第2話 占い

「お客さん、悪いことは言わない。今日はおとなしく家にいたほうが身のためですよ」


 よく当たると評判の占い師が俺に言った。


「え? 俺が聞きたいのは結婚運なんだけど……」


「そんなこと言ってる場合じゃないですよ。あなた、死相が出てます。命が惜しかったら、すぐ帰りなさい。それと十字に気をつけろと占いに出ています」


 占い師に身の安全をしつこく注意されるた挙句、店から追い出された俺は不満げにつぶやいた。


「俺が死ぬって? そんな馬鹿な」


 俺の右手の生命線は太くて長い。

 だから、今まで手相をみてもらうと、必ず長寿になりますと言われた。

 長生きできれば良いと言うわけではないが、早死にするとは言われたのは今日が初めてだ。


 本当に当たる占い師なのだろうか。



 俺は占い師の忠告を聞かず、夜まで飲み会で過ごした。

 その帰り道、ふと時計を見るともうすぐ日付が変るところだ。


「なんだ、結局何もなかったじゃないか」


 苦笑いしながら歩いていくと十字路に差し掛かった。

 俺は占いの内容を思い出し、「まさかね……」と考えながらも、そのまま進む。


 その時だ。


 居眠り運転の車が突っ込んできたのは……。




 薄れゆく意識の中で最後に見えたのは俺の右手だった。


 ざっくりと切れた切り傷が俺の生命線を十字に分断していた。

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