未来からの警告:骨髄病を克服せよ
時織拓未
1. プロローグ【2133年】
壮年の男は、執事アンドロイドの先導で、屋敷の居間からバーチャル・ルームに移動した。黒髪の合間には白髪が混じり込み、目尻には多少の皺が浮かんでいるものの、男の精悍な目付きや肌の艶なり張りは若々しい気力を感じさせる。
バーチャル・ルームは円柱形の空間となっており、その半径は5mほど。屋敷の広さと比べると小さな空間だが、この時代のライフスタイルに合わせて屋敷の中央に位置していた。
その部屋の壁は黒で統一され、家具などの装飾品は一切無い。
部屋の中央より入口寄りに、1脚のリクライニングチェアだけがポツンと設置されていた。リクライニングチェアを表装している絹地には緻密な刺繍が施されているが、流線型の椅子の形状を皺も無く覆っている処を見ると人工繊維だと思われる。
壮年の男が背中から倒れるようにして、リクライニングチェアの窪みに身体を沈める。
前後する軽い揺れを合図に部屋全体の照明が自動的に落ち、替わりに男の眼前には薄暗い一条のスポットライトが天井から照射される。スポットライトの中には1人の軍服姿の男の立体映像が結び浮かんだ。
「大統領、地球連邦軍司令長官のゲトリングです。実行準備が整いましたので、本作戦の最終実行命令を頂きに参上致しました」
軍服姿の男の横に、作戦概要を記した紙面の映像がまるで銀幕の様に浮き上がる。
「構わんよ。或る意味、神の御技に逆らう所業ではあるが、私は地球市民に選ばれた大統領でもある。この世界の地球市民の未来を切り拓く責任があるのだ。
仮に神の怒りに触れるとしても、死後に許しを乞う事にしよう」
軍服姿の男に注がれた視線は
「システムネット。私、地球連邦大統領エドモンド・レイは作戦計画を承認する。
私の発言を公式に記録してくれたまえ」
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