Battle Capacity

神崎 陽千

CAPA.0 悪魔は降り注ぐ


 夜空に浮かぶ星がキレイだっていうことは、幼心ながらに理解していたと思う。飽きるまで夜空を見上げては、歓声をあげたこともあった、と。

 でも。それも星たちがあの日あの時、『悪魔』に変わるまでの話―――。



 衝撃と爆風と爆音以外、なにも聞こえないなにも見えない。


 なにが起こったのかさえ分からなくて、ただ、こわくてこわくて・・・・・。そばにいたはずの兄を探した。体はどこかにぶつけたのか息をするのもやっとで、目だけがなんとか動いた。

 立ち込める煙と、なにかが焼けるようなイヤな匂い。視界はほぼゼロに近くて、訳が分からないその状況に、ただただ怯えた。

 口の中で、ジャリっと音がして土らしきものがあるのが分かる。


「・・・・・ぁ、うっ・・・・・」


 やっと出た声は、自分の声だとはとうてい思えないほど掠れていた。


「にぃー・・・ちゃ・・・・・」


 震える声で兄を呼ぶ。いつもの笑顔がないか必死で探す。兄はまた自分を置いていったんだろうか。ああ、はやく帰らないとまたお母さんに怒られちゃう―――。

 震える手を、必死に伸ばすけれど空を切るばかりで、恐怖だけが募った。どこかで木が爆ぜるような音が聞こえる。

 それ以外は誰の声も聞こえない・・・。


 その日、いくつもの星が世界に降り注いだ。

 それは人々が想像するようなキレイなものではまったくなく、その日、地上は地獄絵図そのものになった。



 どこの人間が言い出したのか、50年経ったいまでは『星変革せいへんかく』という、おキレイな言葉で浸透している。

 さらにはその落ちた星―――隕石から特異な光線がでており、それにあてられた一部の人たちは、いつのまにか特殊な力を手にしていた。それを、望む望まないに関係なく。


―――星が降り注いだあの日。人間の新たな変革の、ほんの一歩目だったのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る