番外編 春の火事とイサムの恋

「まずは自己紹介だな、私の名前はロロルーシェ・ノーツ。この世界の魔素を研究している」


 銀色の髪に銀色の目で雪の様に白い肌と豊満な体に、絶世の美女と呼ばれても誰も文句は言わ無いだろう。イサムも、こんな状況でなければ緊張して話す事すら出来無いだろう。

魔素と言うのは、魔法の事だろうと解釈して自分の名前を言う。


「カブラギ イサムです」


 一応年上だと思うので、敬語を使う。


「はっはっは、敬語なんて止めてくれ、私の事はロロルーシェと呼んでくれて構わない」


 顔を左右に振り、ロロルーシェは答える。


「分かったロロルーシェ、俺もイサムで構わない」


 無理矢理召喚されたとは言え、振る舞いまで悪ぶりたくはないし、死な無い程度の対応をして貰っているので、元の世界の友人に話す様な感覚でイサムも話す。

 次に口を開いたのは、金髪と銀髪の女性。女性といっても年下だろう、身長はわりとひくいが銀髪の方が発育が良さそうに感じる。金髪はボーイッシュな感じで発育は、まぁ元々は一人だったし銀髪に色々な部分を取られた感が否めない。どちらも髪色と同じ目の色だとすぐにわかる。


「私はリリルカ・ノーツよ」

「私もリリルカ・ノーツです…」


 金髪リリルカの後に続いて銀髪リリルカも自己紹介するが、性格が若干違う様だ。金髪が勝気な感じで、銀髪が少し引っ込み思案だろう。二人とも魔導士と呼ばれそうな、こげ茶色大きなフード付きのローブを着ている。

 しかし、同じ名前だと呼びにくい。


「とりあえず同じ名前だと呼びにくいから、君がリリで君をルカって呼んで良いかな?」


 イサムは銀髪を指差しながら【リリ】と金髪を指差しながら【ルカ】と呼んだ。一瞬、少しムッとした表情を二人が見せた。


「それは名案だな」


 だが、ロロルーシェがそう言ってくれたおかげで、二人とも揉めずに一応納得してくれた様だ。


「ふんっ上半身と下半身で十分だわ」


 いきなり横槍を入れてきたエリュオンに、ルカは席を立つ。


「大体あんたが斬ったんでしょう!」


 ルカが勢いよくエリュオンを指差しながら、すぐに拳を握る。まるで格闘家の様なポーズだ。負けじとエリュオンも立ち上がり、空間から大剣の柄だけ出しそれを握ると臨戦態勢に移る。


「あんたじゃないわ! 私はエリュオンよ!」


 逆にリリは、ルカの隣に座ったまま、まぁまぁと両手を前後させながらルカを落ち着かせている。


「エリュオンそれは言い過ぎじゃ無いか?」


 コアを蘇生した後からまったく殺意が全くなくなったエリュオンに、イサムは声をかける。


「イサムが言うなら…謝る……悪かったわね…」


 口を尖らせ、何故か少しもじもじしているエリュオン。雰囲気変わり過ぎだろうと周囲は思うが、誰も突っ込みは入れない。エリュオンの変わり様を見て、ロロルーシェは口を開く。


「やはり闇の魔物は蘇生を使い浄化する事で、大人しく出来る私の仮説は正しかったな」


 少し嬉しそうにロロルーシェはウンウンと頷く。


「詳しく教えて欲しい、何故俺がこの世界に呼ばれたのか」


イサムは真剣な表情でロロルーシェに話しかけた。

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