トワイライトセブン
桐原温泉ホテルロイヤルつかさ
第1夜 鏡の中の少女
春は出会いの季節とはよく言ったもので。
真新しい制服に身を包んだ新入生女子たちが俺と出会うために続々と登校してくる。
寝袋持参で校庭に泊まり込んだ甲斐もあったもんだ。
さあ、早速声をかけてみよう!
「やあおぜうさん!俺の名は
「け、結構ですっ!」
…おやおやシャイガールが照れて逃げ出してしまったぞ(棒)
気をとり直して次のレデイにレッツパーリィナウだ!
「ひぃっ!?お、犯されるっ!?」
「なんですのこの悪人顔は!?無礼者!」
「た、助けておかーさーん!」
「事案発生!事案発生!大事な事なので二度言いました!」
…………………
………………………………
…………………………………………………
0勝58敗1引き分け(男の娘だった為)
「なぜだ!なぜ会話自体が成立しないっ!?あれか、若者のコミュニケーション離れというヤツか!?ネット社会の生みだした歪みがこのようガハッ!?」
精神的に打ちのめされた俺の頭頂部を物理的に打ちのめす何か。
このような狼藉を働くのはヤツに他ならない。
「ミコぉ!キサマ何しやがる!?」
振り返った先には竹箒を振りかぶった黒髪ロングポニテな幼なじみの姿が。
『コメットさんストライク』
「技名を聞いてるんじゃねーよ!」
どこかに
会話はタブレットを利用した筆談で行われる。
『軍の魔の手から後輩を守った( ^ ^ )v』
「ええい顔文字を使うなうっとおしい!この暴力女!腐女子!キツネ目!」
『キツネ目ゆーな!( *`ω´)≡○』
「おはよう軍、ミコ、相変わらず仲がいいね」
「おはよ、いくさ、みこ、みやたちも負けず劣らず仲良し」
幼なじみズ残り二人が手を繋ぎながら登校してきやがった。
『べ、別に仲良くなんかないんだからねっ!///』
はいはいテンプレテンプレ。華麗にスルー。
「おはよう二人とも、
文武両道眉目秀麗性格良好の完璧超人と少々天然気味の美少女のカップリングはもはや羨むといったレヴェルを超越している……う、羨ましくなんてないんだからねっ!?
俺もこの悪人顔と評される目つきの悪さと頬の縫い傷さえ無ければ…!
それともうちょっと身長と成績と運動神経とお小遣いがあれば…!
「いくさ、泣いてる?」
美夜子ちゃんの指摘に初めて視界がぼやけていることに気が付いた。
「ほら、ミコが頭を叩くから…」
『え、だっていつもの事だし…(ー ー;)』
勘違いされてるようなのでちょうどいい。この際ミコには大いに反省していただこう。
「いいい痛いぃ!頭が割れるように痛いぃ!この痛さ具合と言ったらカンヌで激痛部門受賞もやぶさかではないぞぅ!」
『大丈夫そうじゃない』
「だね」
「早く教室行かないと遅刻」
「冷たいなお前ら!?」
俺のハリウッドアクターもまっブルーの演技を見破るとはやりおるわ!
鳴り出した予鈴に急かされ、涙目で寝袋セット一式を抱えて教室へ急ぐ俺だった。
「はっ!?」
と眼が覚めると周囲は暗闇だった。
おかしい。俺は六時間目の数学IIの授業を受けていたはずだが…?
何者かによる能力的な攻撃かもしれん、そういえば
光源を求めスマホに目をやると着信を知らせるアイコンが
おやすみ(ー ー)zzz
fromミコ
気持ち良さそうに寝ていたのでクラス一同と示し合わ…共謀…とにかく起こさないであげました♪
気の利く幼なじみに感謝しなさいd(^ω^)
「あいつか…っ!」
身内の犯行とは!ローバーもびっくりだ。
しかし、見回りに来た宿直の教師が起こさないものだろうか…?
