探偵もどき

@oyumaru

第1話  たんていもどき?

スーパー探偵高木事務所



この町にポツンとある変な名前の探偵事務所でもありアパートでもあるこの建物の大家である高木優奈は今日も暇そうに高級なオフィスチェアーでくつろぎながらジッと入り口を見ながら依頼主が来ないかと待っていた。




「あーーーーもーー!誰も来かも!暇!だーーれーーか相談とか来てくれないかなー‥」





大声で叫んでみても誰も来る様子はなく肩を下ろししょんぼりとした姿勢で町に散歩しにいく準備をしようと鍵を手に取った瞬間事務所のドアノブが動き誰かが入ってきた。



ガチャ、




「んはぁぁ!よ、ようこそスーパー探偵高木事務所かも! って‥ なんだ麻帆ちゃんか」




事務所に入ってきたのは隣の一軒家に住んでる篠崎麻帆だった。



「何よ、「なんだ」って。朝から隣の大家さんが発狂してればそりゃ様子見にくるでしょうが」



発狂した本人はふくれっ面をしていた。



「依頼をしてこないこの町がいけないかも!なのであたしは町のパトロールにいってくるかも!あわよくば依頼を見つけてやるかも‥ ふふ」



そう言った優奈は引き出しからカギと財布を取り出し壁にかけてあったポーチを持って事務所を出る準備をし始めた。


麻帆も特に用があったわけでもなく発狂主の様子見しにきただけだった。



「じゃあ私は学校に行くから!パトロール頑張ってね大家さんw」


「ふんっだ!そう言うだけで全然手伝ってくれないかも。てかあたしの事務所で一緒に探偵やろうよ!ね?」



そう優奈が誘ってみても麻帆の反応は決まって嫌そうな顔をする。



「だって‥‥ この探偵事務所って超暇じゃん」



このセリフで優奈は石のように固まり麻帆は苦笑いしながら学校へ向かった。






「じ、じゃあ学校行くから またね」


麻帆はそう言い学校へ行ってしまった


あっさりとした性格で血は繋がってはないが優奈にとってはお姉さん的存在だ。



また一人ぼっちになった優奈はトボトボと町を探索し商店街のおじちゃんおばちゃんに片っ端から話しかけては世間話をし商店街を出て工場のおじさんたちや教会のおばちゃん、町中を歩き周りいつものように町の人とコミュニケーションをとっていると日が落ちてきて夕方になって来たので商店街をでたすぐそばにあるお弁当屋でお弁当を買って事務所に帰る事にした。





お弁当屋を出て事務所に戻ろうとし歩いていると何処からか叫び声が聞こえた。



「今月の給料まだ入ってないんだよ!払えないんだから仕方ないだろ!このガンコババアが!!」



「なんやてこの小僧が??家賃が払えないならさっさと出ていきな!お前のような小僧にババアと言われる筋合いはないね小僧!小僧!!」




とてつもない会話内容が目の前のアパートの門から聞こえてきた。





(揉め事ならスーパー探偵高木様の出番かも!よーし‥





依頼を探してやっと依頼になりそうな出来事が目の前で起き止まってはいられなかった。


アパートの前で少年とおばさんと犬が吠え続ける光景は恐らくこの町だけだろう。




「はいはいっストーップ??喧嘩はそこまでかも!スーパー探偵高木様が来たからには問題解決かも!で、何の事で言い合ってるんですか?」





いつものように自慢気に名乗り仲裁し始める優奈を少年とおばさんと犬が睨みつける。




ワンッ! ワンッ!



「なんだいあんたは!このアパートの問題なんだから入ってくるんじゃないよ!小娘はあっち行っとき!」



ワンッ!ワンッ!ワンッ!ワンッ!ワンッ!



煙たがるような目で優奈を見つめそう言った。犬はおばさんに対して吠えてる事からこの少年が飼い主なんだろうと優奈は思った。


「ちょ、一回落ち着きましょう。ね?」


ワンッ!ワンッ!ワンッ!ワンッ!


ワンッ!ワンッ!ワンッ!


「さっきからなんだいこの犬は!あっちいけぃ!」




犬に対して当たってはないが蹴りを入れてきたおばさんに怯え犬は何処かへ逃げてしまった。


ワンッ!ワンッ!


