第2話 パーティーを組んじゃいました。
「それでは1ページ目を開くのじゃ。」
大魔導師のナントカ・フォン・ナントケなんとか伯さんが皆んなに指示しました。もうややこしい名前だな。おじいちゃん先生でいいかな。
「じゃあ一番端の君、読んでくれんかのお。」
おじいちゃん先生、俄然先生らしくなってきました。私は言うとおりにパンフレットに目をやります。そこにはミミズの這いずりまわったような模様が描かれているだけでした。
「スワヒリ語はまだ習っていません!」
「………。」
一番端の君、通称ハジ君。今のソレ、この後に及んでやらかしたってもんじゃないからね。気をつけてね。
「済まぬ。そうじゃったわい。お主らは文字が読めなんだ。どれワシが読んでしんぜようぞ。」
おじいちゃん先生もスルーでした。世の中優しくなんか無いからね、ハジ君。
おじいちゃん先生は老いたお坊さんの読経のようにタンを絡めながらたどたどしく読んでいきました。おかげで理解に苦しみました。
掻い摘んで、噛み砕いて、間を埋めて何とか理解したことは、金はやる、モンスターが出るけど自由にしてね。そんな感じでした。
勝手に呼びつけておいて自由にしてはないんじゃないかな? でもお金はちょうだいね。
最後におじいちゃん先生は両手を広げ天を仰ぎ、妙に鼻につくような芝居がかった仕草をして言いました。
「お主らは今から冒険者じゃ! お主らを縛るカセは何もない。さあ行け諸君よ。未来の扉は開かれた!」
全く心に響いてきませんでした…。このセリフ毎回言ってるんだろうな。こなれ感だけがビンビン心に響きました。
「11人か。なら5人と6人のパーティを組むことを勧める。」
今度は兵士風の男の人が声をかけてきました。と言うか12人だよ。この人、数もまともに数えられない脳筋さんかな?かな?
でも全員何の疑いもなくその声に従ってワラワラと2組のパーティに別れました。いいえ違います。厳密には3組でした。5人組、6人組、1人組。
そう、1人組が何を隠そうこの私…。何も隠してないけど。むしろアピールしてるほうだけど。
いきなりハードモードの展開に思わず涙が出そうになりました。
その時6人組から1人抜けてトコトコ走ってこっちへ来る女の子がいました。
「あのさ、独り?」
「うん…そ、みたい。」
さっきの茶髪のお姉さんでした。いい人。やさしい。
「ならウチと組もうか?」
前言大撤回させていただきます。
一人称が『ウチ』の女にロクな女がいるわけがありません。間違えなく性格最悪・腹黒ビッチです。優しさの欠片もない上にエアーすらもリード出来ないメスブタです。
このメスブタ、私と組んで何を企んでいるのでしょう。まさか…身ぐるみ剥ぐつもりじゃ…。それともホンコンあたりに売り飛ばす気?
ここは冷静になって先のことを考えなければなりません。
「うん、いいよ。」
寂しさに負けました。いいえ世間に大敗北を喫しちゃいました。
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