第9話 「フランス人の生存本能」を見つけてみよう。
フランス人の変なところは、ニュースにもなりました「風刺画」です。
二〇一五年一月、フランスの風刺週刊誌を発行している「シャルリー・エブド本社」をテロリストが襲撃した事件は、記憶に新しいかと思います。
この事件の発端は、イスラム過激派やイスラム教の風刺画をシャルリー・エブドが週刊誌に掲載したことだといわれています。
この風刺画は、見れば分かりますが、やり過ぎです。
言論の自由、表現の自由は分かりますが、罪のない普通のイスラム教徒をも傷つける侮辱まで容認するのは、行きすぎた行為のように見えます。
だからといって、侮辱された側のテロが正当化されるわけではありません。
テロは暴力であり、犯罪です。やり返すなら、言論で行うのが正しいやり方でしょう。
このように、フランス人ではない私達からは、今回の風刺画は侮辱に見えますが、当事者であるフランス人には侮辱には見えません。
というよりは、その風刺を載せることが、自分達の当然の権利であると思っているように見えます。
では、この私達とフランス人のズレはどこから来るのでしょうか?
このような侮辱的な風刺画が認められる、フランスの生存本能とはどんなものなのでしょうか?
ではまず最初に、風刺画の意味について考えてみましょう。
風刺とは、人や社会に対する批判です。
その批判を絵にしたものが、風刺画になります。
では、この風刺するされる側は権力者や政府、強力な社会構造であることは分かりますが、風刺する側とはどんな人でしょう?
批判できる立場の人のですから、弱者ではありません。
本物の弱者と強者の関係というのは、中国共産党と中国人のような関係です。
中国共産党と比べると、中国人は完全な弱者であり、政府に対する批判的な言動のすべてが封殺される立場です。
つまり批判する側のフランス人は、この場合弱者ではないということです。さらに言うと、宗教指導者の風刺まで出来るということは、それ以上に風刺する側の立場が強いということになります。
つまりフランス人は、この風刺画騒動から見て分かるとおり、政府のトップや宗教のトップよりも偉い立場にいるということです。
そしてこれがフランス人の生存本能であるなら、フランス人は「あらゆる人よりも、上の立場にならないと全滅してしまう」と生存本能として思っていることになります。
では、そう思うようになってしまった、フランスの特徴とは何でしょうか?
フランス人を、すべてのものよりも偉くしなければならなかった、フランス特有の出来事とは。
答は簡単で、フランス革命です。
フランス革命によって、王様を処刑してしまったフランス人は「自ら王様になるしかなかった」のです。
そして「自分が王様にならないと全滅してしまう」と思うようになってしまった。
この「自分が王様にならないと全滅してしまう」という生存本能がフランス人に行き渡り、今のフランスを作っているのです。
だから「国民全員が王様になってしまった国」がフランスであり、フランス人なのです。
全員が王様になってしまった社会では、当然のように他の勢力のトップを批判することができます。
王とは、人の世界での頂点であり、頂点であるなら当然、政治の頂点も、宗教の頂点も批判できるという構図です。
ということは、フランス料理とは王様の食事になり、風刺週刊誌も王様のための読み物ということになります。
フランス革命の時代に、王様に全滅させられそうになった国民は、二度と自分達の上に王様を置かないと決めた。
だから、現在のフランス人はあんなに偉そうで、他者への侮辱に対して鈍感になってしまったということです。
フランスについては、この「風刺画」という変なところだけを材料に分析してみました。
この分析で大事なところは、結果が正しいかどうかに関係なく、一度やってみることです。
やってみれば、フランスについて調べることになりますし、考えることにもなります。そして、いつか正しい答に行き着くはずです。
今回のフランスについて、「風刺画」という一点突破でやってみたのは、フランスの風刺画が行きすぎた侮辱のように見えたからです。
そして、その侮辱を正当なものとして誇っているフランス人がいるのは、かなり不思議な光景に見えました。
報道の自由、言論の自由、表現の自由があったとしても、侮辱は侮辱であり、人としてやってはいけないことでしょう。
それを平然とやってしまう、フランス人の感覚とは何なのか。
不思議だったので、簡単にではありますが、分析してみたら、こんな生存本能が見えてきたということです。
本当に簡単な分析なので、間違っている可能性はありますが、それはそれで良いと思っています。
また何か違和感を感じたら、その時に再度分析し、修正していけば良いのです。それで正しい答に近づくはずです。
これは相手をより深く理解するためのツールであり、理解を助けるための道しるべです。
ですから、自分でやってみないと、先には進めません。
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