crimson rose

葉月ありす

第1話 漆黒の翼

漆黒の闇の中、星と月明かりだけが辺りを照らす。

辺り一面がまるで黒いシーツを敷き伸ばしたかのように暗い。

天空までそびえ立つ木々は、昼間ですら太陽の光を遮り、その為この森は暗闇の森と呼ばれている。

風が吹くたびに木々がサワサワと音をたてる。

一歩間違えれば、永遠に迷い続けるような森の中、彼はひたすら走っていた。


白い肌に一際目立つ紅い瞳、女と見間違える程の美しい顔立ちに、肩まで伸ばした銀髪。

背中には漆黒の翼が生えている。

ルシファー=クリムローズ

彼は追っ手からひたすら逃げていた。


「しつこいなー。」

呟きながらもペースを落とすことなく走る。

すると、後ろが僅かに光るのを感じた。

「しまった!!」

気づいた時には遅く、相手から放たれた光球をまともに喰らいその場に倒れる。

ルシファーが動かなくなったことを確認し、追っ手は去って行った。


「るんるんるんー!今日も沢山良いもの採れたなー。薬草も毒キノコも一杯だわー。」

ピンクの派手なロリータ服を着た少女が、暗闇の森を歩いてきた。

どうやら、エルフのようだ。

トップにピンク色のリボンの付いた、金髪ロングのツインテールがゆらゆら揺れる。

そしてクリクリの蒼い瞳が周りを見回す。

「ん?誰か倒れてる?」

少女が、森の奥を目を凝らし見ると、黒い翼の少年が倒れている。

「・・・黒い翼?高位魔族?」

恐る恐る近付き、手当てが必要な事に気づき、傍らに居た子供のウルフがキュルキュルと、鳴く。

「彼を家まで運ぶのを、手伝ってね。グリム。」

グリムと呼ばれたウルフに少年を、乗せて少女は、森を進んで行った。


「んー。っイタタっ。」

ルシファーは、目を覚ますと身体中が痛む気がした。しかも見回すと知らない家に居た。

「あっ!やっと気がついた?」

声のする方に目を向けるとピンク色のロリータ服の少女が居た。

「・・・・エルフの女の子?」

ツインテールを揺らしながら近づく女の子に、そう問うルシファー。

「そうよ!私はリリアナ=セルフィア。調合師と水使いのエルフよ。」

まじまじと、リリアナを見つめるルシファー。

「魔族で有ることを知っていながら、ボクを助けたのかい?」

そう、問われキョトンとする、リリアナ。

「魔族とか、その前にあなたあのままじゃあ死にそうだったし、助けるのは当たり前よー!」

そう言われ、少し驚くルシファー。

「そうか、ありがとう。ボクは、ルシファー=クリムローズ。なかなか、リリアナは勇気があるね。」

「へっ?なんで?」

ビックリして問うリリアナ。

「ボクが目を覚ましたら、殺されるとか、考えなかったの?」

さらに驚くリリアナ。

「えっ?なんでそうなるの?」

「普通、魔族は自分達以外の種族をけぎらいしている。と、言うよりは敵対してるかな。だから、魔族以外は敵だと思っている。」

ニコニコと、笑いながら、リリアナは話しはじめる。

「ええ、でも、貴方はそうしなかったわ!

私は貴方は悪い人ではないと感じたのよ!」

「そうだね。君の勘は凄いな。でも助けてくれてありがとう。」

キュルーとグリムが鳴く。

「ん?このウルフは君が飼ってるの?」

「やだぁ、飼ってるなんて。友達よ。」

ウルフも元はと言えばモンスターで、魔に属しているはず。エルフになついているのも珍しい。

「君ならボクの話、信じてくれるね。 協力してくれないか?」

「えっ、何を?」

そして、ゆっくりと、ルシファーは、語り始めたのだった。







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