第6話

息子が北関東にある国立大学に合格した。

息子は、学園都市とも言える大学近辺の環境が気に入って、その大学を選んだ。それほど遠方ではないが、通学するのは無理な距離だったので、息子は大学のそばにアパートを借りて、一人で暮らすことになった。

引っ越しの荷物をまとめていた息子が、私のところに表紙が擦り切れた汚いノートを持って来た。

「俺の机の抽斗にこんなもんが混ざってたよ。これ、ばあちゃんのノートじゃないか?」

息子がそう言って私にノートを渡した。私はノートを開き、黄ばんだページをめくった。

それは確かに死んだ母のノートだった。内容は、母が日記代わりにその日の出来事や感じたことを短く書き留めたものだった。母が死んで遺品を整理したときに、何かの手違いで息子のノートと混ざってしまったのだろう。

私はそのノートを書斎に持って行き、老眼鏡を掛けてそのノートをゆっくりと読み始めた。

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