藍空の勇者

裏瀬・赦

異形の光

1章 エンタングル

 空中に伸びる飛行機雲。ぼくはずっと憧れを抱いていた。いつか自分の手で青空にそれを引いてみせると、幼心に思っていたものだ。

 ぼくにとっての空は穏やかさの象徴だった。心の奥底まで包まれるような、藍色に近い青。押しつぶすように迫るかと思えば形を変えて散っていく、時折金色に光る雲。

 だが、今、ぼくが翼を広げた空に安寧の時はない。


+++×××+++


 白の雲海を眼下にその戦闘機は飛んでいた。機首に行くほど鋭くとがったフォルムは白銀、生物を思わせる流麗な装甲で全体を覆い、空気を切り裂いて飛ぶための主翼は薄く横に開かれている。尾翼は小さく2枚、機体の後部にエンジンポットが二基。白銀を曇らせる一点の黒は翼に記された「嵐剣」の文字。人の手による文字を模したものだろうか、荒々しい筆跡で書かれている。

 その後を追うのは青と緑の戦闘機。青には「蒼竜」、緑には「閃竜」とそれぞれ黒色で書かれている。蒼竜はやや武骨な凹凸を持つフォルムをしており全長は12m。翼は滑らかな曲線を描く山型で、尾翼は2枚大きいものがある。閃竜は嵐剣にも似た瞬鋭なフォルムだが嵐剣より細身で全長は17m。尾翼はとがっていて長めだ。しかし両方とも嵐剣とは違う。

 竜の名を冠した二機は空中で安定して動くことを目的として製造されたものだ。翼や機体の強度、乗りやすさにも力を入れ、蒼竜の方が若干扱いやすくはあるものの両方とも操縦性能は高い。しかし速度と、なによりも武装を犠牲にしてしまっている。重量のあるものを積むことは難しくなっているのである。

 嵐剣は機体コンセプトそのものが違う。全長は10mと小型。高速・高機動・高攻撃力を軸に、搭乗員の技能を最大限に求めかつ搭乗員の安全の優先度を下げ、必殺だけを目的に製造された数機限りの特注品だ。そのため現在では製造はおろか分解も解析もままならず、内部はブラックボックスと化している。

 翼もそうだ。蒼竜や閃竜、さらには他の戦闘機は根元だけが動く一点可動の翼である。この場合、速さと機動力が下がる代わりに強度が上がり安定を得られる。しかし嵐剣に使用されているのは二点可動の一枚翼。ひと繋がりの翼を、根本と半ばで角度を変えられるようにしたものだ。強度は過去の技術が支えているので問題はない。ただ、翼の自由度は増したものの、操作の難易度は撥ね上がり、ごく一部の熟練者を除けば戦闘はおろか生還することさえ難しくなった。

 それでも――いくつもの情報を同時に把握し瞬時に対応できる判断力と反射神経があれば、その機体は名前の通り剣の踊り乱れる嵐と化す。現在、この機体を操れるのは伊織いおりかなでしかいない。

 嵐剣は一振りの剣となって空を飛ぶ。その中で奏は藍色の空を視る。肉眼で見ているわけではない。外に取り付けられた無数の光・熱・音・気圧、その他諸々のセンサーが捉えた感覚が同調装置を通して脳の器官に投影され〝体感している″という情報となる。それゆえ360度が一つの視界となる。

 後方を行く蒼竜と閃竜にも同調機能があるが嵐剣ほどの精度も知覚できる範囲も持ち合わせていない。そもそも嵐剣の搭乗者は膨大な情報と折り合いを付けられなくてはならない。負担をかけない、という意味ではある程度精度は低い方がいいのだ。一定のスペックさえあれば戦闘に問題はないのだから。

 彼らにとって風は濃淡のある大気であり、雲は粘りのある重さを持ち、戦闘機は抑えきれない衝動を内に秘めた翼である。大気を滑り空気の層を抜け身体は空を飛ぶ。その時間が奏にとって一番の至福。

 背後の二機は上下左右に位置を変えながら嵐剣を補足し続けている。この二機を撃墜するのが奏の役割だ。蒼竜は動きが固く閃竜が補助にまわっている。さて、どちらから狙おうか……。奏は嵐剣を左右に揺らして反応を見る。

 太陽の光が降り注ぐ空の下、雲海に映る三機の影は蜻蛉と蜂のようだ。速度と機動力に任せて噛みつこうとする蜻蛉を二匹の蜂が連携していなし、速度を落とそうものなら砲弾を浴びせようとする。蜻蛉も砲弾は持っているが、一機を仕留めた隙を狙われる可能性もあるので迂闊に攻撃できない。

(そろそろ、いいかな)