PS 今日の宿直は
「謎はおしなべて解けたっ!」
我らが担任、何でもありの藤堂
しかしこうなったら一刻も早く帰宅せねば。
明日、いやもう今日か、の授業の準備をしなければならない。特に体操服を持ってこなければ男女混合嬉し恥ずかし持久走・ブルマもあるよ!に参加出来ない。俺はブルマよりスパッツ派だが決してブルマも嫌いではない。むしろ好きと言うべきだろう。だがハーフパンツ、てめーはダメだ。ハーフパンツァーとは決して分かり合えないだろう。哀しい事だ。
いかん、妄想で徒らに時を費やしてしまった。これがウワサに聞く若さ故の過ちというやつか。
引き戸を開けて廊下に出る。当然ながら誰もいない。
夜の校舎といえば幼なじみズ三人で学園に忍び込んだ事があったな。
あの時は途中で
そういえば…………
最悪のタイミングで思い出してしまった。
今まさに俺の居る大階段の踊り場、この場所に纏わる七不思議の存在を。
「鏡の中の少女…」
スマホを取り出すとまさに4時44分、合わせ鏡の中に死期を告げる死神が映ると言う時間だ。
「だれかいるですかー?」
「!?」
声がした。ごく至近距離から。
スマホの着信…ではない。しかしスマホ…大鏡と合わせ鏡状態になったそこから声は聞こえた。
「こんばんわですよー」
もう一度。女の子の声が。ああ、鏡に!鏡に!
……とてもかわいい女の子が映っていた。闇に浮かび上がるような長くストレートな銀髪に全身に纏ったボロ布のような服装、そして何より鏡の中にしか存在しない事が明らかに彼女が人外の存在だと物語る。
「こんばんはお嬢さん、今一人?時間ある?」
だが、かわいいは正義なのだ。
「!きこえたです!はい!だいじょうぶですます!」
フィッシング!
「よかったらお茶なんかどうかな?アイスティーしかないけどいいかな?」
こんなこともあろうかと鞄に水筒を常備しているのだ!
「いただきますしますですよ!」
しかし差し出したカップは鏡の中の彼女には届かない。どうしたものかと固まっていると、鏡に映ったカップを鏡に映った少女が手に取り、鏡の外では俺の手から離れて宙に浮く。おお!
そしてそのままカップを傾け中身を口に含むと…良かった消えた!危うくモザイク処理が必要になるところだったぜ。
「おいしいですね!あなたいいひとです!」
チョロいよこの娘!?ちょっと今時ギャルゲーでもジュース何回か奢らないと落ちないよ!?ピュア過ぎて心配になってきたよ俺…
ニコニコしている彼女に思わず父性を刺激されてしまった。
「いいひとはここでなにをしてますですか?はっ!?こんなじかんにこんなところにいるなんて、いいひとはもしかしてわるいこですか!?」
「俺、いいひと、悪い子、違う、家、帰る」
「……………………」
「オレサマ、リンゴ、マルカジリ」
「やっぱりいいひとでした!」
判断基準がわからん!
「いいひとなにしますか?あ、じゅみょーみましょうか、じゅみょー!」
「じゅみょー?あ、寿命か!いや待ってモーメント!」
そうだよこの娘「死期を告げる死神」じゃん!「きょうがおまえのめいにちなのですーしにがみだけにですーなんちてー」とか言われたら色んな意味で耐えられないよ俺!
「んしょ、と」
「あ…」
手のひらに温かいものを感じると、勝手に持ち上がっていく。
鏡の中で彼女が両手で俺の手を持ち上げていた。
体温、感じられるんだな…
「ふむふむ、せーめーせんがなんだかぐにゃぐにゃしてますですけどながいです!ながいきさんですね!」
「手相かよ!?」
なんか、こう、死神的なパワーじゃないのかよ!
「がんそーもみれるですよ」
そう言って今度は両頬を包み込まれた。
女の子の手、温かい…
い、いかん!惚けている場合ではない!俺の悪人顔を至近距離で見られたら引かれてしまう!
