第36話 部屋の前

僕はルナが帰った後にリリーの部屋に向かった。ぶっちゃけ主人が使用人の部屋に行くことすらおかしいんだけど。まあ、僕も心配ではあるからいいんだけど。


でもほんと何を話そう?


完璧に心を折りに行くのもいいけど、それで自殺でもされたら困るし。かと言って適当なことを言って慰めるのも後々困るだろうし。


まあ、出たとこ勝負でいいかな。でも自分の首を絞めるようなことを言ったらいけないから、そこだけ気をつけないとな。


そんな風に考えながら、リリーのいる部屋に向かっていた。


「あ、そう言えばリリーってどこにいるんだ?」


そういえば、そんなこと気にしてなかったため、リリーがどこにいるかわからなかった。だからロゼさんを見つけて聞いてみた。


するとさっきみたいに冷たくはなかったし、優しくなっていた。


でもそれが逆に怖かった。何も無ければいいんだけど。ちゃんとリリーの部屋は聞けたのでよかったけど。


リリーのいる部屋に行くまでずっと何を言うか悩んでいたけど、結局いいアイデアは出なかった。


やっぱり出たとこ勝負になってしまった。


とりあえずリリーの部屋の前まできたら、部屋の前にアイリがいた。


「アイリ、何やってんだ?」


「何ってリリーナに声をかけてるの」


「そうなのか」


「それでお兄ちゃんは何しに来たのよ」


「リリーに言うことをいいに来ただけだよ」


「もしかしてお兄ちゃん、トドメを刺す気?」


「いや、そんなことはしないよ。ただ、自分の気持ちでも伝えようかなって」


「そうなんだ。でも、やらせないよ?」


「なんでそうなるんだよ!ここは兄ちゃんに任せるところだろ!」


「私より生きていない子どもに任せられないからね!」


「子どもって、一応お前の兄なんだからな!」


「でも、精神年齢は私の方が上だし、人生経験も私の方が上だよ!だからお兄ちゃんだと不安なのよ」


ほんと酷い言われようだ。でも口論をしてても仕方ないので僕はドアを叩いてみることにした。


コンコン。


「ちょっとお兄ちゃん!何やってるの?!」


「何ってノックだけど?」


「そんなこと見ればわかるよ!」


ノックをしたが返事はなかった。ので妹を無視して声をかけてみることにした。


「リリーいるか?シンだよー」


「ちょっとお兄ちゃん!ほんと何してるの?!」


「だっていつまでこんなことしてたら、進まないと思ったから、お前のことは無視していこうと思って」


「ひどい」


そんなことを言いつつも、アイリもそこから離れなかった。


外がこんなにうるさいとやっぱりリリーも無視できないわけで。


「何?」


そんな風に聞いてきた。


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