 奏は周囲の状況を改めて確認し、速度を上げて二機をやや後ろに置く。追いすがる二機は加速した。

 その瞬間、嵐剣は蜻蛉から鷲へと変わる。尾翼を調整し主翼を一息にたたんで回転して勢いを落とし、再び主翼を広げて蒼竜と閃竜の背後を取る。

(――簡単)

 床に足がついている時より、奏には空中を飛び回っているほうが楽だ。身体が軽いし思い通りに動かせる。全身で世界を感じられる感覚は、人によっては酔ってしまうそうだが、奏には心地よい酩酊である。全能感とまではいかないが、数㎞内の動きなら手に取るように分かってしまう。

 正面を行く二機の様子も簡単に分かる。急に背後を取られて動揺したのだろう。翼の動きが乱れた。直接の後方は取らせまいと焦っている。二機は上昇と降下の繰り返しを始めるが、嵐剣はまず速度の遅い蒼竜をマーク。雲海からきまぐれに出てきた雲塊に突入し振り切ろうとする蒼竜を、その前に落とすため速度を上げる。

 意識を蒼竜に向けながら奏は閃竜も意識にとらえている。蒼竜に意識を向けたのを幸いと思ったのか、閃竜は速度を上げて逃げるようだ。

(それとも、いったん隠れてから襲ってくるとか)

 二機が連携を組んで襲ってくるのは想定の範囲内だ。その方法が自分の想定を超えてくるのかどうか、想像して奏は小さく笑みをこぼす。落とせるのなら落としてみな、と心の中で言って、蒼竜を追う。彼我の距離は4560m――4260m――秒刻みで縮んでゆく。

 10秒、それだけの時間を開けて、奏は照準を蒼竜に向ける。距離は1200mの超至近距離。外すほうがどうかしている。機械の補助が入る前に、奏は対象を照準にいれて、発射した。直径20㎝の砲弾は機体の加速も含め初速はマッハ11をたたき出す。自ら起こした衝撃波で圧壊しつつ砲弾が蒼竜へと襲いかかり――

 雲塊を突き抜けて飛び出した閃竜がその横を通り抜けて相対速度マッハ6で嵐剣へと迫り嵐剣が続けて放っていた砲弾に撃たれ嵐剣の横を通り過ぎた。

 一瞬遅れて蒼竜に砲弾が命中し、蒼竜と閃竜の機体に赤い塗料がついた。

 緊張が緩んで奏の手が震えた。第二射はほとんど無意識のうちだった。雲塊の表面に異常を見つけたと思ったら指が動いている。この感覚が奏は苦手だった。自分の行動が行った後になって知覚できる。自分が自分じゃないようで奇妙ったらありゃしない。でも、今回は自分が考えていた通りだったからそこまででもない。

 しかし……と、奏はため息をついた。こんなお粗末なやり方でどうにかできると思ったのだろうか。確かに閃竜は速度も出るし旋回にも強い。しかし嵐剣には及ばないことは分かりきっている。奇襲にしてももっと引きつけないといけないし、隠れるならもっと意外な場所にしなければ。そう、雲海の中とか……

 そこまで思ったとき、耳の中で音が出ているような感覚がして通信が入る。思考を切って意識を会話に向ける。

『相変わらず当てられない。本物の鳥のようだな』

 閃竜の搭乗者、水無月みなづきあかつきからだ。本物の、を強調した言い方は、褒めているのではない。本物の鳥は既に絶滅した。つまり過去の遺物とでも言いたいのだろう。だが、奏に対してその皮肉は通じない。空を飛ぶこと、それが彼のすべてなのだから。空を自由に飛んだと言われている鳥に例えられて嬉しくないはずがない。

『ありがとう』

 掛け値なしの本音で奏は言う。それは暁には皮肉の応答にしか聞こえない。暁は小さく一つ舌打ちをする。

『続けるぞ』

苛立ちを飲み込んだ乾いた声を最後に通信が切れる。もしや皮肉だったのでは、と奏が気づいたころには閃竜は移動を始めていた。それに、気づいたとしてどうだったというのだろうか。

蒼竜から微笑と安堵の意思が伝わる。二人のやり取りで緊張がほぐれてきたのだろう。

『すごかったです!』

 興奮気味の声は倉橋くらはし仁美ひとみだ。今日が実際の機体に乗って初の訓練であり、新人の例に漏れず嵐剣と奏の飛行に感嘆が抑えきれない。

『これくらいは当たり前だよ』

 奏にとってはそれが事実。しかし倉橋には謙遜にしか聞こえない。機種の問題もある。技量の問題もある。しかし彼女は、単純に空中を自在に飛ぶ奏に魅せられていた。彼女の操縦は拙い。機体を動かすのがやっとで、まだ蒼竜でさえ自由に飛ばせない。奏に魅せられるのも当然だろう。