「あっ!レクサス! くそっこのハイパーババアめ!こんなアパート出てやる!」




少年は逃げてしまった犬を追ってどこかへ行ってしまった。残ったおばさんと優奈だけになり気まずい空気になっていく。



「どうして犬を蹴ろうとなんてするんですか!可哀想かも!」


するとおばさんは優奈の事を煙たがるような目で見て何も言わずに立ち去っていった。




「ちょっと!   ・・」




無視はないでしょ・・





先ほどの少年の事が気になり犬が逃げた方向へ行ってみたものの少年を見つける事ができず諦めて事務所に帰る事にした。



お弁当も少し冷めてしまい何も出来ずに今日が終わりそうになっていく。


(はぁ‥ 今日は全然依頼になりそうな事ないし喧嘩の仲裁にはなれなかったしいい事ないかも‥




事務所の前で足が止まりため息が出た。鍵を開け中に入りいつも通りココアを作ってオフィスチェアーに座ってくつろぎ始めた。優奈は事務所の上のアパートの大家でもある為生活費などにはあまり困っておらずパソコンの電源をつけては動画サイトばかり見ては爆笑し探偵としての仕事はほとんどしていない。





「あっはっははは! あーおんもしろいかもー!」



そんな動画を見て爆笑してる時だった。






ガチャ‥




事務所のドアが開き誰かが入ってくる。

優奈はまた麻帆が茶化しに来たと思い攻撃態勢に移り台所のオタマを取り出した。



「あのーここたん



「おりゃぁぁぁぁぁ!とうっ??」




ゴンッ!!!!    



何かが大きく響く音が事務所内に響き渡った。


事務所のドアに向かって走り出し入ってきた人物の頭に直撃した。




え・・・・    あれ・・・・麻帆ちゃんじゃない・・・・





「ぐっ‥ い、 いってぇな!何すんだテメェ??」



ドアから入ってきた人物は今日帰りに見たアパートで喧嘩していた少年だった。


それにすぐ気がついた優奈は目が大きく開き顔が真っ青になっていった。



「ヴぇぇっ!ご、ごめんなさい、てっきり麻帆ちゃんだと思って。」




「はぁ?誰だよそれ‥ いきなり調理器具で攻撃してくるとかアンタ頭どうかしてるぞ! てかここ本当に探偵事務所であってるのか? 探偵さんに依頼したいんだけど」





頭をこすりながら優奈に質問した。




焦っていた優奈の表情がニヤリと変わった。



「依頼ですね~!先ほどは失礼しましたここの探偵事務所で探偵をしているスーパー探偵高木です!あ、ちなみに探偵はあたししかいないんで!」



‥は?


少年は思わず は? と口にしてしまった。少年が は?と思ったのも無理はない、高木優奈の見た目は完全に中学生レベルの身長でワークキャップを被っておりダボダボのパーカーを着ている奴がここの探偵事務所の探偵でしかもこの子しかいなと言われた依頼主の気持ちが は? の一言で全て表現されていた。



「ふざけんな!早く本物の探偵を出せよ!お前みたいなガキが探偵な訳あるか!」


プッチーン!!!



「だ、誰がガキだって?あたしはこう見えてももう19歳なの、そのらのお子ちゃまとは違うし。」


見ててムカつくようなドヤ顔で年齢を自慢するも少年の口は開いたまま閉じなかった。



「は?お前が?19歳?あり得ないあり得ないw てかそこまで言うならお前に依頼しよう。さっき俺の相棒がどっかに行っちまったんだ、そいつを探して欲しい。」



少年はテーブルに手をつき真剣な表情になっていった。優奈は依頼が来た事に喜びを感じて満足そうにニヤっとしていた。



「君名前は?」




「高木 流徒だ」





優奈はそれを聞いて驚いていた。


「びっくりした、あたしと苗字が同じなんだね。その相棒さんってさっきのワンちゃんの事?ワンちゃんの名前はレクサスよね。」



「なんで犬だって事とレクサスって名前まで知ってんだよ?」


2人とも驚いた。優奈は自分と同じ苗字だという事に驚き流徒は犬の名前まで知ってる事に驚いていた。


「ま、まぁ探偵だからね!それくらい知ってて当然」


絶対ウソだろ。そう思いつつも黙って聞いていた。




「あんた今日から探偵じゃなくてストーカーって名乗った方がいいぞ、」


「なんですって??あんたじゃなくて優奈よっ!ストーカーなんて人聞きが悪い!たまたま見てただけだし!バカにしないでくれるかなー。流徒くんのワンちゃんもすぐに見つけてあげるからこのあたしに任せなさい!」


