19.魔族の宴Ⅰ
「コネ……か」
俺が院長に課せられた課題は『最低一つ以上のグループとコネを作ること』
つまりは初対面の奴らと
今までは褒めるにしても
人見知りな俺は初対面とか苦手だからだ。
初対面で打ち解けられたのは飼育小屋のコケコさんだけだ。
かといって、一つ以上とか言われたら何個は成果をあげたい。
好奇心スキルの妖精もわくわく言ってる。
さて、どうしたものか。
来週はゴールデンウィークもあるから学校に行く日も少ないんだ。
とりあえず考えるのめんどく……いや今日は調子悪いから箕面の家でも行くか。
土曜日だけど特に用事もないからな!!
箕面に電話して、今から行くからなとアポをとる。
箕面の家は俺んちから徒歩五分。
親が転勤族だそうで、高校に通うために婆ちゃんと二人で住んでる。
婆ちゃんと言ってもまだ若いので多趣味に遊びまわっているらしい。
箕面ん家のデカいテレビで、録画した一週間分のアニメを見るのが俺の土曜の楽しみでもある。
ピンポーン――
「はいはい! いらっしゃい、ゆーま!」
箕面の和風な家に上がりこみ、いつものように鑑賞会だ。
テレビとちゃぶ台と座布団。
女の家で二人っきり、なんて
気兼ねなく付き合える仲間、箕面もきっとそう思ってることだろう。
腐れ縁だからな。
異世界転生のものアニメを見終わったころ、ふと俺はつぶやく。
「空から異世界人のグループでも降ってきて、そいつらとコネ作れねーかな」
箕面は呆れたように返す。
「アニメとリアルをごっちゃにしちゃ、いくないと思うよ」
これだから女は。
なんかの本で読んだことがある。
男はロマンを追うが女は目の前のリアリティを大事にするんだとか。
まあリアルにコネを作らないといかんので、ロマンは置いとくしかないか。
「箕面、俺に手貸してくんねーか?」
「え? あ、はい」
箕面は右手を俺に向けて突き出す。
つくづくバカだ。
古典的
「ちげーよ。俺の力になってくれって意味。ほらお前、俺のおかげで友達多いだろ?」
「そうだね、ゆーまにはホント感謝してるよ」
特に何もしてねーんだが、恩着せがましく言ってやった。
素直に感謝を述べるこいつは、どうゆう神経してんだ。
良い奴すぎ。
まあそこが好きなんだが。
いつか高いツボを買わされるんだろう。
「お前、良い奴すぎ」
俺は箕面の頭をわしゃわしゃ撫でてやる。
社会人になったその時も、俺たちはこうしてつるんでいるんだろうか。
「むー、子供扱いしないでよ。もう……」
箕面はほっぺを膨らませ俺を
そうゆうとこが子供なんだが。
「で、誰か紹介してくれよ」
「ええ!? やだよ、男なら女の子は自分で捕まえなよ!」
「だからちげーよ。なんか将来カネになりそうな奴をだな」
「サイテーだね。ゆーま」
箕面は目を細め、俺に軽蔑の視線を向ける。
はあぁ。
もう色々とめんどくさくなってきた。
俺はこくこくと大げさに頷く。
「そうですよね!」
いーっと歯を出して箕面を睨んでやる。
箕面は笑って『なにそれ子供だね』とか言いながら俺の頭を撫でる……
って、おい!
なにをのほほんとした日常系をやってるんだ俺!
スリルとサスペンスはよ!
まあ、いきなり紹介とかされても何喋っていいかわかんねーから、いっか。
とりあえず自分で何か動いてみるとしよう。
そこへ箕面がとある話を切り出す。
「あ、そういえばお
「後藤の部? ああ、吹奏楽部か」
俺のクラス担任である後藤は、吹奏楽部の顧問だ。
音楽の教師でもないのに。
なにやら学生時代に吹奏楽部でブイブイいわせてたらしく、コンクールとかも出まくってる。
場数を踏むのが一番だと、ボランティアで介護施設に行って演奏させたりして経験を積ませているらしい。
そっちの人脈も広いらしく、色々ノウハウを持ってるとか持ってないとか。
しかし、吹奏楽か。
全く社長の道と関係ないよな。
まして後藤ちゃんかよ。
そこ攻めんのハードルたけーな。
「ゆーま、音楽好きだよね? 今度見に行ってみる?」
おいおい、俺が好きなのは音楽ではなく、音楽やってる妹だよ。
でもシスコンではないぜ、あいつがブラコン妹なだけだ。
そういや、りぃの夢に何か繋がることあるかもしんねーな。
「そうだよな。行ってみっか」
「ほんと!? 意外だよー、またメンドクサイってゆーかと思った!」
その後、たっぷりアニメの世界を楽しんだ俺は箕面の家を後にした。
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