第19話 とうとう天使来ちゃいました。

 目の前に天使がいます。

 ここに来たとき、天使はハナをほじってました。天使なのに、そんなんでいいの?

 ほじり終えた天使は背中を掻いてます。だけどギリギリ届かないところのようで四苦八苦してました。


「てつだう?」


 天使がぎろっと睨みます。だって見てられないじゃん。こっちまで痒くなってくるよ。


「うむ、頼む。」


 私は天使の後に回りこみました。

 ハチベエが【今だやれ!】って感じでゼスチャーしてます。わかってるよ。


「ここ?」


 天使がまた睨んできました。


「ほう、一撃で命中か。サスガはハチベエが目をかけているだけのことはあるな。」


 だてに『運』限界突破してません。もっとほめて。

 ハチベエがっかりしてました。私うまくやったよ。1回で痒いとこ当てたよ。

 ハチベエもついでにほめられたんだよ。


「ハチベエ、久しぶりよのう。今度は黒猫の姿か。この前はうっかりなオッサンだったな。」


 ハチベエ、ブルブル震えてます。


「もう充分生きたであろう。この世に未練はあるまい。では消えてもらうとしよう。」


 私はハチベエの前に立ちはだかりました。


「だめ。」

「お主ごときに何ができよう。ならば共に消えるがよい。」


 天使の頭の上の輪が光りました。

 翳した手から光がもれます。その光が私たちに襲ってきました。


「なんだ今のは。お主、何をした!」


 何も起こりませんでした。かわりに私の手にはイチゴのショートケーキがのってます。なんで?


【カンナ、カンナの傷が治ってる。】


 ホントだ。痛くない。どうして?


「女、今何をしている。なぜ貴様に『運』が集まってきてるのだ。」

【そうか、カンナの『運』が世界に散らばっている『運』を偶然集めているのか。傷が治ったのも何千何億分の一の偶然。天使の光をケーキに変えたのも偶然。カンナ、ステータスを見てごらん。『運』どうなってる?】


 ハチベエの言われたとおりステータスを開きました。


「いち、じゅう、ひゃく、せん………。8兆こえてる。まだ増えてる。」

【カンナ、これなら『天使』を倒せるかもしれないよ。】


 天使は驚いてました。

 そしてぎりぎり歯ぎしりをはじめました。相変わらず下品な天使だな。


「この宇宙全体の『総運量』を超えているではないか。お主何者だ!」

「カンナ。」

「名前を聞いているのではない。お主は人の身で、なぜこれほどの力を手に入れることが出来たのだ。」

「『恩恵』のおかげ。ハチベエのおかげ。アヤのおかげ。」

「何を訳が分からないことを!」


 天使の手がまた光りました。またアレするつもり?


「おのれ、おのれ、おのれ、おのれ!」


 いくら天使だってそのセリフ、なんかマズイよね…。そんな気がしました。

 オラオラも、ヒンジャクヒンジャクも、古いところでアタタタタもマズイから気をつけてね。


 光が次々と襲ってきました。それは全部アメとかクッキーとかワタアメに変わってゆきます。


【カンナ、いいかい?】


 ハチベエが私の肩に乗ってきました。


「なに?」

【甘いものばかりだと栄養が偏っちゃうよ。野菜も食べなきゃだめだよ。】


 いいじゃん、甘いもの。


【そんな食生活送ってたら糖尿病になるんだよ。】

「糖尿病になったらどうなるの。」

【おしっこにアリンコが寄ってくるんだ。トイレがアリンコだらけになっちゃうよ。】


 え〜、お野菜やだな。でも仕方ありません。


「えいっ。」


 天使の光をセロリに変えようとしました。……失敗しました。


「いたた。死ぬとこだったよ。」

【なんてワガママな偶然なんだ…。】


 天使は後ずさりしました。


「たかだか転移者の分際で…。仕方がない、この世界もろとも滅びてしまえ!」


 天使は両手をバンザイするように上げました。なにするの?


「月を落としてやる。覚悟するんだな。ぐへへへへへ。」


 笑いかた、何かアレです。あの人、本当に天使?

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