『いいえ! わたしなんか、水無月さんがいなければすぐに撃たれて終わっていましたよ』

『そうかな。飛ぶことはできているし、逃げるだけならすぐには終わらないんじゃないかな』

 蒼竜に乗るというだけでも道のりは困難である。同調装置との接続の時点で8割は弾かれる。操縦技術で残りの半分が弾かれ、適性試験を通過させれば残るのは一人か二人でも多い方である。酷い時には一年を通して適正人員を確保できないことだってある。その中をここまでたどり着いたのだ。奏は、それだけでもすごいと思う。逃げるのも、今回は飛ぶことの訓練なのだから、きちんと飛べるようになればいいのだ。

 それに、と奏は思う。この時点でも酔いが見えないなら資格は充分にある。いい人員が入った。これならばまだぼくたちは戦える。

『じゅあ、今度は』

 奏が口を開いたその時、三人の脳内に警告音が鳴り響いた。

『『逃げろ!』』

 奏と暁の意思が重なって届いた瞬間、蒼竜は急発進していた。可能な限り早くこの場から去らなければならない。まだ訓練課程の自分は戦ってはならない。足手まといになって墜ちるのが目に見えている。

 視界に表示される敵の突出地点と数と種類、それを計算に入れながら、できるだけ離れた地点を飛んで逃げる。浮上するのは五体。早く――自分が足手まといになる前に帰らなくては。飛鳥との距離は約350㎞、最大全速で8分弱。

『大丈夫ですか?!』

 仁美に通信が入る。飛鳥の管制室からだ。

『は、はいっ! ただいま戦場を離脱して、飛鳥に向かっています!』

 同時に安堵の息を吐く音が聞こえて仁美の緊張が緩んだ。よかった、逃げられたみたいだ。仁美もほっと息をついた。


 叫ぶと同時に嵐剣と閃竜は予測突出地点へと急行していた。蒼竜が即座に飛んで行ったのは感じた。まずは通信を解放系にする。三機の間である程度以上の意思や思考が共有される。それは頭の中が筒抜けになることを意味する。だが、こうすることで常時の情報の伝達が可能になるのだ。さらに練習用のペイント弾を排出しエネルギー砲へと砲身を換装。これで準備はできた。

 雲海の中からそれが白を突き破って出てくるのを演算機器が警告すると同時に嵐剣は速度を上げた。閃竜は別の突出点へ加速する。嵐剣は雲の際を飛び、低雲飛行で迎え撃つ。浮上してくるそれが雲海に波をつくった瞬間、奏は3㎝光学パルス砲を発射していた。

 白い波頭がうねり緑色の物体が沈んでいく。外した。奏はさらに速度を上げて飛沫をよけながら飛び去る。もう一つの突出地点へあと2㎞――雲海に触れないようにすれすれを飛び――思考する間に空間の乱れが渦となって視界に螺旋をつくり、その中心から緑色の腕が指を伸ばす。

 ――距離が足りない。たいした時間稼ぎにはならなかったか。次の目標を放棄して奏は嵐剣にさらなる加速を入れる。マッハ2――2.5――2.7――加速の中で方向を修正し、迫る腕を避け機首を右に向ける。エンジンの出力はそのまま。機体全体を右に倒し主翼を傾け、主翼の上方に気流を生み出し軌跡に弧をつくる。最終的な旋回角は90度。空気が薄い高高度だから可能な荒業である。

 強引な操縦に血流は頭へと偏り骨は軋みの呻き声をあげている。しかし肉体への衝撃があっても操縦中は意識への感度が最小限になる。意識を保っていられるなら、筋肉が裂けても内臓から出血しても骨が砕けても神経が燃えても、痛みという電気信号は操縦者にはノイズにしかならない。わずかに感じる違和感を肉体の変調としてとらえるだけだ。

 だが奏の意識は変調すらも無視して飛ぶ。

 次の一点、演算機器が示す突出地点の場所に光学パルスを撃ち込む。虚空を素通りするように見えた幾本ものビームは光の渦に着弾。そして渦が大きく歪曲しはじき出されるように緑色の光を放つ物体が全身を現した。距離は2000mジャスト。物体の大きさは10m強。

 出てきたのは、四本の腕、上半身だけの胴体、存在しない頭部、すなわち緑色の巨人。すべてが緑で、螺旋を内に持つ宝石のように複雑に光を反射して、見ているだけで目が歪む感覚を引き起こす存在。その名をグラスプ。襲ってくるものの総称はエンタングル。

 出現と同時に奏は嵐剣を加速する。訓練では使わなかったエンジンポットに火を入れれば速度はマッハ3を超える。空気は荒布のようにざらざらに感じ、身体はその層と層の隙間を切り裂いて進む。

 1秒後。距離は1160m。それが空間跳躍をする気配はない。グラスプは止まっているように見え、あっさりと一撃を入れることができるだろう。

 2秒後。距離は0。グラスプの、人で言えば心臓の位置に嵐剣の翼が斬りこみ、その中の核を切り裂いた。胴体に斬りこむときは薄布を突き刺す感触で、核を壊すのはガラスを割るような感触。痛いという感覚は無い。それでも衝撃は肉体に起こったように感じる。

