ってたランド君に話しかけてみました。すると彼はビックリしたみたいに口をパクパクさせて、やっぱりそっぽを向いてしまいます。


「あのね、シィね、女の子の友達はできたけど、男の子の友達がいないんだ。だから友達になって?」

「だからって、なんで俺なんだよ! 他にも男なんていっぱいいるだろ!」

「うーん、他の子とも仲良くなりたいけど、一番はランド君がいいな?」

「な、なんで俺の名前……。お、俺は別にお前なんかと仲良くなりたくなんかない!」

「えー? おかしいなぁ? おにーちゃんは、きっとランド君が素直になれないだけで、本当はシィと仲良くしたいはずだって言ってたよ?」

「あ、う……」


 シィがおにーちゃんから聞いた事を言うと、ランド君は口をパクパクして真っ赤になっています。


「ね、シィとお友達になって?」


 そんなランド君にシィはじりじりと近づいていきます。お友達になってくれるまであきらめません。あきらめなければきっと仲良くできるっておにーちゃんも言ってました。


「あー! わかった! わかったから! 近づいてくんな!」

「ほんとっ!? やったぁ!」


 ついにランド君はシィと友達になってくれました!


「えへへ、初めての男の子のお友達だぁ」

「なんなんだよ……変なやつ……」


 ランド君はぶつぶつと文句をいましたが、少し嬉しそうにしていました。おにーちゃんが言っていた通り、本当はお友達になりたかったんだよね?


 やっぱり、おにーちゃんはスゴイなぁ。

 こんな簡単にお友達が増やせるなんて、おにーちゃんの言葉はマギみたいだね。

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