ヤンデレ化

私は、シンと見知らぬ女がキスするところを見てしまった。


その時は逃げてしまったけど、後に考えたら、キスくらいで大袈裟だと思った。それに別にあの女と付き合うって決まったわけじゃないんだから。


そんなことを引きこもりながら考えていたら、部屋の前まで、シンが来た。


この時私は何も聞かずにやり過ごせばよかったと思った。でも話しかけられたから、それに答えてしまった。


シンと話すことで自分とシンとの関係を認識させられてしまったのだ。結局のところ私とシンは主人と使用人。よく貴族にありがちな恋愛関係にすら発展してない関係ということ。


そして、シンが私のことを意識してなかったってこと。


だから私は外に出ることができなくなった。シンの顔を見たくなかった。


そして、私はあることにすがることにしたのだ。それはシンがあの女に何らかの魔法によって、ああなったのだと。それに魔法には精神支配系のものもあるからな。


もうこう考えてしまうと、これ以外のことが考えられなくなった。


そう思うと急にあの女が憎くなった。そして私がシンを助けないと、そんなことを考えるようになった。


じゃあ、どうすればいいのか。それは簡単にわかった。


あの女を殺せば、魔法の効果も切れる、だから私はあの女を殺すべく家から出ていった。でもこんなこと公にはできないから、誰にも見られないようにした。


それにあの女を真正面から殺すなんて私にはできないし。それは単に私の方があの女よりも弱いと思うからだ。


でも不意打ちなら、殺すことは可能だ。何年、勇者様に稽古をつけてもらってと思うんだ。


そして、学校に行き、あの女を見つけた。ここからが本番だ。できるだけ人気の少ないところがいいからな。あとをつけて行き、人気の少ないところに入っていったところを後ろから、グサッと。


刺したものは短刀だ。


私はここを去ろうと帰ろうとしたとき。


「はあ、まったく制服が台無しじゃない」


そんな声を聞き、振り返るとそこにはあの女が立っていた。


「うそでしょ?」


「嘘なわけないでしょ」


「なんで?心臓を刺したはずなのに」


「そんなの私が不死だからよ」


そしてその女は短刀を抜いた。すると抜いたところから傷が治っていった。


「うそでしょ?」


「嘘じゃないわよ。それよりもなんでこんなことをしたの?」


「なんでって、シンのためよ!」


「どうしてそこでシン君がでてくるの?」


「あなたがシンを操ってるのはわかってるんだから!」


「そんなことしないわよ」


「犯人はみな認めないわよ」


「事実なのに。それにそんなの魔法なんて持ってないし」


「ふん、どうだか」


「じゃあ、シン君が私を好きになってどんな利点があるの?」


「それは……」


「ほら、ないじゃない」


「そんなことはない!」


「じゃあどんなことよ?」


「好きな人にも好きになってもらいたいから」


「そんなことしないわよ。それに私はシン君が幸せならそれでいいから」


「うそよ!」


「それに、そんな魔法は使えないし。使えてれば、あなたに使って洗脳してるわよ」


「う、でも」


「さらに言えば、なんで私そこまで悪人扱いされないといけないの?」


「それはあんたがシンを洗脳するから」


「だからそんなことはしてないわよ」


「じゃあ、なんでシンがあったばかりのあんたと抱きついてキスをするの?」


「それは、シン君の許可がないから言えないけど、ちゃんと理由はあるよ」


「そんなこと信じるわけないでしょ!」


「それなら、シン君に聞いてみれば」


別にこの女のことを信じたわけじゃないけど、それが一番早いと思ったから、とりあえず帰ろうと思った。




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