「見んといて!見んといて!」
「もうみちゃったですよ?はらんばんじょーなじんせいですます!」
「え、そんだけ…?」
「あしそーもみるですか?」
「そうじゃなくて…ほら、俺悪人顔だろ?怖くなかったか?」
「?」
きょとん、と首を傾げられてしまった。ヤバい。カワイイ。いい子だしカワイイ。まるで後光が差しているよう……いや、窓から光が差し込み始めた。日の出のようだ。
「いいひとはおうちかえるんですますね」
「ああ、
「またひとりはさびしくなるですよ…」
うるうると上目遣いで見つめられて心が震え立つ。
「心配ないって、どうせすぐ
だが哀しげに首を振る。
「じぶんはだれにもみえないですよ。あさになっていっぱいいっぱいとおるひとたちはじぶんにきづかないですます」
「でも今こうして俺は見えてるし、話だって出来てるだろ?」
「それはそうきめられたからです。きまったじかんにきまったばしょのあわせかがみのなかでしかでてこられないのです…」
4時44分大階段の大鏡との合わせ鏡。七不思議ではそう語られているが、そんな偶然ではありえない条件を満たす日が果たしてあったのだろうか?
彼女はずっと孤独に存在していたのか。手を伸ばして届く距離に喧騒を感じながら。
そしてこれからも。
ーそんな残酷な事があってたまるか!
「わかった、俺に任せろ」
「?はいです、おまかせするですますよ」
俺はステンレスの水筒を握りしめ、振り上げ、彼女を閉じ込める大鏡の牢獄を、
砕いた。
「全員おるかー?おるなー!うむ、ホームルームを始めるぞ!」
時間きっかりにやってきた藤堂先生の号令にクラスメイトたちが着席する。
俺は待ってましたとばかりに挙手をした。
「せんせー、転入生がいまーす!」
「転入生?そんな話は聞いておらんが?」
「ぱぱらっぱっぱらーん」
自分で効果音を付けながら鞄から取り出したモノは
「みなさんはじめましてですよ!」
どよめく教室。それはそうだろう。いないはずの少女の声。その姿はこの鏡の中にだけ存在する。
説明しよう!この「どこでもミラー(仮)」は適当な大きさに割った大鏡に4時44分で止めたアナログ時計と自撮り棒の先に付けた鏡で合わせ鏡を形成し、いつでもどこでも鏡の中の少女が顕現出来るようにした未来的な秘密アイテムである!
「うむ、はじめましてじゃな!席は
さすが藤堂先生、まったく動じる事なく受け入れてくれたぜ!そこに憧れたり痺れたりするぅ!
『ちょっとまった!!!』
バン!と机を叩いてタブレットを掲げる我が幼なじみ。ちょっとまったコールなんて通じない世代の方が多いんじゃないか?
『正気ですか!?彼女は人間じゃない、トワイライトセブンなんですよ!!?』
いや、うん、正論だよな。
「最上、ワシはそんなくだらん事で差別をするような教育を施してきたつもりはないぞ?」
『くだらない事でもないし、まだ新学年始まって三日です!』
ミコのヤツ、引かないなー。よし、必殺技を使うか。
「くらえー!ミコー!」
ミコの前にいつでもミラー(仮)を置いてやる。
「みこちゃんはくらすめーと、いやですますか…?」
『う"……』
涙目上目遣いのこうかはばつぐんだ!
「別にいいよなぁ、かわいいし」
「そうよね、かわいいもんね」
クラスメイトたちも乗り気だ。やはりかわいいは正義であり、かわいいは力である。
『し、知らないんだからね!』
(ツンデレだ)(ツンデレ乙)(ツンデレね)(毛布田くんは私の嫁)(これがツンデレか)
見事に一致団結したクラスメイ…おい、一人おかしいぞ。
「ではもろもろ手続きはワシがやっておこう。名前はなんと言う?」
くくく、待ってました。名前のなかった鏡の中の少女にこの俺が名付けたのは!
「らみですよ!さっきいくさがつけてくれたなまえですます!」
「鏡だからミラー、となるところを逆読みしてラミだ!」
「「「「「「「「「「「「『センス悪っ!』」」」」」」」」」」」」」」
なんで一致団結するんだよ!
