召喚術士ですが異世界の変身ヒーローを召喚してしまいました
なみいちてる
プロローグ
神話戦隊エイユウジャー 第41話「命を燃やせ! 復讐のジーク・ブルー」
『俺に構うな! やれェ! レッドォ!』
英雄ロボ『グラム』に搭乗している『ジーク・ブルー』からの通信に、レッドこと『スサノオ・レッド』はヘルメットの下で目を見開いた。
確かに邪竜帝国の五大幹部の最後の一人『ファブニール』を倒すチャンスは、ブルーの操るグラムが巨大化した奴を抑えこんでいる今しかない。
だがここでアメノムラクモを放てば――
「ブルーを巻き込んでしまう!」
悲痛な叫びが英雄ロボ『ハバキリ』のコックピットに響く。
もし巨大化した邪竜の鱗すら貫くアメノムラクモの一撃が英雄ロボの動力部である時空エンジンに当たってしまえば、グラムに搭乗したブルーは時空爆発に巻き込まれ確実に命を落とすだろう。
いや、サポートAI『ゲオルギウス』が故障し『五神合体ダイエイユウ』に『合神』出来ない今、ファブニールを確実に倒そうと思えば時空爆発に巻き込む他、方法はない。ブルーはその事に気づいているのだ。
だが、それでも――
『復讐を果たすためならば……いや、世界を守るためならばこの命、惜しくはない!』
『ヤ、ヤメロォ! 仲間ヲ殺スツモリカ? スサノオ・レッド!』
ブルーの叫びと、ファブニールの悲鳴が同時に響く。
レッドは歯を食いしばり、アメノムラクモの安全装置を――解除した。
『正気なの!? レッド!』
『……妹さんの事は俺に任せておけ』
『イエローまで!』
ヘラクレス・イエローとマルタ・ピンクの言葉も今は耳に入らない。
逃げようともがくファブニールを押さえつけ、一歩も動かず大地を踏みしめるグラムの勇姿だけに集中する。
『これで、残すは邪竜皇帝リヴァイアサンだけ……後は頼んだぞ! 皆!』
「お前の犠牲、絶対に無駄にはしない! ……グリーン!」
『おうよ!』
ベオウルフ・グリーンの剣『フルンティング』には前回倒した五大幹部の一人『グレンデル』から得たエネルギーがまだ残っている。そこから借りた力をアメノムラクモに載せて打ち出す!
「いくぞ! アメノムラクモォォォォォ!」
ハバキリが握る、十拳剣にも似た形状の、しかし近代的なフォルムをした全長10m程の剣、アメノムラクモが赤い光を帯びる。
その刀身に集まるのは、レッドが宿敵『オロチ』を倒した時以上の正義の光の煌きだ。
「全てを断ち切れ、神話の煌き! 古き勇士の力を再び宿せ! 英雄ゥゥゥゥゥゥ斬ッ!」
アメノムラクモが振りぬかれる。
赤の煌きは長大な剣風となり、草原を薙ぎ払う神話が如き威力を現世に顕現する。
空間が割れ、時空に振動が走る。
残心を保ちアメノムラクモを掲げるハバキリの背後で爆炎が立ち上がった。
『バ、バカナァァァァァ! コ、コノワタシガァァァァァァ!? グ、オォォォォォォ!?』
同時、グラムとファブニールの周辺の景色が、出来の悪い編集写真のように歪み、捻じれ、次第に掻き消えていく。
英雄ロボの時空エンジンがオーバーロードを起こし、その周辺を巻き込んで消滅しようとしているのだ。
『これで、やっと終われる……やったよ、父さん、母さん……』
それは安らぎに満ちた声だった。
妹以外の家族をファブニールに殺され、復讐を誓った男が最期に紡ぐ言葉だった。
今ここに、仲間たちの力を借りて、彼の復讐は成ったのだ。
『ありがとう、皆。そして済まない……俺は最後の戦いには加われないが…… お前たちなら――『神話戦隊エイユウジャー』なら、必ず平和を取り戻せると信じてるぜ……』
「ブルー……!」
『じゃあな、皆…… 色々あったが、お前たちと過ごした一年間、悪くなかったぜ』
ブルーの言葉に、レッドの脳裏で邪竜帝国と戦ってきた一年間の記憶が蘇る。
はじめはソリの合わなかった仲間たち。それでも次第に心を通わせ、唯一無二の戦友と成った五人。
普段はクールな癖に、復讐の事となると暴走しがちなブルー。
二枚目だけど妹の事になると人が変わってデレデレしだすシスコンな面もあった。
何度も喧嘩をしてその度に絆を深めてきた戦友であり親友。
そう、ジーク・ブルーはスサノオ・レッドの――『エイユウジャー』の大切な仲間だった。
「さようなら、ブルー……」
彼が涙とともに放った一言は、しかしジーク・ブルーには届かなかった。
ジーク・ブルーが守ったこの世界に、彼の姿はもう無かった。
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