修正後の00
セノオはたまに調子に乗るからグダグダ長くなる。けれど、結局は大事なことが書いてある時が、たまにあるものだから読んでやろうと思った。
しかしその気持ちが仇になるなんて最悪だ。
ショップ内で急に通知がきた。警報ってあるから読まないわけにはいかない。そしてきた。
きやがった。
天井から銃弾の豪雨をまともに食らって死んだ。目の前が血の色に染まったと同時に、焦点が合わなくなって
ウィルズィスト。
視界画面が暗転する直前、初めて、ウィルズィストという敵の顔を見た。狂ったようにでかい目で笑いながら奴は、ライフを奪いにやってきた。四十六
二度目はウィルズィストの本体にまともにやられた。
白装束を黒にしたようなそれに、可愛いイラストの
ロボットのコックピットの
その頃に能力を底上げしようと聴いていた曲は〝カーチャマンの歌〟だったと思う。
トマホークの
「じゃああんたが本体か!」と僕はそいつを探しに走るが「バカにするな、
我こそが分身だ! バカ正直に自分が本体などと、
言うわけなかろう!」
「バカか……」とちょうど目の前にいる別の分身が額に手を当て「自分から言っちゃダメだろ」
そしてどの分身もそれぞれがやれやれと言わんばかりの仕草をする。
なんでかその時、僕は足を止めてしまった。
「だよなぁ」と今度は別の分身が「ヘタレだぜ、自分だけ生き残ろうって
「
「あんただって自分で言っちゃってんじゃん!」
「何をバカな」
「バカやろう!」と思わず僕は叫んでしまって、「みんなまで巻き込んじゃってっ、……一番
「ウソを言っているのか本当のことなのか分からないようにしているのがなぜ分からない」
「消され逝くって言っちゃったのに!?
我々とも言っちゃってたよ!?」
「一般的な分身のことを言いたいのだ! こっちだって死にたくない「つーか貴様らよ
「黙らんか!」
「ちょっ、やっぱ、
貴様らよ「「「黙れっつってんだろーがッ」」」
「
き さ さ
きききききき ささささささ まままままま
き さ さ ま
きききききき さ さ ま
き さ ま
き さ ま ま
き さ ま
ま
ららら
らら 怒怒怒
ら 怒怒怒
ら あ 怒怒怒
ら ららら あああああ 怒怒怒
らら ら あああああ 怒怒怒
ら あ あ あ あ 怒怒怒
らら あ ああ あ
ら ああ あ ♨︎♨︎♨︎
」
なにやらゴングでも鳴ったかのような気配だった。
仲間割れの
あ、もちろん大歓迎っす。いいぞいいぞ?
もっとやれー
「うるせえっつってんだろ! お前のせいでこーなったのになんでそんな偉そうだ!」
「黙れコラ。マジで。
「ウソつくな! 自分だけ消されたくないから言ったんだろう!?」
「違うっつーの!
あえて自分が分身だと言うことで、なおさらあの小僧は考え出すだろうが! ウソを言うな、とか、
いやもしかしたらウソではないかもしれないとか!」
「考えんわボケ」
「そうだボケ! 消されたくないのは、
俺たちも同じじゃボケ! 俺たちにも人権があんのに!」
とかなんとか、
別の分身たちが好き放題がやがやしている。
僕は ん? となった。
あ、ともなる。「というかあんたら、もうただ自爆し合ってるだけじゃないか! バレバレだよ!」
「黙れ小僧! 問題じゃない」とまたまた別の分身が「んだよ!
我々だってただ消されるだけの人生なんて、本当は嫌なんだ!」悲痛の叫び。
げっそりしてきた。
しかも「そうだそうだ!」と群れ中が、わいわい騒ぎの勢いを増す。これは、
集団行動が生み出す団結力とでもいうか。
デモ行進かこれは。
げっそりしてくる。
僕が悪くなっちゃってんじゃん。
「パ」とまた別の分身が「ソコンのショートカットのように、必要じゃなくなったら使い捨てられたり元データの場所変わったら捨てられたりする扱い!」
「それをされる気持ちがお前に分かるか!」とまた別の分身が
「せめて告白してから死にたい!」とまた別の分身
「消すのはまだよ!」とまた別の分
「うるさいよ! さっきの冥利に尽きるってのはどこいった!」
「だーかーらー
アアアアアア
「ごちゃごちゃうるせぇぜお前らア ア
ア ア
ア
ア
ア !!」
分身の群れの中からきた。しかし、さっきまでの奴らと同じ声なのに違う、初めて聞くような感じの怒鳴り声だった。
海が割れるように道が開けてくる。そしてついに、腕組みをして堂々と立つ姿が現れた。やっばり他の分身と同じ姿形だけれど。
「残像……」とまた別の分身が言う。あれ?
残像かよ。
「同じ分身かと思ったぜ……」と今度は別の分身が言う。当たり前だバカ。
同じ姿形してんだから、どこで見分けんの。
っていうか、
もしかして若干、全身が
そこんとこで、見分けんの?
確かに残像って、分身より持続時間短いもんね。
「自分の出生に嘆いてジタバタしてる場合か! こんな自分でもどうすれば何かの役に立てるのか考えてやってみたらどうだ!」と残像が分身目がけて
多分。
残像から分身にまでのし上がった立ち位置ってこと?
