第12話 碧海からの手紙

碧海が亡くなって1か月後

会社に和宛の小包と手紙が碧海から届いた。

【桜井さんへ

退職おめでとうございます。退職の日にはプレゼントと、最後に私の気持ちにしたためた手紙を送ろうと心に決めていました。

和さん、不倫に自分の気持ちを伝えるのは厳禁、と心に決めていたので今まで伝えずに来ましたけど、もう解禁にしていいですか?・・・。(って時々ちょいちょい言ってしまっていたけど・・。)

私は心から、和さんのこと愛していました。

1年前、和さんと一つになったとき、心臓が飛び出そうなくらいドキドキし、私もまだまだ女なんだと感じることができました。和さんと過ごした日々は、私の生活感満載の日常から、私の女心を取り戻させてくれました。家では颯の妻、翔と翠の母、会社ではいつも仕事に厳しいおばさん。そんな私のとがったナイフのような心から、身ぐるみはがして優しい気持ちにしてくれたのが和さんでした。和さんの言葉一つで和やかな気持ちでいられました。今日まで本当にありがとうございました。和さんのことは全部わかっているつもりです。和さんの希望通り、私の代わりに娘さんを会社に入れてあげてくださいね。

これからは、奥様と穏やかな日々をお過ごしください。

本日をもって、私、結城碧海は、桜井和を卒業します。

平成29年3月31日】


和の目から一筋の涙がこぼれ落ちた。碧海は全部お見通しだったんだな。でもな碧海一つだけ違うことがある。娘は俺の本当の娘じゃないんだよ。女房の連れ子なんだ。だからこそお前の旦那にも子供達を分け隔てなく育てろよって言ったんだ。お前のためにもな。もし娘が実の俺の娘だったら、娘と同い年の碧海に本気で惚れることはなかったかもしれないな。

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