第百六十九話『妖精の森』

「承知いたしました。それではクエスト『妖精の森を守れ!』を依頼します!」

と受付のお姉さんが言った。


「では、転送を開始します!ご武運をお祈りします!」

と、お姉さんが笑顔でそう言った。

僕らは光に包まれ、寄り合い所からの転送がはじまった。


「よっし!まっててね妖精さん!」

とサラが微笑みながらそう言った。


シュワァァァァ

と光のエフェクトが消え、今までいた寄り合い所とは違う景色が広がる。

そこは森。きれいな場所だった。


「ここは?」

と、サラが聞く。


「妖精たちが住む森かな?」

とあたりを見回しながら答える僕。

なんとなく神聖な雰囲気のある綺麗な森だ。

水も綺麗だろうな、とぼんやり思った。


「あ、妖精さんいらっしゃいますね!」

と奈緒子が妖精を見つけて、手のひらで指し示す。

指でささずに、手のひらを表にして、指し示すところにそこはかとない上品さを感じる。


「お、いた!」

と、サラがダッシュで妖精に向かっていこうとしたので、ガシっと僕がサラを掴んだ。


「え?なに??」

とサラが言う。


「しーっ!大きな音だしたら逃げちゃうから!!」

と僕が言う。

妖精とはそういうものだ、ナイーブなのである。

水が綺麗なところにしか生息しないし、大きな音がすると逃げてしまう。

走って近づこうとしたサラをグッと抑える。


「あ、そういうもの??」

とサラが言う。


「うん、ナイーブな、いきものなんだよ、妖精さんは」

と僕が言う。


大きな音を立てると、ぴゃーっとすぐ逃げてしまうイメージがある。

サラが全速力で近づいたら、みんなが一目散に逃げてしまうことは想像できた。


「うん!わかった!」

とサラは言う。


これ以上掴んでいると、また、イヤラシイとかいろいろ言われそうだったので、僕は、すぐに離した。


「じゃぁ、こっそり近づこう、こそーり」

とサラが抜き足差し足で妖精さんに近づく。


「それはそれで、びっくりしちゃうから、普通で行こう普通で!」

と、言って僕らは妖精さんに近づいた。


「こんにちは!」

と奈緒子が優しく妖精に話かける。


「あら、めずらしい!人がこんなところにやってくるなんて!」

と妖精さんが言う。


「へー!珍しいんだー!」

とサラが素直に驚いてる。


「わりと定番のセリフだけどね」

と僕は笑った。


「ああ、あなたがたはもしかして、依頼を受けてくださった方たちですか?」

と、妖精さんはピーンと気がついてくれた。


「そうです!妖精の森を守るために来ました!!」

とサラが丁寧に妖精さんに答える。

サラのやる気は満タンだ。


「そうでしたか!それは気が付かずに大変なご無礼を!」

と妖精さんが言う。


「でしたら、長老にお会いください!そこで詳しい説明があります!」

と妖精さんは言う。


「おー!長老!会いたい!!」

とサラが言う。

僕らの新たなクエストが始まる。

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