すごーい
「格好よく生きようぜ! 男なら
きたきたきたきた。
僕は
熱弁中のところごめんね。
やはり残像を消したら、分身も残らず消えてくれたぜー ぃえーい。
よかったぁあああああ。
あー終わった終わった。やっと終わった手こずらせやがって、みたいな気持ちもあるけれども、
ここからが本番だと思う。
後は本体だ。
残像がいたのだから「本体はどこだ」「ここだよ〜〜ぅ」
頭上から半笑いの声がした。
残像の語気に近いような口調。
ゾ、とくるものがあった。
加えて今になって、頭と首がものすごく重い感覚を自覚したかのように、
ズンと、
視界画面が、下へシフトしながら揺らいだ。自覚させられた。
視界画面がさらに大きくブレる。今思えば、
奴は僕の頭の上に立ち、バク転でもしたのだと思う。反射的に上を向いた時には
「ッバァ」
と挑発するように口を開けてきた黒い白装束の姿を見たのが最期だった。総面なんてつけていない。
右腕に竜巻並のドリル。
きっと僕のアバターは首の皮一枚だけ残して、残りは全て消し飛ばされたのだろう。〔131〕
三度目はセーブポイントの背後に忍ばれたために、ウィルズィストらの忍者刀で滅多刺しにされた。ゲーム内で貯めた〝
藤谷たちからの話によると、
気づくのが遅れて、そのうちに僕が先行してしまったがために、僕の背中が引き裂かれ開かれた後、奴らは、背骨の役割をする鉄状の骨格を引きちぎり抜いて、内臓の役割をする機械の塊や、人体でいうと血管の役割をする半透明のコードを、引きちぎっては投げ捨て引きちぎっては投げ捨てながら僕の心臓に当たる部品を取り出そうとしていたらしい。
心臓部には、溜めてきたライフが
ただのゲームにおける演出を
意味するだけではない。
それなくしては万物を構成できない、
最優先で超絶、必要不可欠な要素だ。
ウィルズィストのやっていたことは、対象アバターを構成するプログラムコードの中から、目的のものを探し当てるまでに不要な部分を〝切り取り〟続けることで取り除いている。
そしてついに目的の部分にまで行き着いた時には、〝コピー〟ではなく、〝切り取り〟を行って、
自分を構成するプログラムコードの中に〝ペースト〟するため、喰らい取り込む。
藤谷たちはそれを知っていたから、阻止してくれた。おかげでライフを全て失わずに済んだが、今度は奴らはまるで必要な部品を見つけるために漁り始めたらしい。それも阻止しようとしたが
残りの十回以上もした失敗では、いつもウィルズィストの方のウラボスか、ウラボスのいる裏面に行ける直前で、ウィルズィストにやられた。今のライフ残数は二百六十四柱だが、
時間を気にしたり、縛りプレイにこだわったりしたせいだと分かっている。
けれども他のプレイヤーだって、そういう縛りプレイで他のウィルズィストの
世界最速は四分二秒だ。最速を叩き出したプレイヤーがやっていた縛りプレイと同じか、それ以上の縛りプレイで、記録を塗り替えなくては認めてもらえない。
しかし縛りプレイとは、どこまでチートを使ったかによるものだから、難しいわけではない。四分以内で世界新を達成できる。そのプレイヤーこそ確実に、
最貢献栄誉賞と栄典を授与・贈呈されるに値される。
値されれば、当分、課金する必要がなくなる。
しかも、あらゆるリミッターを解除できるかもしれない。
やり込める世界が広がる。
絶対に失敗できない。
そうだ。
全部、
今このゲームで、
活かされるんだ。
今まで戦争用のヒュミノイドで、
その
実戦経験を積んできた経験も。
〝
我を忘れて
戦い抜いてきた経験もだ。これなら、
ヒストゥトさんの自殺も無駄にならない。
ルニは非公認改造した
ルニは、
〝使用者の全てそのもの〟を
再現化した形でもある。
僕の
僕そのものを再現化した形。
現実に戻る時には、
別空間という立ち位置から消えて僕に還るルニ。
千束は、
そのルニに、
取り残されて行方不明になったんだ。
僕のせいで、
たった一人しかいない妹を
帰れない姿にしてしまった。
だけど、
僕の中に、
千束がいるかもしれないんだ。
ヒストゥトさんだって、僕の中にもいるかもしれないんだ。
あなたが死んでも、私の記憶の中であなたは生き続ける。そんなような言葉を言った人が、
たくさんいた。
たくさんの人が、その言葉通りだって言い伝えてきている。その言葉は本当のことなんだって、僕も確信できている。
僕の中にもヒストゥトさんはいるはずなんだ。
ヒストゥトさんのブログ。
それでヒストゥトという存在を知った。ヒストゥトさんの心の
ヒストゥトの一部が、僕の中に取り込まれた。
それはヒストゥト自身もコピーされたんだと思う。ヒストゥトの一欠片にしか
生きている時には、コピーされたヒストゥト自身の一欠片にしか繋がれないんだと思う。
でもヒストゥトが死んだ後の今は、ヒストゥトの一欠片のこの記憶を通じて、ヒストゥトは僕の内側にも直接、行き来できるはずなんだ。
ヒストゥトのことを知っている人の記憶を通じてどこにだって行き来できるってことじゃないか。
記憶で繋がっているはずだ。
それが本当かどうかまでは分からない。でも本当のことかもしれないんだ。僕の中にもヒストゥトさんがいるはずだ。だから僕も通じて、ヒストゥトさんも楽しめるはずなんだ。楽しさを分かち合えるはずなんだ。
世界新なんて達成できたらきっと、
巨大ショッピングセンターの立体駐車場の屋上から、センターへの入口目がけて、言葉の書いた紙を無数にばら
紙に書かれた言葉は
〝車が急発進した時とは比べものにならない慣性がきた。
それは終わらない。
まるで、
自分の内側が
後ろへ
引きずられている。
耳の奥でもパクパクと音が鳴っているかのようにパクパク聞こえる
そんな、
眠りにつく前に感じる始まりの感覚と、
リファードに私は
取り憑かれた。
どうしても忘れさせてくれない〟
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