 核を失ったエンタングルは光を乱反射させながらバラバラになって雲海へと沈降していく。その破片もすぐに分解されていくので採取は難しいそうだ。

 最初のパルス砲からここまで9秒。同時に閃竜もグラスプを一体撃破している。その光景を見ている時間はない。感覚の隅で別のグラスプが突出するのを感知しパルス砲を撃ち込む――その直線上に線が入りビームを弾き飛ばした。

(来た)

 空間に走った線の正体はメルトブルーだ。雲海から浮上したメルトブルーは、名が示す通り深い青色をしている。長径20mほどの大きさで形は人の頭部。しかし目や口はなだらかな凹凸で穴は存在しない。グラスプよりもこちらの方が脅威である。

 メルトブルーの表面から細長いものが剥がれた。リボンのように細く薄く伸びて空間を漂う。その数は時間の経過と共に増えていく。

 嵐剣は加速する。マッハ4。この機体の通常限界速度。その機体を狙ってリボンが直線をつくる。奏にはそれらが空間の亀裂として視える。厚みは存在しない二次元構造体。強引に生み出されたものが三次元の世界に異常を生み出しているのだ。

 嵐剣は慎重に動く。下手に動けば亀裂につかまってしまう。あれの直撃を受けた機体を奏は眼前で見たことがある。触れられたが最後、亀裂は機体全体を侵食し搭乗者もろとも細切れになって雲海へと落ちていくのだ。

 しかし回避するたびに速度は落ちてゆく。ほんの少しずつでも、百分の一秒を連続して繰り返せば遅滞は目に見えるほどになる。

 嵐剣はパルス砲を撃ちながら亀裂を回避してゆく。彼の感覚の中では亀裂は赤い線だ。機体が左右に揺れるたびに赤い線は一瞬前に嵐剣がいた空間を走って消え、パルスを受け止めて消え、それを上回る速度で剥がれて増えていく。

 嵐剣の背後から亀裂が迫る。翼の角度を調整し最小の動作で避ける嵐剣に、今度は上下左右前後斜め、全方位を囲んで亀裂が襲う。それぞれ8本ずつの亀裂は嵐剣を直接狙ったものではない。機体の周囲の空間を切り刻んで大気の安定を消し、嵐剣の機動を乱そうというのだ。

 奏にはそれが見えている。しかし逃れる手段がない。ならば、

(砲門解放!)

 機体の下部の10㎝砲から光条が発射される。特殊な金属、スペクトル・デストロイヤー鋼の粒子に反射される光、それを収束して撃ち出すスペクトル・デストロイヤー砲、通称SD砲である。スペクトル・デストロイヤーは人工の金属であり、それに反射される光はエンタングルの力を削る波長をもつ。また鋼そのものも波長を有しているため、直接触れるだけでもエンタングルに対して有効であり、砲弾として搭載されている。嵐剣の翼もこれでコーティングされており、エンタングルに対する強力な武器となっている。

 正面の亀裂はメルトブルーに付属するもの、ならばメルトブルーに効果があるものは亀裂にも効果はある。光条は亀裂を突き破りメルトブルーに向かう。正面を突破できれば直進するだけで包囲を突破できる。――メルトブルーは空間跳躍して逃げた。それでも問題はない。跳躍には数秒の時間が掛かるが突出するのはほとんどが砲撃可能範囲だ。

 次の予測突出地点が出た。嵐剣は瞬時に転回。予測地点へ向かってビームを撃ち込みすぐ後に光条を放つ。コンマの間隙の後、パルスが突出を歪め光条がグラスプを穿った。

(?!)

 一撃でグラスプの表面が削り取られ二本の腕が粒子となって消えた。だが奏の意識はそこにはない。メルトブルーはどこへ? 答えはすぐそこにあった。

これも好機とばかりにグラスプに迫った嵐剣が急上昇をかけた。異変はグラスプから。赤い線がグラスプを貫通して嵐剣に襲い掛かってきたのだ。

(同時に同一地点に突出した……?)

 三年間この機体に乗ってエンタングルを倒してきたがこんなことは初めてだ。その疑問に意識を占拠されるわけにはいかない。グラスプの上方を通過するように嵐剣は斜め上を目指して飛ぶ。その後ろから、下から、亀裂は走り、弧を描いて空中を横切る嵐剣を捉えようとする。

 メルトブルーの後方へまわりこもうとして奏は気づく。メルトブルーはグラスプの背後にいるのではない。中にいるのだ。グラスプが動かないのはそのせいだろう。では核はどうなっているのだ?

