コウタイする絵画

那須村 裕

プロローグ

 それは俺の知っている作品ではなかった。

 これで二度目だった。

 心なしか、絵画を持つ手が震えた。

 俺の描いた作品は消え、代わりに俺の知らない作品が手元にあった。

 絵の中央には、幼い少年が両手を広げて立っていた。これは一体、誰が描いた作品なのだと自問した。俺が描いたのは、単なる風景画だったんだ。

 部員たちに、俺の描いた作品が別物にり替っていると話しても、部長は頭がおかしくなったと一笑に付されるのが目に見えている。

 俺は気が触れてしまったのだろうか。

 夢遊病者が、眠っている間に自分の知らない作品を描き続けたという都市伝説を聞いたことがあった。

 そして、俺は、職員室で見かけた一人の女子生徒のことを思い出した。

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