第20話 準備 3

ようやくしたいことができる。一通りのことはしたから、あとは売る物の準備をしないとな。


これは僕の借金をなくせるかにどうかがかかっているんだからな。


とりあえずは、仕切りの方でリンスでも取り出してみますか。今まで作ったのを見たことなかったし、この機会にでも見てみたいし。


仕切られているところに行き、ストレージの中に保存してある、リンスをいくつか取り出してみた。


ん?なんでこんなにいろんなメーカーがあるんだ?


『特に指定がなかったのでその時の1番人気なものを作りましたから』


え?つまり、全部種類が違うの?


『いえ、まとめて作ったものは一緒ですよ』


まとめて作ってないのは違うってことじゃないか!?


『そう言うことになりますね』


なりますね、じゃねぇよ!なんで統一しなかったんだよ!


『だって、効果の高い方がいいじゃないですか』


うっ、そうだけど。


『それにご主人様だって何も指示しなかったじゃないですか』


うっ、何も言い返せない。どうするんだよこれ、ばらばらだとまともに売れないぞ。


『それなら、新しくスキルを覚えるのはどうですか?』


確かにすぐ覚えられるけど、何を覚えればいいんだ?


『増える感じのスキルでいいのではないですか?』


まあ、無難にそうだよな。なら、スキル取得基準低下をオンにしてくれ。


『分かりました』


とりあえず1番効果の薄いやつはわからないから、適当に選べばいいか。手元にあったのを選び、ただひたすらに増えろと念じていた。


増えろ、増えろ、増えろ、増えろ、増えろ……


そしたら、PONという音と共にものすごい量のリンスが溢れ出した。


「え?ちょっ、待て!ストップ、ストップ!」


そう、必死に止めようとするが止まらず、部屋にいっぱいになるまで止まらなかった。


止まったのはいいけど、どうするのこれ?


身動き1つまともにとることができなかった。


でも、ストレージにしまうしかないんだよな。とりあえず、ユキ、スキル取得基準低下をオフにしておいて。


『わかりました』


そして結構な勢いでしまっていき、だいぶ減ってきた時、廊下の方から走ってくる音が聞こえた。


「やばっ、早くしまわないと!」


しかし、間に合わなかった。


コンコン。


「はい、なんでしょうか?」


「ロゼですが、今こちらの方から何かが爆発するような音がしたのですが大丈夫ですか?」


「はい、こちらは何も問題はありません」


そんなことを言いながらもリンスを、ストレージにしまっていた。


「それなら、確認のため入っても──」


「ダメ!」


「何故でしょうか?何も問題はないのでしょう?」


やばい、完璧に怪しんでいるのですけど。なんとかしないと。


「い、今着替えている途中だから」


「そんな、着替えなら私に頼めばすぐやったのに」


そしてそのまま開けてきた。


しまったぁぁぁ!相手はメイドだったよ!もっと相手を考えろよ!


「あれ?着替えは?」


「す、すぐに済ませましたよ。まったく勝手に入らないでくださいよ」


なんとか間に合ったぁ。


「それはこちらのセリフです。私の仕事を取らないでください」


「無茶言わないでくださいよ。着替えくらい自分でできますから」


「じゃあ、リリーナに頼みます」


「なんでそこでリリーが出てくるんですか!」


「いえ、リリーナにはやらせていたとのことですので」


「それは、無理やりやられてたんですよ。元々親が異世界人で、すべて自分でするように仕込まれましたから。逆にやってもらうのは、……嫌なんですよ」


「はあ、わかりました。次からはリリーナに頼みますね」


「何もわかってないじゃないですか!」


「それでは、失礼しました」


そのまま、帰って行ってしまった。何も解決してないのに。はあ。

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