 グラスプの全身から亀裂が奔流のように湧き出す。グラスプの緑色が青に飲み込まれ姿が見えなくなる。だが中心はとらえている。奏は演算機関をグラスプに集中させた。どのような状態になっているのか、それを観測することは可能なのか。現状ではグラスプしか見えない。

『助太刀に参上する』

 視界の隅で光が弾けた。閃竜が2体目のグラスプを消滅させこちらへ来たのだ。

『頼む』

 閃竜はグラスプの下方から攻撃する。雲海との隙間は30mもない。閃竜が少しでも角度を誤れば雲海に突っ込んでしまう。だがそれをできるだけの技量が暁にはある。

 閃竜は嵐剣に辿りつこうとして作られた第一世代の機体で、現状では嵐剣の次に速い。亀裂をかいくぐり雲海面すれすれを飛ぶ。それは嵐剣も可能だ。だが確実に演算機器の警告より早く亀裂をよけて飛びぬけている。暁曰く「獣の本能が俺に囁くのだ」とのことだが奏にはまったく分からない。そんなことは奏にもできない。

 閃竜がメルトブルーに近づくにつれて亀裂も密度を増す。大気は切り裂かれ続けてグラスプはもはや赤い糸玉にしか見えない。そこに向かって閃竜は光条を発射した。亀裂が幾分消滅するが、すぐにまた湧いてくる。それどころではない。閃竜へ向けて一直線に亀裂が伸びる。それも三桁に迫る勢いだ。

 嵐剣がグラスプの後方をとったのはその時。閃竜よりは斜め上方からグラスプへと突撃する。同時に光条を発射。二機がかりで閃竜の進路を開く。それでも亀裂が広がる勢いの方が早い。

 暁は光条ではなく実弾を発射する。SD鋼弾は周囲の光を反射し内部発光と合わせてエンタングルの構成を崩壊させる。亀裂は閉じ、糸玉は削り取られて穴が穿たれ、鋼弾が命中する。閃竜は減速をかけ、嵐剣は速度を変えず、亀裂で覆われていた空間を通過した。

 雲海に落下する光。その瞬間、彼方に発生する渦。距離は3800m。

『まだだ!』

 暁に思念が送られてきた時には嵐剣はその方向へと転身している。慌てて閃竜も追うが追いつけない。むしろ距離は離れていっている。だが何が起きたのかは理解していた。

 グラスプを囮にしてメルトブルーは空間を跳躍したのだ。鋼弾はグラスプに命中したがメルトブルーはまんまと逃げおおせていた。グラスプごときに、と暁は歯ぎしりをする。鋼弾はSD鋼そのものを撃ち出すだけあって生産が少ないものなのだ。使用してもかまわないし問題はないのだが、成果が小さいと後で必ず小言がくる。小言を上回る成果を出すためにも閃竜はメルトブルーを仕留めなければならない。

 飛びながら嵐剣は突出地点にパルスを撃つ。パルスの到達は発射と同時だが嵐剣の到着は約3秒後。跳躍の前に仕掛けられるか。奏は後方の閃竜をさらに引き離して飛ぶ。

 メルトブルーが出現する。リボンはこの空間でないとつくれない。つまり出現の瞬間は無力。奏はSD砲を撃つ。光条がメルトブルーを穿つ。当たった表面は粒子が拡散したようにへこんでいて、そこから亀裂が剥がれることはない。マッハ4を出したまま奏は周囲の空間を抉るリボンを避け、眼前に迫った亀裂に突撃――その横を閃竜が放ったSD砲が通過し亀裂を消失させる。

 再びSD砲の直撃を食らい表面が削られたメルトブルーは空間を跳躍する前兆を見せる。核が螺旋状の光を放ち全体が希薄化する瞬間、希薄化しつつも剥き出しになった核に嵐剣の翼が叩き込まれた。核は蒼炎のように光を放ち砕けて散って落ちてゆく。

 しかしそこで終わりではない。

 演算機器が新たな突出を告げる。――いや、告げていた。メルトブルーが跳躍した時に視界に予測地点は出ていた。メルトブルーを倒すまでの4秒の後に出現したのだ。距離はここから50㎞。

 グラスプ4体とメルトブルー1体を倒すのに要した時間は37秒。蒼竜の全速力ならば30㎞は進んでいる。しかも戦場は移動している。実際は33㎞ほどの距離があった。

 蒼竜もエンタングルに気づいているが一人で戦えないだろう。しかも出現したエンタングルはグラスプとクレイドルだ。

 二機は最大全速で蒼竜へと向かう。嵐剣なら27秒、閃竜ならば31秒で到着する。しかし蒼竜は移動しているだろう。飛鳥へと向かって欲しいが逃げるために変則的な軌道となることは容易に予想できる。さらに10秒を到達までに必要な時間に織り込む。