ない胸に手を当て自信満々に言うもその見た目からして任せて大丈夫なのだろうかと流徒は心配そうな目で見ていた。


「よしっ!じゃあさっそくワンちゃん探に行くね!そのワンちゃんの細かな特徴とか仕草とか教えてくれる?流徒くんもついてきてくれると助かるんだけどいいかな?」


レクサスの為なら仕方ない‥  レクサスの為、レクサス、、仕方なく我慢して行く事にしよう。


「分かった、ついていくよ」


そういい2人は事務所を出てペット探しを始めた。





2人で街に出て商店街の入り口に立ち優奈は仁王立ちしてとまった。

ポーチからメモ帳とペンを取り出し横からみた顔はもう見てられない程のドヤ顔だった。


「あのー さ、どうやって俺のレクサス探すつもりなんだ?メモ帳とペン持ってこんなところで仁王立ちしてるの見たらみんなあの子は痛い子なんだって思うぞ。」


こっそり話しかけたら満面の笑みでこっちを見てきた。


「任せなさい!地元じゃ超有名スーパー探偵高木優奈!あたしの手にかかれば不可能はない!

よし、まずは聞き込みからだ」


うわぁ‥



思わず流徒は口に出してしまった うわぁ‥ には色々な意味が込められている。

まず商店街の店一個一個聞き込みして回る事とこの頭の痛い見た目中学生と一緒に歩かなければならないと思うとどうしても口から「うわぁ‥」がでてしまうのだ。


「こんばんは!今ちょっといいですか?」


優奈が訪ねた先は商店街入り口から一番目の前にある魚屋さんの店主だった。


「おぉ優奈ちゃんか!なんだい、依頼さんでも現れたんかい?」


「さすがおじちゃん!勘が鋭いね!それで一つお尋ねしたいんだけどベージュ色のダックスフンドのワンちゃんを探してるんだけど見てないですよね?」


ペンとメモ帳をスタンバイさせたが決まって出てくる言葉は「いや?見てないね」ばかりだった。

隣の八百屋さんもその向かい側の肉屋さんも全く同じ返事だった。



「なかなか有力な情報が出てこないなー」


優奈はペンの裏側を唇に当て難しそうな顔をしだした。


商店街のほとんどを回ってみたがレクサスを見たという人はいなかったが諦める様子はなく頑固に探しまわった。


お互いに疲れも溜まってきた頃に突然優奈が下に落ちてた大きめな木の枝を拾った



「おいちょっと待てお前それで何するつもりだ‥?



(失敗した‥こいつ絶対頭おかしい、絶対ヤバイやつだ



「何かって?ぅぇへへ、まぁまぁ見ててよ。


そう言って枝を地面に軽くさし倒れないようにした




(え、嘘だろ?現代にまだこういう事する人いるの?嘘だろ‥ もう早く切り上げて警察に捜索依頼だした方が早い‥



「な、なぁ‥探偵さん、あの、レクサスは自分で探すからもう大丈夫だ。な?



「しっ!‥静かに




膝をついてしゃがみ込む優奈は目を瞑りだした




(‥もう嫌だ、帰りたい



大きな風が吹くと枝が倒れた



パタッ




「んっ!!そっちか!


!!!!!????


(枝が倒れた方向に行くんすか?マジですか?探偵なんですか本当に?え?




「さぁ流徒くんもいくかも!ついてきて!



2人は商店街を出て街の賑わいの少ない住宅街にはいりさらに進んだ







これいつまで続くんだ‥



「なぁ、もういいんだ。あとは警察に頼むからさ



「なっ!警察?ダメダメノーノー!あんな連中に頼んでも絶対まともに探してくれないかも!でもあたしは違う!

見なさいこの真剣な表情を!



「自分で言うなや、行動が真面目じゃねぇよ



「とにかく!ちゃんとレクサスは見つけ出すから安心してかも!





