11.ひなたⅢ
高校生活では早速、ボクはボクを突き通した――
ゆーまに言われた通り、正義をつらぬいた。
ゆーまは宣言通り、悪になろうとしてくれた。
本当はいじめっ子の役をやってそれをボクが退治する、そんな程度の味方をしてやるだけのつもりだったらしい。
『まさかこいつが小学生じゃなかったなんて……まして高校で悪役をやることになるとは……』と嘆いていたけど。
あまり人と関わりたくないらしい。
そう言いつつも、ちゃんと付き合ってくれてたんだ。
むしろ楽しそうだと不適な笑みを浮かべていたのは見逃してない。
先生に皮肉を言って反抗したり授業サボったりするゆーま、それを
ゆーまは、『気にすんな俺もこれが素だから楽なんだわ』と言ってくれる。
ボクも一時は悪を従える裏番長みたいに言われた時期もあった。
ゆーまはなぜかヤンキーと間違われることも多かったから。
だけどそのうち皆もボクの性格を認めてくれて、仲良くしてくれるようになった。
おかげで友達はいっぱいできた。
風紀委員に推薦されるほど。
それは断ったけどね。
生徒会なんか入ったら、ゆーまと遊べないじゃん。
ゆーまはもう、悪役をやる必要はなくなった。
一人の友達になっていた。
ボクと一緒で誤解されやすいタイプ。
今度はボクが悪役をやらせてと提案したけど、『俺はお前だけでいいよ、メンドクサイ』だって。
ゆーまは掛け替えのない親友で。
一番大切な人で。
友情プラス密かに恋という下心付きなのは絶対秘密。
ゆーまの良いところは沢山知ってる。
例えば面倒見が良いとこ。
ボクに対してもそうだけど、妹さんがいるからかな、お兄ちゃん肌。
あとは人間観察力かな。
あいつはこうゆうスキルがあるとか、こうゆうとこが良いんだけどもっとこうゆう風に使えばいいのにとか。
まあ、だからといってその人に深く関わろうとはしないし、めんどくさがり屋さんなんだけど。
今は男は独立するんだーとか言って迷子になってる。
平和な家庭を築きたいだけのボクには考えもしないことだよ――
そんなことを思い出しながら面談の続きを受ける。
「お前は真面目だが、学力がちょっとな……」
「一生懸命頑張ります!」
「まあ、行けそうな大学もピックアップしといてやるよ」
「ありがとうございます!」
そう言ってボクは進路指導室を後にする。
先生は優しく言ってくれるけど、ボクでも行けるところあるのかな。
期待に応えられるよう頑張らなくっちゃ。
教室に戻ると
喧嘩っぱやいけど話せばわかってくれる人だ。
ボクとも仲良くしてくれる。
「わりい箕面。色々あって百瀬に喧嘩売っちまったんだが、その後――」
「なんだって! ゆーまは!? どこ!?」
「あ、今はまだ保健室にいるんじゃねーかな」
「ひどいよ才川君!」
「ちがっ、その後にだな」
ボクは何よりゆーまが心配で飛び出した。
保健室へと一目散だった。
才川君が何か言おうとしてたけどそれどころじゃない。
ガラガラと保健室のドアを開けるボク。
飛び込むと、ゆーまは怪我をしている様子だった。
「ゆーま、大丈夫!?」
足を痛めてるみたい。
「おー。面談終わったのか?」
拍子抜けする声で返事をするゆーまを見て、ボクは肩を撫で下ろした。
殴られたんだと思ったけど、顔には傷もない。
やっぱ顔もかっこいいな。
いやいや、そんなこと考えてる場合じゃないや。
ところで、ゆーまの横に立ってるのは、四組の上原さん?
邪魔しちゃったかな。
ゆーまはたぶん上原さんの事が好きだ。
いつも上原さんを目で追ってるのを知ってる。
前に聞いた好きなタイプもドンピシャだった。
ちっぱいボクとは全然違うタイプ……
ちっぱいゆーな!
上原さんとはこないだ転んだとき保健室でお話した。
化粧して髪も染めてるから誤解されやすそうだけど、真面目ですごくいい人だったし。
ツンデレっぽいし。
お似合いだと思う。
ちょっと、もやもやするのが辛い。
話を聞くと、才川君にやられたわけじゃないみたい。
喧嘩はよくないけど、ボクが話も聞かずに先走っちゃったこと、謝らなきゃ。
帰りに靴箱で、上原さんからバイト先の紹介カードをもらってたことを聞いた。
ゆーま的にゆうと、フラグが立っちゃったって感じ。
それから接骨院までの道のりでは、松葉杖のゆーまがふらつきボクにもたれ掛かった。
ゆーまがこんなに近い……
顔から火が出そう。
バレないようにしなきゃ。
そうだ、アニメの話でもしよう。
ボクも色々研究したんだ。
翌日の放課後のゆーま――
今日も上原さんとこ行くんだ。
放課後いつもはボクん家で漫画読んだりしてたのに。
少し寂しいな。
ううん、そんな風に考えちゃだめ。
怪我してるんだから当然だよ。
でも、付いていくぐらいなら良いよね?
親友だもん。
「今日はボクも付いていこっかな。暇だし」
episode 『ひなた』 end...
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