 もちろん管制もエンタングルを感知している。飛鳥から新たに蒼竜と紅竜が二機ずつ発進したと通信が入る。だが飛鳥と仁美の距離は300㎞以上。こちらの方が早い。

『大丈夫か!?』

 暁は仁美に通信を入れる。

『大丈夫じゃないです! どうしたらいいんですか!』

 伝わってきた意思は恐怖と焦燥。意思の中からグラスプが確認できる。

『適当に逃げてくれ』

 奏も意思を伝える。逃げて逃げて逃げ続けて、墜ちなければ充分なのである。それを理解した仁美の緊張が少しだけ揺らいだのを、暁は感じた。倒さなくてもいい。でも何もできない。安心と不安が同居している。少しまずいかもしれない。

『攻撃しようなどと考えるなよ』

 きつめの意思を伝える。到着まで29秒。嵐剣は遥か先を飛んでいる。追い抜きたいという思いが衝動となって身体を焦がす。だがそんなことをしてはいけないのは分かっている。万全の状態で挑まなければエンタングルには勝てないかもしれないのだ。

 その時、演算機器がクレイドルの異変を捉えた。

(来たか……)

 クレイドル。その名は揺籃を意味し、特性として他のエンタングルを収納して運搬するというものがある。その場合、グラスプより力の強いエンタングルを多数入れていることがほとんどだ。それが今、放出された。

『グラスプが1、メルトブルーが2、か』

 奏の意思が伝わる。先ほど二機がかりで倒したにもかかわらず不敵な強さを見せている。まるでかかってこいと言っているように。

 エンタングルは5体。グラスプが蒼竜に近づくのを30秒弱の間、二人は黙って見ていることしかできない。

 グラスプが蒼竜の直進上に跳躍する。蒼竜は上昇して逃れる。――だめだ。奏は、自分右に逃げることを選ぶと考える。閃竜ほどの機動力があるならともかく蒼竜では重力に負けて減速するだけだ。案の定、減速していく蒼竜の上方前にグラスプが跳躍し、腕を伸ばす。

 減速したと言ってもマッハ2は出ている。そのまま捕まってしまうのか――捕まって、四本の腕で引きちぎられてしまうのか――。しかし奏の焦燥と対照的に暁は冷静だった。蒼竜の軌道を視て、これはもしや、と小さく笑みを浮かべていた。

 眼前に迫るグラスプ。仁美はさらなる加速を選んだ。しかし直進する軌道ではない。背を軸にして機体を螺旋状にひねって回転させ、その勢いで機首を下に向けるとともに今度は回転を消し、重力の補助を得て急降下したのだ。雲海との角度は直角。距離は4㎞。それでも加速は止めない。その直線状にグラスプが出現する――直前に5㎝パルス砲から放たれた光の束が渦の中央を打ち抜いていた。

 快気づく仁美はグラスプに突撃して、咄嗟のところで機体を水平に戻して加速しグラスプから離れた。新たなグラスプが近くに出現することに気づいたのだ。そのまま直進していれば捕まっていただろう。

 逃げればいい、というのはあくまで逃げきることを意味している。周囲の状況を確認しつつ常にエンタングルから離れた場所に期待を置かなければならない。それができた上で戦闘を行う。仁美はまだその域に達していないというのが奏と暁の共通見解だ。それに気づいただけでも大きな進歩である。

 仁美はもう、一心不乱に逃げることを選択する。グラスプが突出する前に渦と渦の上を抜け、メルトブルーには最大限に注意し予測突出地点の逆を行き、反転と降下・上昇を繰り返し、できるだけ嵐剣の方へと向かうように逃げ続ける。飛鳥から増援が来るより嵐剣が到着する方が早い。ならば近づいた方がいい。

 その様子を奏は微笑ましい思いで見つめる。初々しいがよく動けている。さっきの訓練よりも滑らかだ。小動物がちょこまかと動いているようでもあって、どことなく可愛らしくも思えてくる。

 暁はその思考を読み取って(仁美も可哀想に)と小さく思う。その思考が伝わっているかどうかは分からない。それでもあとで口に出されたら気の毒だ。――おっと、この思考が伝わってしまったかもしれない。まあいい、と暁は戦場へと意識を向けた。


 仁美の頭はパニックが広がっていた。先輩二人の思考が流れ込んでくる。自分のことを弄ってそんなに面白いのだろうか。恥ずかしさが彼女の頬を赤く染める。

 昔から二つの物事を同時に行ったり、簡単なことなら二つのことを同時に考えたりもできた。だからまだよかった。自分の事が小動物みたいで可愛いとかそう思われて気の毒だとか、エンタングルの挙動に注視しているには気になりすぎる。

 そうでなくてもメルトブルー1体に見つかってしまったのだ。崩壊のリボンが後方から自分に迫ってくるのを泣きたい思いで振り切る。マッハ2.5でも距離が遠いからまだ逃げる時間があるのだ。でも――もう1体のメルトブルーも攻撃してきたら逃げきれない。その未来を思考の引き出しに押し込んで、ひらけた空間を探す。

