異世界転生したら、家族全員日本人だった。

神谷霊

プロローグ

プロローグ 1

僕はどこにでもいるような平凡な一モブである。特に、これと言って得意なこともないし、リアルが充実してもいないし、イケメンでもないし、頭も普通だし。かと言って、それらが酷いということもない。本当に平凡である。

こんな僕だからこそなのかもしれないが、僕は人が嫌いだ。簡単に他人を騙し、自分のことしか考えていない、そんな奴ばかりいるから、嫌いだ。そんなことないとかって言う奴もいるが、そんなこと綺麗事にすぎない。心の中では、どんなことを考えているかわからないが、自分のことしか考えていないのはわかってる。でも、それを表に出さないのは、敵を作りたくないからだ。

僕だってそうだ。無難に生活したいから、周りに同調して、目立たないようにしている。こんな関係だと思うとますます、人のことが嫌いになってくる。

なんで、こんな思考になったかって?

そんなの中学に上がって、今まで友達だと思っていた奴らが、全員僕のことを省くようになったからだ。それから、人を信じられなくなったのだ。

結局、力のある人気者だけが、中心にいて、そいつらの機嫌を取りながら行動しなければ、はぶかれるのだ。

そう思うと、世界は理不尽だ。極一部の中心人物が自由に行動できて、その他は、その人物の行動に束縛される。なんで、こんな世の中になったのだろう?こんな嫌な世の中に。

そう思うと今の状況は幸運と言えよう。なぜなら、車に轢かれそうになっているんだから。ようやくこの嫌な世界から、消えられる。ようやく、休める。

そうして僕は、意識を手放した。



気が付くと僕は真っ白な空間にいた。そして目の前には、老人がいる。すると、いきなり老人が話し始めた。

「お主は、選ばれた」

「へっ?」

まったく意味がわからなかった。惚けた顔をしていると、

「おお、すまんかった。何も説明もしておらんかったな」

なんか急にフランクに話しかけてきた。

「はい、確かになにも聞いてませんね。それで、なにに選ばれたんでしょう?」

「お主には、これから異世界に転生してもらう」

「えっ、本当ですか!?」

と、食い気味に聞いた。

「あ、ああ」

そうすると、すこし引いていたが、そんなことお構いなしだ。

「やったー!」

「そんなに嬉しいか?」

「はい、こういう異世界召喚とかしてみたかったんです」

「それは、よかった。でもお主はもう死んでいるんじゃぞ?」

「それについては、なんとなく察していたんで今更ですし、未練なんて……あれ?記憶が曖昧なんですけど?」

前世についてほとんど思い出せる記憶がないことに驚いた。そして、人が醜いということも忘れていた。

「ああ、それは、ここでいろんなことを知ってるとすごいチートな転生者が誕生するから、その防止の意味で消してるんじゃ。あ、でも、向こうに行ったら元に戻るから、心配することはないのじゃ」

