【幕間】孤独な少女

わたしと物理学者 K


 エルヴィーン・ルードルフ・ヨーゼフ・アレクサンダー・シュレーディンガー。

 物理学者である彼は量子力学の欠陥を見つけ、それを証明するためのある思考実験を思いついた。いわゆる反証というもの。

 だが、生物の死すら超越し、この世のことわりすら反するそのパラドックスは、逆にその理論を確立の方向へと導いてしまう。


 わたしはこの話を聞いたとき、彼の失意の表情を想像してしまった。

 信じていたセカイが自分の手を離れてしまった時、彼はどんな顔をしていたのだろうかと。


 彼はそのセカイを許容できたのだろうか? 


 彼はまだセカイに意味を見いだせたのだろうか?


 わたしは彼ではないので、その答えはわからない。 


 でも、セカイが受け入れられないのであれば、わたしは絶望してしまう。


 拒絶してしまう。


 だからこそ、わたしはそのセカイの破壊を願ってしまうのだろう。

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