「せんせー!このクラスにはイジメが存在しています!!」
「名前だけではのう…苗字は本能寺でいいのか?」
『ダメっ!』
「なんでお前が反対するんだよ!?」
『え、いや、だって、その、うん、可哀想でしょ、女の子が本能ジラミなんて!』
「ちょ、おま…!?」
本能の赴くままに美少女に寄生するシラミ…確かにナイ!
「では…うむ、そうじゃな、閻魔大王の持つ大鏡になぞらえて
「「「「「「「「「「「「『ハイセンス!』」」」」」」」」」」」」」
なんだよお前ら仲良しだなチクショウ!
「じょうはりらみ…えへへ、らみわじょうはりらみですよ!」
こうして我が二年三組は新学年開始三日目にして新たなクラスメイトを迎え入れたのであった。
「ところで本能寺、大鏡が割れとったの、お前の仕業だったんじゃな」
「ゲェッ!?なんという名推理!?」
「今月中に弁償するんじゃぞ。あと生活指導の
「おふぅ……」
「失敗、した。まさか軍がトワイライトセブンと出会ってしまうなんて…」
喧騒の中、聞き覚えのない声の呟きは俺の耳に届かなかった。
トワイライトセブンNo6 鏡の中の少女
「これは部活の先輩の友達が実際に体験した話なんだけど。
大階段の二階の踊り場に大きな鏡があるでしょ?
あれって曰く付きの鏡でね、隠れキリシタンの使ってた魔鏡ってやつなんだって。
知らない?魔鏡?光にかざすとマリア様の姿が浮かんでくるやつ。どうでもいいけど、拝むならマリア様じゃなくてキリストとか神様じゃないのかな?
関係なかったね。で、その隠れキリシタン、隠し通せなくて鏡の前で処刑されちゃったんだって。槍で刺されて吹き出た血で真っ赤に染まった鏡に浮かび上がるマリア様、ホラーだよね。
それ以来処刑の行われた時間、4時44分になると鏡が真っ赤に染まるんだって。
え、そんな鏡がなんでウチの学園にあるかって?そんなのは知らないよ。それで、先輩の友達がね、朝練に来ようとして間違って二時間も早く着いちゃったんだって。時計が狂ってたっていっても、明るさとかでわかりそうなもんなのにね。
そう、それが4時44分。例の鏡の前を通りかかったんだってさ。
そしたら……うん、そう思うよね。でも鏡はキレイなままだった。先輩の友達もね、なーんだって思って写メを撮ろうとしてスマホを取り出したんだって。
スマホって画面消えてる時って鏡みたいじゃん?それで合わせ鏡状態になったんだって。
そしたら、出たんだって、鏡から女の子が!ううん、マリア様じゃないよ。女の子、少女。
少女が指差して言うの。「お前の命は
先輩の友達、びっくりして部活で皆に言って回ったんだって。それが五ヶ月前の話。
予言?外れたよ。
だってその人、たった一週間後に事故で死んじゃったから。
部活の試合中の事故。首から血がドバドバ出て大変だったみたい。
なんの部活かって?剣道部だよ」
第1夜・夜明け「ラミの日記」
にねんさんくみ じょうはりらみ
らみわじょうはりらみですよ。とうどうせんせがにっきをつけるといいいわれたのでかくですよ。
らみわいいひとのいくさのいえにすむことになったですよ。
いくさをいいひというとみこちゃんがおこるのでいくさとよぶのですよ。
みこちゃんわつんでれらしいのですよ。
そとのせかいにわいろいろあってらみだいこーふんですよ!
とくにtelevisionわよいですますね!
らみわねなくてへーきなのでよなかもつーはんをみてるですよ。
いくさといっしょにみようとおもたのに「おとこにわひとりのじかんがひつようなのさ、どやあ」とへやにこもってしまうですます。
ひとりでなにをしてるかわなぞです。
ずうといっしょにいたいとおっもいました。おわり。
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