「あ、そうなんですか」

「まあ、全部消すわけじゃないから。それに、それなりに残ってないと選べないし」

「ああ、たしかにそうですね。その残る記憶には、基準があるんですか?」

「あるよ。それはその人が大切にしている記憶じゃよ」

そして、僕は残っている記憶を知って愕然とした。

「残しておきたい記憶って、知識かよぉぉぉ!僕って、どんだけ友達が少なかったんだよ!」

「まあ、落ち付け。とりあえず自分のステータスを作るのじゃ」

「少しくらいはゆっくりさせてくださいよ……ん?ステータスを作るってどういうことですか?」

「ああ、そのままの意味じゃよ。まあ、と言ってもあとは、スキルなどを決めるくらいなんじゃが」

「それと、どれくらいの期間があるんですか?」

「ん?ああ、あと300日くらいはあるよ」

「そんなにあるんですか?!」

「ああ」

思いのほか長くて驚いた。


それから、説明を受けた。

「まず、得られるものには上限があるがそれは人それぞれ違う。だから、この時点でチートかどうかが決まったようなものじゃ」

「じゃあ、僕はどれくらいなんですか?」

「ああ、お主は、100ポイントじゃ」

「?それってどうなんですか?いいんですか?悪いんですか?」

基準がわからなかったから、首をかしげることしかできなかった。

「まあ、普通じゃな。今のところ最大は1000ポイントじゃったからな」

「1000ポイント!?それじゃあ、僕は全然だめじゃないですか?!」

「いや、そうでもない。そいつが規格外だっただけだ。他の奴らは大体が100ポイントだし、500ポイント以上なんてまだ10人にも達しないからな」

「それなら、普通なのか。でも今までにどれくらいの人がここに来たんですか?」

「わしのところだけじゃないから、正確にはわからないが、おそらく50人くらいじゃ」

「それって、5人に1人はチートってことじゃないですか!結局僕はダメな方じゃないですか!というか、他の所ってどこですか!」

「まあ、そんなことより早く決めんか」

「なんか、扱いが酷くないですか?!」

「そんなことはない」

明らかに、誤魔化そうとしていた。でも僕はあまり気にしていなかった。別に隠したいなら、隠していればいいし。

「まあ、いいですけど。それより、ものってことは、スキル以外にももらえるってことでいいですか?」

「ああ、基本は何でもいい。というか、ここにそのリストがあるのじゃが」

「それを早く見せてくださいよぉぉ!」


それから、一通りそのリストを見てから、決めたのを言っていった。

「じゃあ、とりあえず消費ポイント0の"元自分の物"っていうことで、僕の持っていたタブレットPCを」

「ああ、わかった」

すると、何もないはずの空間から、いきなりタブレットPCが出てきた。

「!?」

いきなりのことで驚いているたら、

「驚かせてしまい、すまんかった。」

「いえ、気にしないでください。驚きましたけど、さすがは異世界って感じで、なんか良いので」

「そ、そうか?」

あまりに目をキラキラさせたら、少し引かれた。なんか悲しい。

「じゃあ、次はリストには載ってないのですが、ストレージが欲しいです。あ、無理なら、いいですけど」

「無理ではない。それは、5ポイントくらいかな」

「そんなに低くていいんですか?」

新しく作る場合は、道具系なら、10までで要相談、と書かれていたからだ。それと、その人の思う通りになるから、自分の想像力が必要らしい。

「まあ、お主の記憶で見る限り、便利ではあるが、エクスカリバーとかに比べれば全然たいしたことないからな」

「そういうものですか。それでは次もリストに載ってないもので、メニューをください」

「メニューってストレージとは違うのか?」

「うーんと、違くはないのですが、ゲームとかででてくるメニュー画面みたいにいろいろな機能をつけたいからので」

「ああ、そういうことか。それで、どんな機能を、つけたいんだ?」

「それではまず、今まで言ったのを付けてください」

「今までというとそのタブレットPCもか?」

「はい。タブレットPCは異世界だと目立ちますから、出さずに使いたいんですよ」

「なら、その他になにを加えるんだ?」

「図鑑やステータスの確認、ヘルプ機能を付けてください」

「図鑑って、知っているもの知らないもの関係なく全てわかるものか、知ってるものしかわからないもの、どっちがいい?」

「?どういうことですか?」

「まあ、要するに図鑑を渡されるか、白紙を渡されるかの違いだな」

「それ、前者の方が全然いいじゃないですか?!」

「いや、そうでもない。前者は図鑑とか、知識とかの関係で、ポイントをもらうし、後者だって、図書館ならあるからそこで知っておけば、なんら問題はない」

わかりにくいため説明すると、作られた図鑑を貰うか、自分で図鑑を作るかの違いなのだ。

「それなら、後者のほうでお願いします」

「なら、メニューにそれらの機能を付けて4ポイントもらおうかね」

「また、低いですね。そんなに低くて大丈夫ですか?」

「さっきも言ったが、エクスカリバーと比べるとな、霞んじゃってな」

さっきから、エクスカリバー、エクスカリバーとうるさい神様だ。過去になにがあったのだろう?