 後方斜め上に新たな渦が出現した。グラスプが突出するものだ。前方8㎞にはグラスプがいる。跳躍は最大でも5㎞程度だからまだ大丈夫だが、このまま直進したら4秒で跳躍範囲に入ってしまう。となると下降しかない。

 雲海へと落下していく。突入角は45度。重力の助けを得てわずかに速度が上がる。その正面に渦が発生。グラスプだ。しかし仁美はそれを気に留めない。最初からこうするつもりだったのだ。――勢いのままに機首を強引に持ち上げて突入との角度は垂直、わずかに弧を描き高空へ飛翔する。

 リボンが上を向いた。空間を切り裂く線が蒼竜へと迫って、消えた。蒼竜にもSD砲は装備されている。恐怖にかられてパルス砲でなくSD砲を使用したのだ。蒼竜の10㎝砲が光条を放ち亀裂を正常な空間に戻した。さらに突き抜けた光条は幾本もメルトブルーの近くを通過する。

 それを使用した当人はというと、心臓の鼓動が意識できるようになっているほどだった。SDは、よほどの緊急時か確実に仕留める時以外は使うなと言い含められていたのだ。今は緊急時だった、うん、そうだった、と何度も自分を納得させる言葉を繰り返す。

 そして飛翔していく。リボンは来ない。逃げきれた?

 そうではない。新たなエンタングルが天空から降下してきた。

 蒼竜を迎えるのは茶色と白色の縞々が表面を彩る洋梨、クレイドルだ。形は子宮だそうだがどう見ても洋梨にしか見えない。

 クレイドルは蒼竜へ突撃する。空間跳躍をしない代わりにその速度は蒼竜を超えて最大でマッハ3にまで達する蒼竜がもっとも相手をしにくいエンタングルだ。仁美は急上昇と急降下の上下動を繰り返して追いつかれないようにする。しかし加速していくクレイドルに仁美は焦りを持ちはじめる。現状の速度の差はマッハ1.5で向こうの方が速い。このままではあと4秒で追いつかれてしまう。

 今日の訓練はどうだったっけ。どうにか逃げる方法を探す仁美の頭にそんな考えが浮かんだ。あんな速さで追われたんだ。戦闘機。嵐剣。そうだ、この動きは戦闘機に似ているんだ。あのとき伊織先輩は――

 2秒を挟んで仁美は行動を起こす。いったん蒼竜を大きく下降させてから上昇しつつ、軌道を直線に変えた。そんなことをすれば減速してすぐに追いつかれてしまう――それでいいのだ。問題はクレイドルが速度を落としたら、ということだ。充分に引きつける必要がある。

 しかし事態はより悪い方向へと進んでいた。振り切ったと思ったグラスプとメルトブルーが迫ってきていた。1秒に500mを進む蒼竜ではあの跳躍にすぐに追いつかれてしまう。なんとか時間を稼がないと。

 蒼竜はさらに速度を落とす。マッハ1。これから行う動作のためにもそうしておいて損はない。クレイドルはそのままの加速で突撃をしてくる。跳躍の予測も出た。正面に三体。いける。

 仁美は蒼竜の機首を少しだけ上方に向け、翼を畳む。上昇力が蒼竜に働き、しかし安定を失った機体は速度を失い回転してクレイドルの横をすり抜ける。否、クレイドルが蒼竜を追い越したのだ。

 再び翼を開いた蒼竜は機首を持ち上げ天空を向きさらに背後へ90度回転する。クレイドルはやっと反転した時には距離は1300m以上の差となり、渦から現れたエンタングルは数瞬の間を置いて蒼竜の前方に跳躍する。今度は三角形を描いて蒼竜を囲む形だ。

 しかし残念なことに三角形は平面の図形。蒼竜は上方へと加速する。三角形に届く前に角度を強くして45度で固定。平面と直角になるようにしてその上を飛んでゆく。

 渦から現れたグラスプ2体とメルトブルーはもう跳躍をしない。緑色の軌跡が二つ後方から蒼竜を追いかけ、青色のリボンが空間を切り裂き、洋梨は反転から加速して前方から蒼竜へと突っ込んでいく。

 蒼竜は――上昇をかけて垂直となった。一瞬のうちに視界の色が変わる。雲海と空が混じる濃青から、全天の藍へ。神経を凝らせばその先の漆黒まで視える。その色を澄み渡るようで美しいと仁美は思う。この空を見ていられることが嬉しくてしかたない。緑色の巨人と赤色の亀裂が下方から迫っている中で斜度45度を保ったまま、意識の一部を天空へ向ける。これ以上は逃げきれない。でもこの光景を見られた。それで充分だ。

 それにほら、自分は34秒を逃げきれたのだ。

 飛来した剣にクレイドルが切り裂かれた。運搬をした後のクレイドルは核が固体として残っていない。それが跳躍をできない理由。核は粒子状になりながら内側の空間に浮遊している。だから外表を破壊すれば消滅する。

