トンネルの出口

 長期休暇を利用して、恋人と旅行に行くことになった。

 レンタカーで出発したのだが、私が道を間違えてしまったせいで、ホテルに着くのが予定より大幅に遅くなりそうだった。

 そのことで、ホテル近辺のトンネルの中で大喧嘩をしてしまった。


 そっぽを向いてしまった助手席の恋人を見つめ、後悔したが、気まずい沈黙に満たされた車内では謝罪の言葉を口にしにくい雰囲気があった。

 せっかくの旅行なのに、どうしよう…… と考えていると正面に大きな光が見えてきた。出口だ。

 そうだ、トンネルから出たら謝ろう。

 そう決めて、光めがけて走り続けた。




 あれから何時間、いや何日、いや何ヶ月、いや、ひょっとしたら何年。走り続けているんだろう。

 出口は目の前に見えるのに、たどり着けない。出られない。

 何かに固定されたかのように、顔をフロントガラスから動かすことができない。隣にいるはずの恋人の方を、向くことができない。


 いつまで経っても、謝れない。

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