「次はスキルで鑑定が欲しいです」

「それは、1ポイントだな」

「あと、スキルってその程度のポイントでいいんですか?」

「まあな、はっきり言ってその程度じゃチートにはならないからな」


それから、しばらく考えたが、これ以上欲しいものがリストに載っていないし、自分で考えつきもしなかった。

「あのー、もう欲しいものがないんですけど」

「もうないとか、欲がないなあ」

「だって、変に強くしちゃって戦争に駆り出されたくないし、ステータスと噛み合わないものを貰っても意味がないからね」

「そういえばお主のステータスを見せてなかったな」

「そういえば、見ていませんね」

「ほれ、これがお主のステータスだ」

そう言うと、何もない所からプレートと言うか、板と言うか、そんなのが目の前にいきなり出現した。

「!?」

また、驚いてしまった。そのことに少し恥ずかしくなったが、僕は自分のステータスを見て、そんなことは忘れてしまうほど驚いた。明らかに一つだけおかしいのがあったからだ。


ステータス

(佐藤真)Lv1

HP10

MP1000(100)

攻撃10

防御10

魔攻10

魔防10

俊敏10

スキル

無属性適性


「なんでMPだけこんなに高いんですか!?それ以外はほんと、平凡なのに!?」

「さあ?よくわからん」

「よくわからんって、そんなんでいいんですか神様って」

「神だって万能ではないんじゃから」

「はあ、まあいいですけど、それとこの無属性魔法適性ってなんですか?」

「……そのままの意味だよ。無属性魔法が使えるようになるかもしれない、というものだよ」

はっきりといって、神様自体そのスキルがどういうものか理解していなかったから、適当に答えていたのだ。

「ってことは、これ系のスキルがないと魔法が使えないってこと?」

「い、いや、そうではない。まあ、人によって使えるようになる属性は違うけど」

「そうですか、じゃあこのスキルはどんな解釈をしていればいいですか?」

「まあ、一様さっき言った通り、無属性魔法が使えるようになる可能性がある、というように思っていればいい」

「そうですか。魔法が使えるってことは……じゃあ魔力回復速度上昇が欲しいです」

ちなみに、魔力回復速度上昇は10ポイントだ。

「無難な選択だな」

「まあ、無難なのが一番ですから。えーと、まだ15ポイントしか使ってないですよね?」

「ほんと、もう欲しいのはないのか?」

「はい、だって100ポイントだけじゃそこまでチートなのもないし、かといって新しく作るのもたいへんだし」

「まあ、あと約300日もあるんだからゆっくり考えなさい」

「そういえば、そうでしたね」


しばらく考えていたら、あるチートなスキルを思いついた。

「すいません、スキルも新しく作れましたよね?」

「ん?ああ、スキルなら50ポイントまでで作ることは可能じゃぞ」

「っとその前に、スキルってどうやったら、習得することができるんですか?」

「それはな、一旦自分の力だけでスキルを使うことだ。例えば、二刀流のスキルがない状態で、二本の剣を振っていれば習得することができる、とまあ、こんな感じかな」

「あと、どのぐらいでスキルってレベルがマックスになりますか?」

「うーん、スキルにもよるが、攻撃系のスキルはレベルマックスが10で1レベル上げるのに、レベル×100倍の経験値が必要じゃよ」

「その経験値ってどのくらいで手に入るんですか?」

「それは人それぞれだからな、よくわからん」

「なら、どのくらいの期間でレベルマックスにできますか?」

「いや、ほとんどの奴がレベルマックスにはできてないんじゃよ」

「えっ、それって上げるのがかなり大変ってことですよね?」

「まあ、そういうことになるな。それと、非攻撃系のスキルはレベルマックスが100でレベル×100倍回使用して、1レベル上がる程度じゃな」

「ってことは、約50万回使わないとレベルマックスにならないってことですか。それなら、あまり多いようには感じませんね」

「いや、そうでもないぞ。1日100回使ったとしても約13年はかかるんじゃからな」

「たしかに、そう考えるとかなり厳しいかもしれないですね。それに1日100回とか、それも厳しいですよね」

「まあ、そう言うとことだ」

「それなら、まず成長率上昇っていうスキルを作ってください、イメージはしてあるんでそれを見てください」

「!そういう発想があったか。これは50ポイントいっぱいに使っても普通なら足りないぞ」

「まあ、50ポイントまででって言いましたから、それとスキルを習得する基準を下げるようなことはできますか?」

「できないことはないがそんなスキル使い道なんてある──そういうことか」

「そういうことです。それとポイントはどのくらいですか?」

「まあ、仕方がないか。新しく作ったんだから35ポイントにしてやるかな」

「ありがとうございます!」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る