 光が霧散する中から嵐剣はグラスプに突撃する。SD砲が宙を横薙ぎにしてグラスプの進行を止め、SD鋼弾がリボンの束に直撃して亀裂を正常に戻す。

 元に戻った空間を、風を砕いて嵐剣は飛翔する。2体の距離は230m。970mの距離を0.8秒で詰め、横合いから並んだグラスプ2体を切り捨てる。その差は0.25秒。メルトブルーには新たなSD鋼弾が撃ち込まれており表面はえぐれて跳躍を妨げている。新たに伸びてくるリボンの隙間を縫ってえぐれた部分に飛び込み核を切り裂いた。

 そして光条が彼方より飛来する。嵐剣の直進方向817m先に出現していた渦の中心が閃竜の放ったSD砲に撃ち抜かれていた。そして別空間から弾き出されたメルトブルーを嵐剣の翼が両断した。


 エンタングルをすべて倒した3機は帰投の途を辿っていた。間に蒼竜を挟んで嵐剣と閃竜が並んで飛んでいる。蒼竜に損傷は無く仁美の意識もはっきりとしていた。怯える様子もなければ体調も悪くない。ただひとつ暁が気がかりなことは、異様なまでに空に対して感嘆の念を持っていることだ。何か変なホルモンでも放出していなければいいが……

『暁、倉橋をどう思う』

 その当人から通信が入る。戦闘は終わったので意識の共有は解除されている。

『いいのではないかな。使える人材だと思うぞ。……少しばかり威勢がよすぎるかもしれないが、そこはなおせる範囲だろう』

『そうか』

 奏の声が少しはずんでいる。新人が使えると分かって嬉しいのだろう。普段は気だるげにしているが空に出ると感情がよく分かる。年が上だということではないが、その様子を見ると微笑ましく思えてくる。さっきだってそうだ。仁美が自分と奏を信じていたから。奏が高速で来るのが視えたから。あんなに信頼を視せられて張り切って、可愛らしいと言うしかない。

 だがそれも帰投すれば消えるのだろう。

 エンタングルをすべて倒したところで管制から連絡が入った。まずは成果を褒めて、できるだけ早く帰るように言う。それから、今日の戦闘は実に見ごたえがあった、と。

 エンタングルは人類の敵である。それを倒すことは民衆の希望となる。また戦闘機の搭乗者も必要だ。だからエンタングルを倒す様子は中継されて配信される。実際の映像と、それを人が肉眼で認識できるまで遅くした編集映像と、2回に分けて。民衆にエンタングルがどんなものかを知らしめるために。また、戦闘機乗りファイターの業績を見せるために。

 中でも撃墜数の多い戦闘機乗りは人々の注目の的となる。いつからか分からないが優秀な戦闘機乗りは勇者と呼ばれていた。空を翔けて人々を守る。たしかに〝勇者〟だろう。その半数が空に散っていくことも含めて。

 奏の飛翔は相変わらず美しかった。奏の操縦に暁は驚嘆を禁じ得ない。自分には追えない速度の中で彼はあんなにも優美に飛んでいる。あれは天性のもの。誰にも辿り着けない孤高の天空。彼こそ勇者だ。そう呼ぶ声は大きい。

 奏本人としては勇者という呼び方が気に入らない、ということはないだろう。だがどこか厭世的なところのあるやつだから、自分の顔や名前が知れ渡っていることに内心ではうんざりしているかもしれない。出撃のたびに暁はそう思わずにはいられない。

 だがまあ……空を飛べているだけであいつは幸せなのかもしれない。だからこれからもこれまでどおりに接しようと暁は決める。

『伊織さん、水無月さん』

 蒼竜から通信が入った。やや興奮しているが異常まではいっていない。

『なんだい』

 柔らかい声で奏が答える。

『わたし、うまく飛べていましたか?』

『ああ。あれだけ飛べていれば初めてなら充分だ。でもあれだけやれるならもっと飛べたはず。もしかして機体を変えた方がいいかな。バランスはとれていて技巧派ならば紅竜か。いや、蒼竜改……Ⅲ型でもいいかな』

『ちょ、ちょっと待ってください! 一度に言われたって分かりません!』

 慌てた声を上げる後輩に暁は助け舟を出す。

『そうだぞ、奏。それを決めるにはまだ早いだろう。ここはもう何度か訓練を積んでからだな』

『だったら待ってみるのもいいかな』

 そうして会話を続けているうちに巨大な建造物が近づいてきた。

 全長6㎞、全高1.2㎞、最大全幅2㎞にもなる巨大な飛行物体。名を飛行都市『飛鳥』という。俺たちの帰る場所、空飛ぶ船、この藍色の空で唯一の避難所だ。

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