第35話 おかしい

「え?ああ、うん。問題ないよ」


「その反応は問題があるようにしか聞こえないよ?とりあえず帰った方がよくないか?」


「シン君は私と離れて平気なの?」


「そんなことよりも僕らが誘拐犯みたいになる方が嫌だよ」


「うん、そうだね。なら、一旦帰るね」


「一旦っていうことはまた来るのか?」


「うん、来るよ。だって今日から私ここで暮らすから」


「え?そんなこといつ決まったの?」


「え?シン君と会ったときだけど?」


「なんでそんな早くから」


「だって10年も会えなかったんだから、これからずっと一緒がいいから」


「わかったよ。でもちゃんと許可は取れよ」


「わかったよ」


そう言ってルナは立ち上がりドアに向かって歩いて行った。


「おい、ちょっと待て」


「ん?どうかしたの?」


「どうかしたの、じゃねぇよ!なんで僕の枕を持って行こうとするんだよ!」


「え?だってシン君の匂いを嗅いでいると落ち着くから」


「そんなこと関係ない。置いていきなさい」


「わかったよ」


そう言って素直に置いた。僕はそれが怪しいと思った。


「ルナ?」


「ん?なぁに?」


「他に持って行こうとしてないよな?」


「そ、そんなわけないでしょ?」


「そんな上ずってするようじゃ隠しきれないぞ?」


「別にいいでしょ!好きな人の匂いを嗅ぎたいと思っても!」


「いやいや!おかしいだろ!まあ確かにそんなことする奴いるけども」


「でしょ!いるなら私がしていても問題ないじゃん!」


「いや、やられる僕の身にもなってよ!」


「なら、わ、私の下着をあげるから」


「いや、確かにそれはそれでいいかもしれないけど」


「う、シン君がそう言うなら仕方ない。それに私もシン君の物もらっているわけだし。不公平だよね」


そんな葛藤をした後、おもむろに下着に手をかけた。


「ちょっと、待ったぁぁぁ!」


「ん?何?」


「なんで下着に手をかけているのかな?」


「そ、そんなこと言わせないでよ」


「いやいや!だからおかしいから!」


「もしかしてシン君私の下着いらないの?」


「いやそう言うわけじゃないけど」


「なら、いいじゃない」


「だからおかしいって」


「もしかして、私のこと嫌い?」


「そんなわけないだろ!」


「なら問題ないでしょ」


僕達はそんなやり取りをしばらくの間続けていた。


ただ、下着は結局貰わなかった。貰っていたら僕はダメになっていたかもしれないし。でもちょっと残念ではある。


下着もよくある異世界の色気のない物じゃなくて、現代の下着だったし。


たぶん、これまでに来た異世界人が広めたんだと思う。


言い争いが終わった後、ルナは家に一旦帰って行った。そのとき結局僕の私物は持って行かれてしまった。

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