「なんか、探偵って聞いてお前の事務所行ってお前が探偵って聞いて心配だったけど結構粘り強いんだな。てっきり諦めるのかと思ってた。」


そう彼はボソッと言った。

疲れているはずの優奈は笑いながら振り向いた。




「言ったでしょ、あたしはスーパー探偵高木優奈だって」



振り向き様にそう言いながらポーズしてきた。

全く笑顔を見せなかった流徒が初めて笑ったところを見た優奈は少し安心そうな顔をした。


住宅街のさらに奥に行くと廃墟と化したマンション跡地があった


「よし‥ ここだけど怖いね



「ここにいるのか?


「あたしのレーダーによるとここにいる


「信じたくないんですがいいですか?



「な!なんでかも!あたしの目に狂いはないかも!

仕方ないなー、新しい秘密兵器を見せようじゃないか。



「は?秘密兵器?


「じゃじゃじゃ じゃ~ん



(ベートーベンのなんか出すとかだけはやめて下さい‥ もうついていけない


「これかも!



優奈は首に飾ってた十字架を首から外し手に取った



「なんで十字架?お前キリスト教徒なの?



「‥キリスト教徒? ってなに?



(この人ダメだ‥



「いや、大丈夫ですなんでもないです早く終わらせて下さい



「うむ、ならば始めるかも‥



優奈は十字架ネックレスを指に巻きつけぷらんぷらんさせた。



「もうここにはいない!あっちだ!


「はい



段々と面倒くさくなりリアクションに潤いが消えてきた


もうこの子にはついていけない及び任せられない。



「あのスーパー探偵さん、もう外も暗いし俺らそろそろ帰ろうと思うんだ。

(帰り道に交番によって依頼しよう、うんそうしよう。



「感じる!こっちかも!さぁついてきて!レクサスが見える!


「見えねぇよ



2人は廃墟からまた住宅街に入り商店街を通り過ぎ別の住宅街へと入った


もちろん住民からの目線が痛すぎて辛いなんてもんじゃなかった



くそっ、レクサスの気配が‥でも今日はもう暗いしあとはあたしが探すから一回事務所に戻ろう!


優奈がそう提案すると流徒嫌そうな顔をした。


「事務所に戻って作戦を練りましょう!


(今更練ってどうすんだ‥



商店街を出て事務所に戻ろうと歩いている内に辺りはどんどん暗くなり夜になっていった。


お互いに無言で歩いていて自然と気まずい空気になってくるのも無理はない、なんせ流徒は今日会ったばかりの人とそう簡単に仲良く出来るタイプではなかった。




そんな中  優奈が口を開いた。



「そういえば、どうしてアパート追い出されたの?」


優奈がそう質問すると気まずそうによそ見しはじめる流徒。

あんまり聞かれたくない話しだったんだろう、顔をみてすぐそう思った。


「ご、ごめんね?聞かれちゃ嫌な事だったよね‥ 事務所もうすぐそこだから」


想像してたよりずっと無口で愛想のない流徒に優奈は少し困惑していた。

商店街で聞き込みをしていた時もあまり口を開く様子ではなかったしレクサスがいなくなったせいで元気がないだけかと思っていたがそういった感じではなさそうだった。


探偵事務所の前について優奈が立ち止まった。


「コーヒーくらい飲んでいく?あともう少しレクサスの聞かせて欲しいし」


「あいや、大丈夫だから。レクサスはじぶ‥‥‥ ん?



流徒の目線が優奈から別の物に変わったのが分かる



「ん?どうかしたの?


気になり優奈が後ろを振り向くと事務所があり電気がついていた



「なぁ、俺らが事務所出た時電気消して出たよな?俺記憶にあるんだけど



「‥ほ、ほぇ、


これはまさ‥か‥



ヤバイかも‥ヤバイかもヤバイヤバイ



焦り出す優奈は猛ダッシュで事務所へと走った


すかさず気になり流徒もついて行った


優奈がドアノブに手を当てるとドアが開いていた


「り、流徒くん‥ 悪者が現れたときは‥よろしくかも!?


