◇プロローグ
兎の耳が異音をキャッチする。
どこか遠くで大きな音がした。
地を揺るがすような
更に、こちらに巨大な物体が飛んでくる音までする――。
私と猫女の間に、巨木が墜落する。上空から降ってきたのだ。
何故――? 巨木には根っ子がついている。
「あれれー? ぺっちゃんこになってないですー」
声のする方向を向く。
茶色のウサギの耳に尻尾、紺のエプロンドレス。
こいつ――また新しい敵だ。
「ちょっと……待ってよ!? こいつら何人いるわけ!?」
茶色ウサギは巨木を軽々と持ち上げる。こいつ――木を地面から引っこ抜いてこちらへ投げつけて来たんだ。
「まぁ良いですぅ。これでフッ飛ばしますからぁ」
そのまま巨木を振り回す。後退し間合いを取る。あんなものでブッ叩かれたら一溜まりもない。
巨木が
避けられるか否か――ギリギリと感じた。
だが巨木は私まで到達しなかった。
中空で停止したのだ。
そのまま位置エネルギーを失い、落下する。
何が起きたのか――すぐには理解できなかったが――。
「確かにルール違反ではないけれど、寄って集っては感心しないわ」
新たな人影。灰色の
こいつが私を助けてくれたらしい。
「アンタ……何で私を助けたの?」
「理由なんてないわ。ただこのやり方に賛同できないだけよ」
「この期に及んで綺麗事とか言うのね」
言いながら猫女がこちらへ接近する。私は臨戦態勢を取る。
遠くから何かが投擲される音を聞いた。
小さい。けれどたくさん。多分、薄い何か……。
「来なさい!」
鼠の腕を引っ張り、再び後退する。
私たちがいた位置に猫女が到達した瞬間、中空から無数のトランプが降り注ぐ。猫女はトランプを
「爆発……!?」
「――あそこよ!」
驚いていると、鼠が森を見下ろせる丘を指差す。
そこにはレガリアを身に着けた赤毛の少女が立っていた。女王のような姿形をしているが、私たちと同じエプロンドレスを着ている。
「アイツも……敵……!」
六人だ。今この場には六人もの『少女』がいる――!
どうして……どうしてこんな目に――。
今更な問いだ。だが考えずにはいられない。
事の発端は私がアイドルデビューする前に
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