じゃじゃ馬ならし

ドナヴェルと呼ばれていたあの少女の笑顔が目に焼きついて離れず、アンドレアはよく眠れなかった。多分ソフィアと血が繋がっているのだろうけど、共通点はなさそうである。あの後、姫は病欠でと言って、混乱を沈めていた青年がいた。

あれが多分、この屋敷のお嬢様の言っていた騎士団の一人だ。

グレイプニルは、何故か多方面に顔が広い。その騎士とも周知の仲だった。

あのあとどうやってドナヴェル姫を落ち着かせたのかはわからないが、

ふと思い出すとあの金髪の美少女が自分の瞳の色を褒めてくれた。

彼女が目を止めたのはあのれいの王弟に似ているからだ。

従者が王女から声をかけられた!と言って、この屋敷の姫がキャピキャピと騒ぎ立てる。


「お前のおかげよ、アンドレア」


「あっそ」


「ああ、これで私も爺じゃなくて貴公子を連れて歩けるようになるのかしら」


爺は、苦い顔つきで、姫を一瞬睨んだようだった。

でもそのあと笑顔で満たされて、よかったですねとそれだけ口にした。


「あの暴れ馬、とても乗りこなせなかっただろう」


朝食の目玉焼きをフォークにぶすりと刺してグレイプニルはそれをそっと口に運んでぁら、アンドレアにフォークを向けた。


「いや、俺の前ではあんまり暴れなかったような」


すこし考えてアンドレアは昨日あったことを思い出していた。

彼女の見事な縦ロールをばっさり切ったのである。


「へえ、気に入られたのかもな」


「まあ、本当?」


お嬢さんが嬉々として顔をぱっと明るくしてグレイプニルの方向へとちらと顔を傾けた。


「ドナヴェルと仲良くなれたら良いことがたくさんあるわ!」


騎士団の連中に近づけるものな。

イヤミを口に出さず、グレイプニルはさっさと朝食をすませ、

簡単な服装に着替えて玄関先でアンドレアとでくわした。


「どこへ行くんだよ」


「何、ちょっと野暮用でね」


一瞬悲しげな表情をしたアンドレアをグレイプニルは見逃さなかった。


「置いていきやしないさ」


軽く笑って、グレイプニルは出発してしまった。


「おまえこそ、勝手にスラムに帰ってしまうんじゃないぞ」


最後にそういい残して、グレイプニルは去った。

不安で押しつぶされそうな感情を、ひきずってしまっていたから、

アンドレアは屋敷中の人々からその日声をかけられた。


「まあ、あのグレイプニル様がお供を置いていくわけありませんわ、

きっと迎えにきますわ、もし迎えにこなかったら、私の召使いにしてあげる」


このお嬢様の召使いになるなんて死んでもごめんだ。でもグレイプニルが帰ってこないようなことがあれば、そうするしかなくなるかもしれない。

季節が変わる頃になってもなかなかグレイプニルは姿を見せなかった。

毎朝グレイプニルが現れるのを玄関先で待っていたアンドレアは、

いつもしょげて、屋敷の中に戻ってくるのであった。

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