第百九十二話『静電吸着』
「でも、速いのが分かったらこっちにもやりようがあるんだよ!!」
とサラが言う。
「ほう!では見せてもらいましょうかな。そのやりようとやらを!」
と『鬼王のアルバート』は笑った。
「よっし!鬼ごっこ二回戦だ」
「あ、上手いこと言ったって顔してる」
と僕が言ったらてへへへ、とサラが笑っていた。
まさに鬼と追いかけっこをする本物の鬼ごっこだった。
この場面でなにげに余裕のあるサラだった。
「よし、いくよ!!」
と、サラは『雷迅 - ライトニング』を脚に纏って走りだした。
バチ、バチィィィィと、サラの足元を電撃が舞う。
そのサラを見て『鬼王のアルバート』もスキルを発動させる。
『鬼神走脚 - キシンソウキャク』
ゴオォォォォと四天王『鬼王のアルバート』が禍々しい赤いオーラを纏った。
「鬼さん、こちら!!」
と言いながら、サラが、電撃の反力で、地面を蹴って高速で移動している。
「ふふふ、そのスピードでは、私からは逃げられませんよ!」
と言いながら超高速で追いかける。
「なんというスピードで動いてるんだ・・・二人は・・・」
と僕が呟く。もはや目で追うのがやっとだった。
「すごすぎますね!これが四天王との戦い・・・」
と、グッと強く杖を握って感動を隠さない奈緒子も呟く。
「それで、おしまいですかな?」
と『鬼王のアルバート』が言う。
サラのすぐ後ろを走っている。
「やるなぁ!でも!『ここまで』ついてこれるかな??」
とサラが『壁を』走りだした。
「な・・・なんですと??壁を走った??一体これは!」
と『鬼王のアルバート』は驚きを隠さなかった。
「静電吸着だ!」
と僕が言う。静電気を利用して、壁を登るロボットなどが現実の世界でもすでに実証されている。
その原理をサラは器用に使って、壁を登った。
「とおっ!りゃ!!」
と壁を走り、アルバートがついてこれなくなって減速したところを狙って、くるっと回転して、アルバートの上空に飛んだ。
「いっくぞー!電撃かかと落とし!!」
と、サラは『鬼王のアルバート』の上空から電撃かかと落としを叩き込んだ。
「なんと!!」
と言いながら、上空にいるサラの電撃かかと落としをなんとか両方の前腕で防いだ。
バチバチィィィィと電撃の音が鳴り響き。
煙で包まれる。
「や・・・やったか!!」
と僕が呟く。
しかし、そこから現れたのは・・・
「いやはや、素晴らしい、運動神経もいい、アイデアもいい。素晴らしい。素晴らしいが・・・」
と『鬼王のアルバート』は言う。
「武器が弱い!」
と『鬼王のアルバート』は言った。
「なるほど・・・」
と僕が呟く。
「この『鬼神の籠手』に対して、ダメージを与えるには、少々弱い装備でしたな」
と『鬼王のアルバート』はサラのかかと落としを防いだ武器を『鬼神の籠手』と説明した。
そう、そしてサラの装備は『格闘家の靴』だった。
たしかに、四天王を倒すには心もとない装備だった。
「反撃開始させて頂きますよ!」
と『鬼王のアルバート』は笑った。
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