「いいから早く開けろよ、誰かいたらすぐ警察に



入ってみると事務所は綺麗なままで荒らされてる様子はなかった。


「え、空き巣?強盗?不法進入?麻帆ちゃん? あ‥ 、」


ドアを開けたその先に篠崎麻帆がオフィスチェアに犬を抱えて座っていた。



「ちょっと、なんで私が空き巣、強盗、不法進入と同じ扱いなのかあとでゆっくり聞かせてもらおうかしら。てかこの犬が私の家の前で吠えてたから優奈が帰ってくるの待ってたのよ。きっと誰か探してるだろうし」




その犬を見た優奈と流徒は開いた口が塞がらなかった。商店街や町中探し歩いて探していた犬が隣の家に行って保護されていたの知った瞬間肩の力が抜け思わず はぁ‥ と口に出てしまった。




「レクサス!こんな所にいたのか!探したんだぞ??」


さっきまでとは比べ物にならないくらい表情がガラッと変わった流徒を見て一件落着した。

流徒はレクサスを抱きしめ頭を撫で離そうとせず満足そうにしていた。


麻帆がオフィスチェアから立ち上がった。



「よし、じゃあ私は帰るから。また明日ね。」


そういい帰ろうとする麻帆の方に振り向いた流徒は頭を下げお礼を言った。

「ありがとう‥ おかげで助かった」


「気にしないで、私特に何もしてないし」


麻帆はそう言い自宅へと戻った。


流徒も立ち上がり優奈の方を向いてお礼を言いだした。


「今日はその、色々世話になった。ありがとうな」


そういい流徒も事務所を出ようとしたとき優奈がコーヒーを吹いた。


「ぐふぉ!、ち、ちょっちょっと待った! お金!お金は?調査料!!!」


タオルで口周りを拭きながらズカズカとこっちに寄ってきた。


は?

本日2度目の は? が出た。


「 はぁ?商店街と町を少し聞き込み入れて見つからないから事務所に戻ったら見つかった依頼主に調査料とるってお前頭どうかしてるぞ!冗談じゃない、帰りますお世話になりましたありがとうございましたさようなら!!」


そう言い放ち事務所のドアノブに手をかけ逃げようとした瞬間優奈が流徒の背中に飛びついてきた。


「待て待て待てぇぇぇ!逃げるなぁ依頼したからには払って貰うからね!絶対逃さん!」


優奈は流徒の目に手を覆いかくし背中に乗った状態のまま暴れだしレクサスより吠えていた。


「やめっ 見えないだろうが!離せ!このチビ探偵擬きが!」


そう言い無理矢理優奈を引き剥がした。


「チビ探偵擬きって何よ!ちゃんと探偵やってますもん!だいたい依頼料も払えないような人に言われたくありません~だ!」


「今日家賃払えなくてアパート追い出された俺にそんな酷い事するのかお前は!」


それを言われた優奈は何か閃いた顔をした。


「じゃあさ、君ウチで働いてみない?探偵見習いとして雇ってあげよう。そして働いたお金で依頼料を返してもらおう!てかアパート追い出されちゃったんでしょ?あたしここの大家だからアパート貸してあげるよ!働いて返して貰うから!頑張れ!」


「ふざけんな!なんで俺がお前の所で働かないといけないんだ!冗談じゃない!」


「ふーん、じゃあ依頼料請求書させていただきますから。いいよね?」



‥ 目を細めて流徒はため息をついた。


「わかったよ、わかりましたよ働けばいいんだろ。てかアパートまで貸して貰っていいのか?」



「大丈夫!まだ入居者ゼロかも!。流ちゃんが1人目かも」




どさくさに紛れてちゃん付けされた




「おい、ちゃん付けはやめろ。じゃあ早速部屋借りてもいいか?てかここってペットOKなのか?」




「あーいいよいいよ。じゃあついてきて!部屋案内するから。」




と言って建物の裏に回り階段を上がり部屋の鍵を開けた。


ボロいアパートかと思えばそんなに酷くもなく割と新しい感じのアパートで少し安心した。この見た目中学生探偵の事だからどんな部屋を提供してくるかと思っていたが部屋は安全そうだった。


「じゃーん!ここが流ちゃんのお部屋かもー!あ、後で家賃の事と一緒に契約書にサインしてもらうかも。逃さないから。」


怖い怖い怖い。



もうここまでくれば逃げられはしない、確実にここで探偵見習いをしてここでしばらく暮らす事になる。



部屋に不満がある訳ではない、問題は人物だ人物。





想像するだけで



はぁ‥



と口からでてきそうだった。




こうして俺と自称スーパー探偵高木優奈のツッコミ所満載で疲れる探偵生活の幕を開けた



死にたい‥


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