ロリな彼女は主人公を壊す

一馬力

第1話 さようなら、勇者と魔王

 あと一撃で魔王を倒せるというところで、勇者は銃で撃たれた。

 

 くそ、邪魔しやがって。魔王の残党か?

 

 銃を撃った人間はフードを深く被っていたので顔がよくわからない。

 勇者は魔王に顔を向ける。

 すると、魔王もわけがわからないというように、目を見開いて勇者に首を振った。


 勇者の右脚を撃ち抜いたのは対峙していた魔王の勢力ではなく、第三者のようだった。

 魔王だけでも厄介なのに、また敵が増えるなんて勇者はやってられないと思った。


「いったい誰なんだ?」

 

 フードを被った襲撃者は何も答えない。

 銃を構えたまま、ゆっくりと勇者に向かって歩いてくる。


 このままだと殺される?

 いや、何か助かる方法はあるはずだ。


 勇者は負けそうになるとたいてい新しい技をひらめいたり、仲間が助けに来てくれたりと、何とかなってしまうのを何度も経験していた。

 いわゆる奇跡というやつだ。

 そして、今回も奇跡は起こる。

 勇者の仲間が助けに駆けつけてくれたのだ。


「待ってたぞ、お前たち!」


 だが、勇者の笑顔は一瞬で失われた。


 フードを被った襲撃者は勇者の仲間が救援に駆けつけたのをすぐに察知し、現れた四人全員を一瞬で倒した。電気が弾けるような音が四回鳴り、銃口から青白い閃光が四回発射された。立方体を繋ぎ合わせたような奇妙なデザインの銃を見て、勇者は冷や汗をかいた。

 不気味過ぎる。

 何かがおかしい。

 数々の命の危険に勇敢に立ち向かってきたからこそ、勇者と呼ばれていたのだが、このときばかりは逃げたいと勇者は思ってしまった。

 しかし、逃げる時間など与えてもらえない。

 勇者と勇者の仲間の四人が足を撃たれてのたうち回るのも気にせず、謎の襲撃者は黙々と勇者に手錠を掛けた。

 いつもならピンチがチャンスに変わるはずなのに、何も起こらなかった。勇者は怒りもせず悲しみもせず、ただ諦めるしかなかった。謎の襲撃者は話し合いも抵抗も通用しない自然災害のようなものだった。

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