18.ベストアンサーじゃないんだからね!Ⅲ
「その通りですね。信頼と呼べるものではないでしょうね」
おいおい、大丈夫かよ。
「僕の裏技は
そりゃそうだろ、うわべだけの信頼を得るなんて本あったらびっくりだ。
「大人なんてね、実際は子供より小さいことでイラっとする人が多いんですよ。なんでかわかります?」
「時間がないし、ストレスとかが溜まってるからじゃないっすか?」
「そうですよね。それもあります。そのストレスになることの一つとして、社会人としての暗黙のルールが増えるからなんですよ。逆にそれに慣れておけば、とてつもなく楽なことがいつかわかると思います」
「化粧をしてないだけでエチケットが無いと思われたり?」
上原が言ってたな。
「そうです! 敬語とか僕自身もかなり未熟です。まだまだ勉強中。それでも暗黙のルールをキチンと守ることのほうが大事なのです。上辺でもです。例えば君は上司のいる部屋、そうですね、職員室としましょうか。入る時はノックを何回しますか?」
「そら、二回っしょ?」
みんな二回だから俺もそうやってきた。
「本当は三回ノックが正しいといわれているのですよ。トイレとか誰も入ってないことを確認するときが二回ノック、それが今の日本の常識なのです」
「そんなの……みんな二回なんだから別に良くないっすか?」
みんな間違ってるって言うのかよ。
「そうですよね、別に良いんです。ただ、相手が三回ノックするマナーを知ってる人だとしたらどうですか? 大手企業の社長と呼ばれてる人なら当たり前に知っていますから。例えば百瀬君が二回ノックで入ってきても何とも思わないでしょうね。では、三回ノックで入ったらどう思うでしょうか? こいつ、若いのにデキる男なんじゃないかって印象持つと思いませんか?」
「言われてみると……確かに」
デキる男と思われたいぜ……
「職員室から出て行く時はどうですか? 『失礼しました』って言ってないですか? 本当は出るときも、『失礼します』というのがマナーを知ってる人です。失礼なこともしてないのに失礼しましたって言うのはおかしい、と定義されているそうです」
「理屈っぽいんすね、大人は」
知ってる人からすると出来てない人にはイラっとするんだろうな。
「例えどんな凄い人でも、マナーが出来てないとまだまだだなって思われたりします。本当の自分をわかってもらう前から常識不足というレッテルを貼られるんですよ」
それは損だよなあ。
「そこで、最も早く社長になる方法……それはズバリ、上辺の付き合いでもいいから『コネ』を沢山持つことなんですね、あはは」
先生は頭をぽりぽり掻きながらそう言った。
「コネって、裏口入学とか麻薬組織とかそんな感じっすか」
少し軽蔑した目で言ってやった。
「そう言う意味でも使われますが、僕のコネとはコネクションそのままの意味で『繋がり』、いわゆる『縁』ですね」
繋がりですか。
人と関わるのを嫌う俺の、もっとも苦手なとこじゃねーか。
「こうして僕らが出会ったのも縁があってこそで」
不敵な笑みを浮かべる院長。
縁っすか。
確かにここに来たのも上原と箕面のおかげか。
ついでにゆうと絡んできたヤンキーくんのおかげなのか。
「成功するためにはチャンスを掴む
「運かよ……夢が遠くなりました」
「その運はですね、確率を上げることが可能なんです。ゲームでも『LUCK』にステ振りすると上がるでしょ?」
「ステ振りできるの!?」
「ずばり、そこでコネです。コネクション」
説明がやたら少年ちっくだな。
院長はゲーマーか。
「繋がりが多ければ多いほど運のステータスはあがりますよ。あとはチャンスがきたら絶対掴むぞって思っていればいいのです」
運が高いのはある種、チートみたいなもんだよな。
「君が例え人に関わるのが苦手でも、別に深く関わらなくていいんですよ」
院長は光らせた鋭い目つきで俺を見る。
「そいつらを手のひらで転がすんだよ」
ヘイ!
魔王だ!
魔王が出たぞ!
勇者はどこだ!
ウーウー!
ピーポーピーポー!!
「本当に信頼関係を築き上げるのは数少なくていいんです。『縁』の中で三割いれば十分。自分の会社の幹部であったり友人、愛する家族とか」
友人、家族か。
今のところは箕面とりぃぐらいかな……
上原とも仲良くなりたいけど。
「はい、固定完了です。松葉杖は今日で終わり。次は一週間後に来てください。経過が良ければ固定も簡単なものに変えますから」
「やった! 杖なくなった! これで週末は遊びに行けるぜ!」
友達いないけどな!
「それまでに裏技三つを使って新規のコネを作ってきてください。どんなものでもいいです。今あるコネを
episode『ベストアンサーじゃないんだからね!』 end...
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