カラオケ

「声ヘロヘロじゃねえか」


カラオケでいい気分で歌っていたら、いきなりそう言われてビクッとしました。

彼はにやにや笑いを浮かべて、椅子に座る私の隣に突っ立っていました。


「しょうがないだろ、もう3時間近く歌ってんだから」

睨みつけたのですが、彼は意に介さず画面を指差しました。

「ほら、次の曲始まっちゃうよ?」

仕方なく、私は歌い始めました。

やっぱり声が震えます。音程がメチャクチャになってしまいます。

彼は終始大笑いしていました。


やっとのことで歌い終えた私は、会計をするために必要なものをまとめだしました。

「あれ、もう帰っちゃうの? まだ時間あるから2曲くらい歌えるのに」

「いいの」

すぐ真後ろにあったドアを開け、彼を置いて個室を飛び出しレジへと走りました。


あ、言い忘れましたが、ひとりカラオケ専門店での話です、これ。

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